テクニカルノート

音風景100選・広瀬川のカジカガエル!

文:佐竹 一秀 2010年5月1日

日本の音風景100選
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カジカガエル

今年の春は寒かったり寒かったり、暑かったり寒かったりで、全く春らしくありません。桜は咲いたのですが花見に行く気分になれません。皆様は如何でしたか?

春から初夏の風景を広瀬川にかさねると…、ヤナギの新緑と心地良いそよ風、そしてせせらぎの音…河畔林からはウグイスの囀り、水面すれすれに飛ぶツバメ、そして河鹿蛙(カジカガエル)の澄んだ声。この広瀬川の風景は、残したい日本の音風景100選にも選ばれています。平成8年に環境省(当時は環境庁)が全国各地で地域のシンボルとして大切にし、将来に残していきたいと願っている音の聞こえる環境(音風景)を広く公募し、音環境を保全する上で特に意義があると認められるものを「残したい"日本の音風景100選"」として選定しました。この100選は、日本の音風景の多様性がそのまま反映され、自然環境だけではなく、文化や地場産業が形成する音風景も含めた、幅広い内容になっています。宮城県では「広瀬川のカジカガエルと野鳥」の他に、「宮城野のスズムシ」、「北上川河口のヨシ原」、「伊豆沼・内沼のマガン」が選定されています。

かつて絶滅したカジカガエル

広瀬川のカジカガエルは一時絶滅した事があります。といっても広瀬川全域からいなくなったのではなく、生活排水等の流入により市街地に近い所で水質が悪化し、牛越橋の下流側でカジカガエルが生息できなくなった時期がありました。これは昭和30年代の話ですが、昭和40年代初めには栗駒町の中学生が捕獲したカジカガエル1,500匹が広瀬川に移植されました。この移植されたカジカガエルが市街地に近い広瀬川のカジカガエルを復活させたのでしょうか?現在では仙台バイパスにかかる千代大橋付近まで生息が確認されているようです。市街地のカジカガエル、広瀬川上流のカジカガエル、栗駒町のカジカガエル、これらのDNAを解析すると、面白い結果が出るのではないと思っています。

遺伝子レベルでの多様性

現在は外来生物のみならず、在来種であっても国内での移動は遺伝子レベルで影響を受けることから、移動させていけないという流れになっています。前述のカジカガエルの移植も少し考えさせられます。水処理技術の向上、下水道の普及等により広瀬川の水質は改善されています。上流にはカジカガエルが棲んでおり、大雨が降れば当然下流に流されます。市街地に近い広瀬川にも、瀬や転石等のカジカガエルの繁殖環境が整っています。本来の(陸上での)生息環境である河畔の樹林や崖地等もあり、餌となる昆虫も棲んでいます。水質が改善されれば、何もしなくてもカジカガエルが復活した可能性は大きいのでは…。

カジカガエルのオタマジャクシの特徴
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オタマジャクシ(カジカガエル)

右の図はカジカガエルのオタマジャクシ(幼生)です。これは他のカエルのオタマジャクシと比べると、口が大きいという特徴を持っています。また体型も流線型です。これらは流れの速い川に生息するのに適しています。大きな口は吸盤代わりに岩にへばりつくことができますし、流れの速い場所でも移動できるように、流線型の体になっています。さらに大きな口は、餌となる岩についている藻類を食べるのにも適しています。

季節は春から初夏へと着実に進んでいきます。私たちは、ともすれば目先の利益にとらわれ、あるいは何も考えずに世の中に流されて生きているように思います。本質をしっかりと見極めて、考え、着実に進んで歩んでいきたいものです。

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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