テクニカルノート

秋の七草

文:佐竹 一秀 2009年9月1日

秋の七草をご存じでしょうか?

梅雨明けもせず、夏の暑さもさほどなく、なんとなく秋になってしまった感じです。タイトルだけでも季節感を出そうと「秋の七草」としてみました。

春の七草はよく知られていますが、秋の七草はご存じですか?「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロこれぞ七草」が春ですが、秋の七草は…私もよくは知りません。

万葉集に詠まれた七草
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ススキ

秋の七草は、万葉集におさめられている山上憶良の「秋の野に 咲きたる花を 指折り(およびをり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」、「萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 姫部志 また藤袴 朝貌の花」の2首が由来とされています。

・萩の花 → ハギ(萩)
・尾花 → ススキ(薄)
・葛花 → クズ(葛)
・瞿麦(なでしこ)の花 → ナデシコ(撫子)
・姫部志(をみなへし) → オミナエシ(女郎花)
・藤袴 → フジバカマ(藤袴)
・朝貌(あさがお)の花 → キキョウ(桔梗)

これで、秋の七草となります。朝貌(あさがお)の花については、他に朝顔(アサガオ)、木槿(ムクゲ)、昼顔(ヒルガオ)などの説がありますが桔梗が最も有力のようです。ちなみにアサガオはその時代にまだ中国、朝鮮から移入されていないとの事です。

現在の秋の七草

これらの植物は歌にも多くよまれているように、万葉の頃から近世にかけてはごく一般的な植物だったと思います。現在でもハギ、ススキ、クズは普通に見られます。クズについては前回も取り上げましたが「世界の侵略的外来生種ワースト100」に指定されていて、アメリカ等で大繁茂しています。しかし、その他のナデシコ、オミナエシは少なくなっているような気がしていますし、フジバカマ、キキョウにいたっては絶滅危惧種(環境省のRDB種)になっています。

ヤマトナデシコと新秋の七草
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ヤマトナデシコ

絶滅危惧といえば、「ヤマトナデシコ」と呼べる日本女性はもう絶滅?(全女性を敵にまわしてしまった!)。
そもそも「ヤマトナデシコ」という言葉そのものが絶滅して(死語になって)しまい、それ何?と言われてしまいそうです。「ナデシコ」といえば女子サッカーの日本代表チームのナデシコジャパンを連想する人の方が多いのではないでしょうか。本来、右の写真のように花が小さく愛らしく、愛児を撫でるようすから「撫でし子」としたようですが…。

昭和初期に、ある新聞社が著名な作家に1種類ずつ秋の草花を「新秋の七草」として選んでもらったそうです。「新」とは言っても70~80年も昔の話ですが、以下の通りです。

・コスモス(秋桜) → 菊池寛
・オシロイバナ(白粉花) → 与謝野晶子
・ヒガンバナ(彼岸花) → 斎藤茂吉
・シュウカイドウ(秋海棠) → 永井荷風
・ハゲイトウ(葉鶏頭) → 長谷川時雨
・キク(菊) → 牧野富太郎
・アカマンマ(イヌタデ:犬蓼) → 高浜虚子

文学については全く無知ですのでコメントのしようもありませんが、日本の植物学の父といわれる牧野富太郎を選者の一人とした事は凄いです。そして選ばれた花がキクです。納得のできる種ですね(私に納得してもらっても何事もないのですが)。秋の七草と比較すると、当然のことながら園芸種が多いですね。時の流れも感じられます。

皆さんも自分の「新・新・秋の七草」を考えてみては如何でしょうか?
私の場合は、秋の原風景のススキ・刈取後の稲(杭)・枯れたヨシ原、子供の頃食べたアケビ・ガマズミ、花粉症が出るコスモス、そして外来種のセイタカワダチソウ…でしょうか。

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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