テクニカルノート

鶴は千年・亀は万年…

文:佐竹 一秀 2009年1月20日

縁起のよい生きもの

あけましておめでとうございます。
生物の世界では年末年始もないのですが、人間社会はどうしても区切りをつけたいようです。前年の悪行の数々はスパッと忘れ、新年は新たな気持ちで生きて行きたいという勝手な思いからでしょうか…。年始はおめでたいものが好まれます。「初日の出」、「初夢の一富士ニ鷹三茄子」、さらに福を呼ぶといわれる「フクロウ」、さらにさらに福に寿までつけて「福寿草」、また長寿を願って「鶴は千年、亀は万年」等々があります。

タンチョウ

タンチョウ

昔々…でなくとも良いのですが、亀の娘が鶴の若者の所にお嫁にいくことになりました。両家の鶴、亀たちは縁起が良いと大変喜んだのですが、娘の一言「九千年も後家は嫌!」という笑い話もあります。

ここでいう鶴とは「丹頂鶴」、正式にはタンチョウと言い、日本では北海道の釧路湿原に中心に生息していて、読んで字の如く頭(頂)の赤(丹)い鶴です。写真の鶴がタンチョウです。それでは、実際に長寿といわれているタンチョウの寿命は何年なのでしょうか?

鳥たちの寿命

いろいろ調べてみたところ、野生では20~30年との事で、思ったほど長生きではないようです。その他の鳥での最長年は、セグロカモメは36年、ガンとイヌワシは25年、コノトリは17年、カラスは14年、スズメは8年、ツバメは7年の記録が標識調査(鳥に足環等を付けて移動等を調査する方法)より確認されています。ただ自然界は喰う喰われるの世界です。特に小鳥類は肉食の哺乳類や猛禽類の餌となります。天寿を全うできずに、死を迎えるのが逆に一般的と思います。ましてや病気やケガを治してくれる病院もありません。そう考えると鳥(自然界の動植物)の寿命は「わからない」と言えると思います。人間は生きていけるだけで幸せと考えて欲しいものです。ただ小鳥たちの死もそれはそれで、食物連鎖の上位種を生きさせているので決して無駄死にではありません。

個体数は徐々に回復している

個体数は徐々に回復している

乱獲されたタンチョウ

タンチョウは江戸時代までは北海道に広く分布し、冬は本州にも渡ってきていました。しかし、幕末の混乱期に乱獲され激減、明治初期に湿地の開拓が進み各地で姿を消してしまいました。明治22年に北海道庁が「丹頂捕獲禁止令」を出し保護が開始されましたが、全く見られなくなり絶滅したと考えられていました。その後、大正13年に釧路湿原で十数羽が再確認され、昭和25年に人工給餌に成功してから徐々に数が増え、現在では千羽を超えるまでに個体数を回復しているようです。千羽まで回復した鶴…「千羽鶴」は病気の回復を願い1羽ずつ願いをこめて丁寧に折る。まさにタンチョウを保護してきた人達の行動と祈りが通じた千羽鶴です。千を超えるまで生息数が回復すると絶滅の危機をひとまず脱したと言われていますので、ここしばらくは優雅なタンチョウを見ることが出来ると思います(釧路まで行く必要がありますが…)

鶴は木にとまれない

花鳥図にもタンチョウはよく登場します。「花札」の「松に鶴」をイメージした人も多いのではないでしょうか。この松と鶴も縁起の良いものの組み合わせで、図案としては松の木に止まっているツルが描かれている事も多いです。しかし、自然界ではありえません。アフリカに生息しているカンムリヅルは木に止まるようですが、タンチョウを含めた大部分の鶴は木にとまりません(とまれません)。
花鳥図に描かれている鳥は、鶴に似たコウノトリと考えられています。ついでに、こちらも縁起の良いとされている「梅にウグイス」ですが、梅に来るウグイス色の小鳥をウグイスと言っている人が多いと思います。これも実はウグイスではなくメジロの事が多いです。ウグイスは目立つところに出てこない鳥で、ウグイス色をもっと煤けさせた色合いをしています(一度図鑑を見て下さい)。鳴き声も併せて聞いた!という人もいると思いますが、梅の木のそばの藪の中でウグイスが鳴いて、たまたまメジロが梅の花の蜜も吸いにきた所を見た、というのがほとんどと思いますのでお間違いなく。ウグイス色で目の回りが白い小鳥はメジロです。

息を吐くタンチョウ

息を吐くタンチョウ

最後に。右の写真のタンチョウは2009年の正月に釧路で撮影されたものです。曇っていてあまり条件は良くなかったようですが、一般的な冬季の写真ではタンチョウの口から白い息が見えます。しかし今年は暖かくて吐く息が白くならなかったようです。ここでも温暖化…?

今回のタンチョウをはじめとした縁起の良い動植物や人間も含めたそれ以外の動植物達に対して、地球温暖化の影響が限りなく少ない世界になるよう祈りつつ。また、これを読んでいただいた世界中の人に福が訪れますように、「フクロウ」の写真も載せておきましょう。

フクロウ

フクロウが福を呼びますように…

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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