テクニカルノート

oh!山椒魚

文:佐竹 一秀 2010年3月1日

世界最大の両生類

突然ですが今回はサンショウウオです。
サンショウウオといえばオオサンショウウオ!現生の両生類では世界一の大きさです。ちなみに全長は150cm近くに達する個体がいるというから驚きです。こんなに大きな生き物が渓流の川底を歩き・泳ぎ回っていると思うと、多少恐怖を覚えます。が、残念ながら東北地方にはおらず、岐阜から西の本州、四国、九州の渓流に棲んでいます。また寿命も50年から100年、あるいはそれ以上になるともいわれています。
日本以外には中国に1種、その名もずばりチュウゴクオオサンショウウオです。また、近縁属も北米東部にやや小型のアメリカオオサンショウウオがいるにすぎません。

サンショウウオの由来と生態
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オオサンショウウオ(全長68cm)

両生類といいつつもほぼ水中から出ることはなく、サワガニや小魚、時にはカエルやヘビなどを餌としています。
山椒魚の字のごとく、昔は魚の仲間と考えられており、体表面の粘液が山椒の香りがすることから、この名がついたと言われています。また半分に裂いても生きていけることから別名ハンザキ(ハンザケ)とも言われています。しかし、残念ながら実際に半分に裂かれれば死んでしまいます…。
昔は食用にされた事もあるようで、肉は淡泊で美味しいという話ですが、この姿を見るとなかなか食べる気にはならないのではないでしょうか?

絶滅のおそれ…

日本のオオサンショオウオは、個体数が減少しており「日本版レッドデータブック(日本の絶滅の恐れのある動植物種)」の平成18年改定のレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類になっています。また、特別天然記念物にも指定されており、さらにワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の附属書Ⅰにも記載されて、商業目的の取引は禁止されています。

個体数減少の原因としては、河川改修により繁殖する場所(川岸の巣穴)が失われたり、堰堤やダムが作られた事による上流への移動阻害があります。最近の河川改修では落差がある場所には緩傾斜のスロープをつけ、移動できるようにしていますし、川岸に人口の巣穴を設置するような配慮も行われています。また、住民の方々の意識も高く、生息環境の保全と併せて効果が出てきていると思われています。

新たな危機

しかし、これらとは別に目に見えない新たな危機が拡大しつつあるようです。
冒頭でお隣の中国にもチュウゴクオオサンショウウオがいると書きました。また、肉が美味しいとも書きました。これをあわせると次のような物語ができます。

1972年に岡山の業者が食用に800個体を中国から輸入し、京都の高級料亭で売りさばき、一儲けしようとたくらみました。しかし、外見上日本産と区別がつかないので、日本産が密漁される可能性があると、文化庁からクレームが入り、残念ながら商売にはつながりませんでした。輸入された800個体のうち、翌年に300個体が死亡したとの記録が残っているとの事ですが、他の500個体は何処に…。それ以降の状況はわからないとのことなので、それらが自然界に放たれて、定着した可能性があります。

中国産サンショウウオとの交雑、遺伝子のかく乱

平成17年度に京都、大阪、兵庫、三重、岐阜の各地から合計で45個体分のサンプルを集めてDNA解析が行われました。その結果、京都府の加茂川で18個体のうちの2個体は明らかに中国産のオオサンショウウオであったとのことでした。これにより加茂川では国産と中国産が共存していることが確認されたのですが、この先、交雑により遺伝子のかく乱が起こる可能性もあります。またせっかくのオオサンショウウオの保護・保全活動が外来種の保護・保全につながっているのであれば本末転倒です。

さらに話を難しくしているのは中国産のオオサンショウウオも重要種に指定されていることです。
中国国内でも保護動物に指定されていますし、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、日本産よりも絶滅の可能性が高い種とされています。まずは調査をして国産か中国産かを見分ける事が大切なのですが、日本産は特別天然記念物で勝手に捕獲もできませんし、ましてや傷をつけてDNAサンプルをとることも、簡単にはできそうもありません。

日本のオオサンショウウオをどう保護するか?

うーーーん、困った!やはりまずは何とかDNAを調べて、日本産以外は隔離し、中国産は本国に強制送還、雑種が確認されれば動物園、水族館等の隔離施設での飼育でしょうか? ただし、早く手を打たないと問題はどんどん深刻化します。
今後も同じように移入種、外来種が絶滅危惧種、重要種という事も起こりえると思います。私が悩むよりは環境省の方々に悩んでもらい、早期に対策、対応方法を打ち出してもらえれば思います。

実はオオサンショウウオではなく小型のサンショウウオウである、クロサンショウウオやトウホクサンショウオの卵(卵のう)が宮城県でもそろそろ確認できるので、その話を書く予定でした。そのために先日、いつも見ている涌谷町のある場所に行って写真を撮ってきたのですが…
サンショウウオと言えばやはりオオサンショウウオ!

◎クロサンショウウオとトウホクサンショウウオの卵(卵のう)の見分け方講座
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    クロサンショウウオ(卵のう)

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    トウホクサンショウウオ(卵のう)

どちらの種も丘陵地から山地にある小さな溜池、山際の水田や流れのほとんどない用水路、沢の細流等に産卵する。クロの方がより流れのない溜池等を好む。宮城県では3月~6月頃。標高が高くなると遅くなる傾向がある。

◆クロサンショウウオ:産みたてはアケビの実のよう白色で、親指2本分程度の大きさ、その後水分を含んで拳大で半透明となる。雌は一対(2個)の卵を産むので、写真は産みたてで6、7対。
◆トウホクサンショオウ:親指くらいの太さで長さ10~15cm程度のしわのあるひも状の卵。クロサンショウオと同じように雌は一対(2本)の卵を産む。写真は1対。時間がたつと、なかの粒状の卵から幼生(オタマジャクシ似)に変化し、時々動く姿も観察できる。

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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