テクニカルノート

意外な外来種問題…

文:佐竹 一秀 2009年8月1日

秋の七草のひとつ、クズ
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クズ

梅雨明け間近?で、雑草達が元気です。
通勤途中、名取川のヤナギの河畔林に葛(クズ)が巻きついていました。クズはマメ科の蔓性の植物です。伐採跡地や放棄された畑地、道路端等で繁茂しているところがよく見られますし、痩せた土地でも生育が可能で、盛夏には一日で1m以上も成長すると言われています。昔は家畜の餌や薪の結束など、農作業用にもよく利用されていました。また、根からとったデンプンは葛粉と言われ、葛切りや葛餅などの原料となり、乾燥させた根は葛根といわれ、発汗作用や鎮痛作用がある漢方薬の葛根湯の原料にもなるようです。少し季節が早いですが秋の七草の一つにもなっています。このように昔から利活用されている植物ですので、今回のタイトルの外来種問題とは関係ない…?

人が広めたブラックバス

外来種問題で直ぐに頭に浮かぶのがブラックバス(オオクチバス)ではないでしょうか。池や沼に入り込んだバスが、元々いた(在来種の)小魚を食べ尽くしてしまい、池や沼の生態系に大打撃を与えており、伊豆沼をはじめ日本各地の湖沼やダムで問題となっています。ブラックバスは北米原産で1925年に釣りの対象魚として、また食用として芦ノ湖に導入されました。芦ノ湖に放流するにあたっては、他の水系と隔離され流出による分布拡大の恐れが少ない事などが考慮されて、当時としてはかなり慎重に行われたようです。が、現在ではこの有様です…(人間(釣り人?)が分布拡大に手を貸すことまでは想定されていなかった…)

外国の種が人為的に日本に導入され、悪さをしているのが外来種問題です。外国産が日本で悪さをする…逆に、日本産の種が外国で悪さをしていない、と言い切れるでしょうか?自分のことは棚に上げて、自国の事はさておいて、バスが悪い、アライグマが悪い、外国産の種が悪いと騒いではいませんか?日本の生物は清楚で弱々しく、決して外国では悪さが出来ない、あるいは外国になんか行っているはずもない…と思っていませんか?

外来生物法

日本の外来種については外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(H16法律第78号)があり、特に影響を与える外来生物を特定外来生物として指定し、飼養・栽培・保管・運搬・輸入といった取扱いを規制し、防除等が行われています。
ちなみにブラックバス(オオクチバス)も特定外来生物に指定されていますので、取り扱い規制が適用されます。もしバスを釣ってしまったら飼育はもちろんのこと、保管、運搬も規制されますので、生きたままで持ち帰る事はできません。釣った場所に放す(キャッチアンドリリース)か、殺処分して下さい(ただし宮城県ではキャッチアンドリリースも禁止されていますので、殺処分以外に手はありません)。また、外来種の中で地域の自然環境に大きな影響を与え、生物多様性を脅かすおそれのあるものを、特に「侵略的外来種」といいます。日本では日本生態学会が「日本の侵略的外来生種ワースト100」を定めています。これには日本に入って悪さをしている前述のブラックバス等の外来種が100種指定されています。

世界の侵略的外来生種ワースト100

日本のワースト100があるので世界のワースト100があって良いとは思いませんか?
…実はあるのです。世界自然保護連合(IUCN)から「世界の侵略的外来生種ワースト100」が発表されています。これには原産地以外の地域で悪さをしている種が措定されており、この中のほとんどの種は外国産ですが、チョットだけですが見覚え、聞き覚えのある種もあります。その中にクズが入っています。クズの特徴は先ほど書きましたが、痩せている土地でも生育が可能で、成長が早いことです。そのため、アメリカで家畜の餌や法面緑化等のために持ち出され、緑化された法面だけではなく周辺に広がり手に負えない状況になったようです。現在では北アメリカの南部の代表的な植物になっています。

北アメリカにいる”日本の”外来種
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イタドリ

他の種についても書いておきます。ブラックバスの敵討ちとばかり北アメリカ等で悪さをしているのが、コイ(鯉)です。低温にも強く、雑食性で何でも食べます。大きさも30cm以上に育ち、そうなると天敵がほとんどいませんし、コイを食べる習慣もありません(今までにいなかったので当たり前ですが)ので、日本でのバスのように手が付けられません。次は植物のイタドリです(右の写真)。イギリスに観賞用の植物として移入されたようですが、その旺盛な繁殖力で、他の植物を被圧しているようです。個人的にはイタドリを観賞用とするイギリスの感覚が不思議ですが…。また日本及び朝鮮半島周辺が原産地の海藻、ワカメも指定されています。胞子がバラスト水に載って世界各地に拡散したもので、ある意味、貿易大国日本の象徴といえるかも知れません。他の地域ではほとんど食用にしませんので増殖しっぱなしです。せっかくだから食べれば良いのにと思うのは私だけでしょうか?他にもマイマイガ(昨年、今年と岩手県で大発生している蛾です)、クマネズミ、ハツカネズミ(いずれも史前移入種)、そしてノネコとヤギ(島嶼に入って島の生態系を壊す)等が指定されています。

こうなると何をどうして良いのやらというのが正直なところですが、外来種(内出種?)についても地球規模で、そしてその地域地域で考え、行動していかなければないと思います(世界の侵略的生物ワースト1の人間にしか出来ないことですので…)。

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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