テクニカルノート

身近な外来魚

文:動物調査室 旗 薫 2008年11月1日

外来種=生存競争において秀でた種??
カネヒラ

カネヒラ

ここ数年の間に、外来魚に関する話題を目にする機会が増えました。オオクチバス(ブラックバス)やブルーギルなどといった、いかにも外来種らしい容姿、生態をもったものが取り沙汰されることが多いように感じられます。これら2種は貪欲で、卵および孵化した仔魚を保護する習性をもつことから、移植先に生息する在来種に大きな影響を与える場合が多いことが知られています。こうした外来種を見る限り、「外来種=生存競争において秀でた種」というイメージを持ってしまいがちです。しかしながら、海外から日本に移植された様々な魚種のうち、実際に定着し、分布を広げることができたのは、ごく一部の種に限られ、多くの場合は国内への定着に失敗、または一時的に増加しても、やがては水域から消滅する運命にあったようです。外国産の魚類の多くにとって、環境の季節変化が大きく、不安定な水域が多い日本への定着は、決して容易なことではないはずです。こうした視点から考えた場合、日本国内においては、本来全く異なる環境に生息していた外国産の魚類より、国内の他地域から移植された魚類の方が、移植先への定着が成功する確率が高いとことが想像されます。近年は、温暖化などによる国内の環境変化も、これらの定着を容易にする一因として挙げられています。それでは、宮城県内に、国内他地域からの移入種はどれくらい生息しているでしょうか。思いつくものを以下に列挙してみます。

……ゲンゴロウブナ、カネヒラ、ハス、オイカワ、カワムツ、モツゴ、ビワヒガイ、 タモロコ、ホンモロコ、スゴモロコ、フクドジョウ、ツチフキ、ギギ……

国内の他の地域から移入してきた種

種数としてはそれ程多く感じられないかもしれませんが、ゲンゴロウブナ、オイカワ、モツゴなどは、生息河川においては優占的となっている場合が多く、特に富栄養化が進んだ水域においては、捕獲個体のほとんどがこれらによって占められることもあります。また、オイカワやタモロコなどはすっかり身近な魚となってしまったため、宮城県内においては国内他地域からの移入種であることが、案外知られていないようです。 ニゴイのように、東北の一部地域において、在来種であるか、移入されたものであるか、今となってははっきり分からない種もいます。ちなみにナマズは、関東地方に進入したのは江戸時代中期、北海道に達したのは大正時代の末と言われているそうです。オオクチバス(ブラックバス)、ブルーギルのような話題性、インパクトがないこれら国内他地域からの移入種の扱いに対しては、様々な意見があるようです。純自然主義が絶対とは考えませんが、種間競争や遺伝子の撹乱など、移植前には予想できない事態を引き起こす可能性がある以上、これらの扱いにも十分な注意を払う必要があると思われます。最後に、宮城県内において、近年増加傾向にあるように感じられる移入種2種を紹介しておきます。

カネヒラ

自然分布は琵琶湖淀川水系以西の本州と九州北西部、夏季から秋季にかけて産卵を行う大型のタナゴです。他のタナゴ類と同様、イシガイやドブガイといった二枚貝に卵を産み付けます。ここ数年の間に、県北を中心とする中・大規模河川で見かける機会が多くなりました。場所によっては、外来種であるタイリクバラタナゴをはるかにしのぐ勢いで生息しています。伊豆沼においても、現在生息しているタナゴのほとんどが本種ではないかと思われます。東北地方生息するタナゴ類の多くは春に産卵を行うため、本種と産卵期は重なりません。しかしながら、近年県内で著しく減少しているゼニタナゴは、秋季に産卵を行います。カネヒラは体のわりに産卵管が短いため、産卵の際には小型の二枚貝を選択する傾向があることが知られています。このため、中型種であるゼニタナゴと、産卵基質となる二枚貝を巡る種間競争が生じる可能性があり、この場合、より大型のカネヒラが有利となるものと思われます。

カラドジョウ

食用として韓国などから輸入されたものが、国内に定着したと考えられていますが、県内への移入経緯はよく分かりません。ドジョウと同様に口ひげは5対です。ドジョウと比較して口ひげが長い、尾柄高(尾びれの付け根付近の高さ)が高いなどの相違点がありますが、不慣れな場合は識別が困難、魚類調査においても、うっかり見落としそうになることがしばしばです。

  • ドジョウ

    ドジョウ

  • カラドジョウ

    カラドジョウ

県北の平野部を中心に、中・大規模河川周辺で多く確認されています。 ドジョウと混生している場合が多いですが、同一の地点においても時期によって、両種が確認されたり、ドジョウのみが確認されたりと、不安定な生息状況がしばしば見受けられます。 2種間の関係は明らかではありませんが、競争関係にある可能性が考えられます。地味で分かりにくい魚であるため、今後の生息状況の変化には、特に注意を払いたい魚です。

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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