テクニカルノート

ハクセキレイの都会進出

文:佐竹 一秀 2009年11月1日

冬のハクセキレイ

一月程前の夕方のこと。
JR南仙台駅をおりて西側(柳生側)へ出る。右手にサンクスあり、その前を通り過ぎる。とその時、上からかすかな小鳥の声。見上げると、あまり高くない街路樹に小鳥の姿が見え隠れ。
ハクセキレイの冬の塒(ねぐら)がありました。

都会のねぐら
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ハクセキレイ

これからの季節、市街地で夕方になるとハクセキレイが集まって塒をとる場所があります。私の知っている比較的大きな場所は、東北一の歓楽街、仙台国分町の入り口、広瀬通のホテルリッチフィールド前のイチョウの街路樹です。昨日もチョットした用事で近くを通りました(決して歓楽街に誘い込まれたのではありません…)。熟したギンナンがぶら下がり、色づき始めたイチョウの葉で隠れて、あまり多くを見ることはできませんでしたが50羽以上はいたと思います。季節が進んでイチョウの葉が全て落ちても、その街路樹にとまりますので、姿がはっきり見えます。真剣に数えた事はないのですがおそらく300羽以上になると思います(変な人と思われても、いつか真剣に数えてみたいと考えていますが)。

どうしてこのような場所に塒を取るのでしょうか?
周辺はネオンがピカピカ、チカチカし、下の道路は車がひっきりなし、かつ自然界で一番恐ろしい人間も、夜遅くまで動き回っている場所です。人間ならば不眠症になってしまい、酒の力でも借りないと眠れません(私なら直ぐにでも国分町に流れてしまいます)。

ハクセキレイの南下と都市への適応

ハクセキレイは1950年代には北海道から北東北の海岸地方にしかいませんでした。その後南下と、川沿いに内陸へ侵入していき、今では近畿から中国地方でも繁殖しているようです。また、逆に北海道では冬季には見られなかったのですが、最近は越冬する個体も増えているようです。特に都市部への侵入が目立ち、都会の汚れた小河川や、住宅地内に取り残された畑地などで餌を採っているところがよく見られます。繁殖も建造物の鉄骨の上や、換気扇の中、軒下の窪みなどで行い、都市に適合してきたと言えます。本来は海岸付近の岩場で繁殖していたのですが、岩の代わりにコンクリートや鉄骨を利用しているので、ハクセキレイからすれば大きな変化ではないのかも知れません。また、資材置き場の重機やトラックに営巣して、雛が巣立つまで重機やトラックの使用をやめたという、ニュースも時々流れます。さらに15年程前の事ですので、記憶に残っている人はいないと思いますが、電車に営巣した事例もあります。普通では考えられませんが、渋谷と吉祥寺を結ぶ京王井の頭線の電車で、それも普通に走っている電車で繁殖、子育てをしました。走っている電車に巣材を運び巣を作ることはないとは思いますが、何らかの理由で停止している電車の隙間に巣を作り、産卵した所で電車が走り出したのかも知れません。なんとも間抜けな親とも思いますが、そのまま抱卵、孵化、子育てをしたといいますから、最近の人間社会を考えると、見習うべき点が多々あります。

生き残りのための変化

このように人工物を使っての繁殖や、街中での越冬は、鳥類の生き残りをかけた適応と考えることが出来ます。ある程度、人間社会に近づくことにより、天敵である猛禽類やヘビ、イタチ等から捕食される危険を軽減することができ、また市街地は冬季、周辺地域より暖かく、人工物が風を遮ってくれて、自然界より生きやすくなっていると考えられます。人間に危害を加えることがない限りは、強制撤去を迫られることもありません(前述のホテルリッチ前の塒では、フンの害があり、フンよけのネットを木の下のほうに張っていますが、追い払われていることはないようです)。

人間がより暮らしやすいように生活様式を変化させるのと同じように、動物達も変化(適応)していくのでしょう。今後どんな適応をみせるか楽しみではありますが、野鳥は野の中にあって欲しいと思う気持ちも大きいです。

※余談
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セグロセキレイ

ハクセキレイと同じ仲間にセグロセキレイという鳥がいます(右図)。
色も白黒で、ハクセキレイと同じ川原等で餌をとっているところが良く見られます。ここで、無駄な識別知識をひとつ。顔が白く目のところに黒い線が入っているのがハクセキレイ、逆に顔が黒く目の上に白い線が入っているのが、セグロセキレイです。

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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