テクニカルノート

もみじ(紅葉)・かえで(楓)

文:佐竹 一秀 2010年11月1日

紅葉とカエルの手
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秋の紅葉

山手線の電車内のモニターに、「楓(カエデ)」の語源は? 季節柄そのような問題が映しだされていました。

その日はカエル探偵団の講演会&総会。カエル探偵団!ふざけた名前ですが、カエルの研究者や愛好者の集まりです。日本爬虫両棲類学会にも認知されている立派な?団体です。講演会帰りで頭の中がカエルだらけでしたので、即座にカエルの手→カエル手→カエルテ→カエデ…

正解でした。

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カエデ?

  • 秋の夕日に 照る山モミジ 濃いも薄いも 数ある中に
  • 松を彩る かえでやつたは 山のふもとの 裾もよう
  • (曲名:紅葉(もみじ) 作詞:高野辰之 作曲:岡野貞一)
東京のカエル事情

ここから紅葉の話をすれば良いのですが、頭の中をまだカエルたちが飛び跳ねていますので、カエル探偵団の講演会にあった東京のカエル事情について少し話します。

東京都の保護上重要な野生生物種(レッドリスト2010年版)が今年(2010年)3月に改定されました。ただ小笠原等の島嶼部は除かれた、本土部についてです。また、東京都と言っても奥多摩も東京都ですので、区部と北多摩(区部の西側の調布市から立川市周辺)、西多摩(福生市、あきるの市から山梨県境まで)、南多摩(町田市、八王子市周辺)の4地区に区分されてランク付けされています。

すべてのカエルが絶滅の恐れ

この中でカエル達が凄いことになっています。
区部で生息が確認されていたトウキョウダルマガエル、ツチガエル、シュレーゲルアオガエルがCR(絶滅危惧1A類)です。その上のランクはEWの野生絶滅、そしてEXの絶滅ですので、絶滅間近と言える種です。ニホンアカガエルがEN(絶滅危惧1B類)、なんと前回(1998年版)ではランク外だったアマガエルもENです。さらにアズマヒキガエルもNT(準絶滅危惧)となり、区部に生息する全てのカエルが絶滅の恐れのある種にランクインしてしまいました。アズマヒキガエルについては、都外から持ち込まれたニホンヒキガエルとの交雑や、他地域から持ち込まれた種の話も聞かれるようで、遺伝種レベルの攪乱も懸念されています。

またカエルではありませんがイモリ科のアカハライモリも区部では信頼できる生息情報はなく、すでに絶滅した可能性も否定できないとされています。他の北多摩、南多摩地区についても今回の改定でランクインあるいはランクがUPした種が多くおります。

水田の減少によるもの

それらの種の共通点は水田に依存していることです。絶滅危惧のランクは国のレッドデータブック・レッドリスト(さらに遡ってIUCN(国際自然保護連合))の規定に倣って作られている事が多く、東京都もこれに準拠しています。ENとかNTとかのカテゴリー分けは、定性的な手法と、定量的な手法があります。定量的な手法のなかには、個体数の減少を見る以外に、生息環境の減少を見る方法があります。これが先の水田依存とつながるのですが、航空写真から比較的簡単に植生図が作れ、過去の植生との比較が容易です。カエル類の多くは古くから稲作に依存していますので、アマガエル、トウキョウダルマガエル、シュレーゲルアオガエル等々水田を生息環境としている種が多くいます。谷津田(※谷地にある水気の多い湿田)の放棄による乾燥化・草地化等により、生息できる面積の減少や孤立化が進んでおり、水田に依存しているカエル類は絶滅危惧種に入ってしまっています。

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アマガエル:東京都の重要種

したたかな外来種

東京都のカエルは危ない!
カエルの数も減ってはいると思いますが、生息環境の減少の影響も大です。都市近郊の府県でも同じような状況と思います。

そんな中でもしたたかに生きているカエルがいます。皆さんの想像の通りですが、まずは外来種のウシガエルです。皇居や不忍池にもたくさんいるようです。それともう1種います。それがヌマガエルというカエルです。南方系のカエルで主に西日本の水田にすんでいましたが、分布を広げて北関東まで進出してきています。都内の某親水公園で絶滅危惧種のツチガエルと間違われて、大事にケースに入れられ展示されていたとか…。分布の拡大については良くわかっていないようですが、南方系ですので暑さに強い、地球温暖化…。まもなく白河の関を突破されてしまいそうです。ただ、基本的には水田等の湿地環境に依存していますので、東京の例にもあるように、水田の減少がそのうち影響するのではとも思っています。

レッドデータブック

おまけとして日本版RDB(レッドデータブック)のカテゴリーを以下に示します。これらに該当する種が増えないこと切に望みます。

  • ・絶滅(EX:Extinct)
  • ・野生絶滅(EW:Extinct in the Wild)
  • ・絶滅危惧I類(CR+EN)
       絶滅危惧IA類(CR:Critically Endangered)
       絶滅危惧IB類(EN:Endangered)
  • ・絶滅危惧II類(VU:Vulnerable)
  • ・準絶滅危惧(NT:Near Threatened)
  • ・情報不足(DD:Data Deficient)
  • ・絶滅のおそれのある地域個体群(LP:Local Population)

現在(2010年10月)、名古屋で生物多様性締約国会議(COP10)が開催されていますが、どのような結論になるのでしょうか? 先進国、途上国間のお金の話に終始しているようで怖いのですが、人間を含む本来の生物全体の多様性についての話を忘れずに、しっかりした話し合いが行われることを、期待に!期待に!期待しています。

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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