テクニカルノート

マダラヒタキという鳥をご存じですか?

文:佐竹 一秀 2008年9月1日

温暖化とマダラヒタキ
マダラヒタキ

マダラヒタキという鳥をご存じですか?
一昨年(2007年)の10月に仙台市の三神峯公園に飛来しました。普通はヨーロッパにいる鳥ですので、日本ではお目にかかれません。日本での確認は2例目(1例目は1991年石川県舳倉島)。いわゆる迷鳥(めいちょう)です。
そのため、日本中からバーダー(鳥類愛好家?「釣りキチ」ならぬ鳥キチ)が集まったと聞いていますし、会社の何人かは見に行っています(ビックリしたのは今春入社したS君も東京から見に来ていたとのこと)。

話はここで終わればそれまでですが、最近このマダラヒタキが時々ですが話題にのぼっています。「STOP THE 温暖化 2008 環境省」のパンフレットを見た方はご存じかも知れませんが、ここに出ています。

餌がたりない…渡りの時期を変えればよい?

簡単に説明しますとマダラヒタキは渡り鳥で、アフリカ中部北部で冬を越し、春にオランダなどに渡ってきて繁殖し、秋にまたアフリカに戻ります。繁殖期にはヒナを巣立たせるために大量に餌を与えなければなりません。餌はガの幼虫などです。このガの幼虫が地球温暖化の影響を受けて、早く発生するようになりました。そのため、マダラヒタキが渡ってきて、繁殖をはじめヒナが孵化した頃に、餌となるガの幼虫の発生のピークが過ぎてしまい、ヒナに十分に餌を与えられず、ヒナが死んでしまうのです。そのため、マダラヒタキそのものが減少していき、最大で90%減少した地域もあるとの事です。

だったら、マダラヒタキも早く渡ればいいと思いませんか?
鳥の渡りは長い時間をかけて進化・適応の過程で身に付いたもので、DNAの奥底にすりこまれています。簡単に渡りの時期を変えられません。また、越冬地、中継地でも渡りの時期に影響を与えている条件があるかも知れません。

ツバメを例にして考えると…

これを日本に置き換えて考えてみましょう。日本にはキビタキという近縁の鳥がいますが、あまりなじみがないので、ツバメを例にとります。
仙台にツバメが渡ってくるのは4月1日前後です。私はその頃になると朝の電車や車で移動時にはよくよそ見をします。特に広瀬川、名取川の川面は要注意です。渡ってくると民家の軒先や、駅のひさしなどに巣作りをし、産卵、抱卵を行い、GW頃か以降にヒナが生まれます。そこから親鳥は餌取りに大忙しです。水田や川の上空を飛び回り、餌の昆虫類を飛びながらつかまえます。マダラヒタキはガの幼虫が餌でしたが、ツバメはアブ、ハエ、ハアリ等を捕まえヒナに与えます。その後ヒナが巣立つと、2回目の繁殖に入るツバメもいます。そのため、5月~7月頃までがツバメの子育ての時期になります。その期間は餌の虫たちも多い時期です。もし、地球温暖化で昆虫の発生が1ヶ月程早くなり4月~6月がピークとなったら…、2回目の繁殖はできなくなるかも知れませんね。また、地球温暖化の影響以外にも餌の昆虫の発生が少なくなれば同じ事が考えられます。

生態系への影響

マダラヒタキやツバメ以外の鳥、他の生物について考えてみると、野生生物は喰う喰われる関係(食物連鎖)があり、猛禽類や肉食獣を頂点とする生態系ピラミッドに組み込まれています。そのため、どこが欠けても上下に多大な影響を与える事になります。今回は地球温暖化がマダラヒタキの繁殖に影響を与えたという1点に絞ってみましたが、マダラヒタキが餌にできなかったためにガが大発生し、幼虫の餌となっている植物が甚大な被害が出ることも考えられますし、マダラヒタキを餌にしている猛禽類にも影響が考えられます。

地球温暖化と鳥について、環境省のパンフレットをもとに書いてみましたが、それ以外にも、異常気象の話や深刻な未来予想の話までありますので、詳しくはぜひこちらをご覧下さい。
「STOP THE 温暖化 2008」環境省  

余談ですが、パンフレットのマダラヒタキの所に写真が載っています。この写真も拡大してじっくり見て下さい。たいした事ではないのですが何かが見えるはず…。

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


---- << ■ >> 次の記事

←連載・E-TEC一覧へ戻る 記事一覧へ戻る△ ページの上部へ戻る▲