テクニカルノート

雪虫と雪迎え

文:佐竹 一秀 2009年12月1日

広瀬川の雪虫

今日(2009/11/23)は暖かな一日でした。広瀬川でジョギングしようと出かけたのですが、走り始めて直ぐに「雪虫」を見つけてしまったので、急遽中止し雪虫の写真撮りをしました。

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雪虫

実は一昨日のE-TECセミナー後の懇親会で、雪虫の話が出て、ニュースレターに取り上げてはとの話がありました。ちょうどよいテーマでしたが、あいにく写真がなかったために、別の話題(クマの冬眠)で原稿を書き始めていたところでした。そこに運よく雪虫が飛んでいたために、慌てて捕獲、撮影しました。
か弱い虫ですので、かるく手で包み込んだだけでも弱ってしまい、また汗にくっついて綿毛がとれ、雪虫ならぬただの虫と化してしまいました。が、近くに数匹いましたので、何とかそれらしい写真がとれました(右の写真:私の指の上に止まっているところです)。

晩秋から初冬に

皆さんは「雪虫」を知っていますか?雪が降る少し前、10~11月頃の暖かな日に、雪のような真っ白な綿毛をつけふわふわ飛びまわる虫です。北海道では大群で飛び回り、本当の雪のように見えるそうです。その中に入ればさぞ綺麗かと思いきや、眼や鼻に入ったり、衣服にくっついたりと大変なようです。が、一度は体験してみたいですね。

雪虫の正体はアブラムシ

さて、雪虫の正体は驚くなかれ「アブラムシ」の仲間です。
植物にびっしりと取り付く害虫です。アブラムシ科の10数種類がこのように白い綿毛をつけて飛び回るようです。ちなみに綿毛はろう状の物質でできています。

ここでよく研究されている雪虫の「トドネオオワタムシ」という虫の一生を簡単に紹介します。トドネオオワタムシは前述の北海道で大群を作る雪虫です。春にヤチダモ類に付いて生活し、5月上旬頃に成熟して単為生殖で♀を生みます。またその♀も同じように早熟多産で単為生殖します(ここでも♀のみです)。この第二世代が7月頃にトドマツに移動し、卵を産みます。この移動の時にも白い綿毛を持つのですが、あまり数も多くなく目立たないようです。夏の間はこのトドマツの根(トドノネ)で、アリと共生しながら、第三世代の子虫(ここでも♀のみ)を産卵。このトドマツで育った成虫が、冬を前にした10~11月にかけて綿をつけてユキムシになり、ヤチダモの木に移ります。そこで緑色と、オレンジ色の子虫を生むのですが、この緑色の子虫が初めての♂です(この♂の子虫は餌を取る口も持たないで、寿命はたった1週間程度です)。そしてその間に♀がこの♂と交尾して、越冬する1個の卵を生みます。この♂♀は当然ここで死んでしまいます(なんと儚い人生でしょうか、特に♂は…)

山形県南部の雪迎え

雪虫の話を書いていて「雪迎え」という言葉を思い出しました。山形県南部で言われている言葉です(他の地方にもあるとは思いますが)。
なかなかきれいな言葉ですが、こちらは実は「クモ(蜘蛛)」が関係しています。

山形県の米沢盆地では、ちょうど初雪が降る頃に白い糸のかたまりが空を漂ってくることが知られていて「雪迎え」と言われています。米沢盆地の水田地帯に白竜湖と言う湖があります(南陽市の東側:あまり広くないので湖というよりは沼ですが)。学校の先生をしていた錦三郎という人が、この白竜湖をフィールドにして「雪迎え」を研究し、原因はクモが飛行するときに空中にたなびかせたクモの糸であることを突き止めました。クモは風のない穏やかな日に植物の先端部などに登って、お尻を上に向けて糸を出し、その糸と共に上昇気流にのって分散していく、バルーニングという分散手段を持っています。特に秋に限ったことではないのですが、晩秋に見られるものが「雪迎え」、春先に見られるものを「雪送り」と言っています。なかなか風情のあるいい言葉ですね。

虫たちにまつわる言葉
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ツキノワグマ

「雪虫」もそうですが、自然にはこのようなきれいな言葉がたくさんあります。それらの言葉が絶滅種にならずに使われ続けられることを切に祈っています。「雪迎え」の写真は残念ながらありませんでしたので、代わりにこの「雪虫と雪迎え」の原稿を書かなければ使われたであろう、クマの写真を最後に載せて終わりといたします。
(ツキノワグマ様へ、草むらのなかからじっと見つめるのはやめてください!)

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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