ecoris_logo.svg

痛い・かゆい生き物たち!!

2011年8月1日
文:佐竹 一秀
(WEB公開:2014年8月1日)

夜風とともにやってくる…

節電の夏です。夜は窓を開け、網戸越しの風を取り込みましょう。気持ちよく眠りに就こうとした瞬間、「プ~ン、プ~ン」と小さいのですが耳障りな音。

そうです、まさに「蚊の鳴くような声」のカです。気になってとても寝つけません。ここで寝てしまうと、翌朝は悲惨な結果がまっています。電気を点けて、蚊取り線香を焚き(最近は電気式が多いのでしょうか)、しばしカを探しまわりうろうろ、そしてパチン!
やっと落ち着いて眠れます。

  • image001.jpg

    ヒトスジシマカ

蚊の針は5つのパーツの集合体

実は血を吸うのは、メスだけです。通常は植物の蜜や、果汁を餌としていますが、卵を成熟させるための動物性のタンパク質が必要です。そこで、動物の血液を吸うのです。こっそりと人に近づき、止まり、細長いストローのような針を差し込みます。針といっても一本ではありません。血液などの植物を吸い上げる上唇(じょうしん)、唾液を送り込む下咽頭(かいんとう)、のこぎりの歯のようなギザギザの大あごと小あご、そしてそれらを鞘のように保護し包み込んでいる下唇(かしん)の5つのパーツの集合体です。実際には大あごで皮膚を傷つけ、小あごで切り広げ、上唇が毛細血管に達すると、血液を吸い上げます。ただその前に、下咽頭から唾液をだします。唾液には特殊なタンパク質が含まれていて、血液を固まりにくくし、また麻酔作用で痛みを感じさせなくもします。これを注入しないと、せっかく吸った血液が上唇の中で固まってしまい、カそのものも窒息?(窒血?)して死んでしまいます。この唾液が曲者です。人体に触れると一過性のアレルギー症状を起こし、痒くなったり、腫れたりします。これが蚊に刺された後に起こる症状の原因です。

刺すハチはすべてメス!

刺す昆虫と言えばハチ、その代表がスズメバチではないでしょうか。これに刺される事を考えると、蚊に刺されることぐらい何でもありません。怖いのはハチ毒に対するアレルギーを持っている人が刺されると、アナフィラキシーショックを起こしてしまうことです。呼吸困難や血圧の低下を招き、場合によっては死んでしまいます。刺すハチは全てメスという事を知っていますか。毒針はもともと産卵管から変化したものです。植物や他の昆虫に卵を産み付けるための管が、卵を産み付ける先の昆虫を麻酔させるための管に代わり、スズメバチではさらに巣を守るための毒針に変化したと考えられています。元々は産卵管なのでメスにしかありません。そのため、刺すハチは全てメスという事になります。

一匹の女王のために

スズメバチの一年は、越冬した女王バチが春先に一匹で巣作りするところから始まります。樹皮と自分の唾液で作った巣穴に卵を一つ産み、その卵から孵ったハチの幼虫はその後働き蜂となります。順次卵を産んでいき、働き蜂が増え数十匹になると、女王バチは卵を産むことに専念します。巣作りや餌集めは働き蜂の仕事となります。9~10月頃に働きバチが数百匹と最大になります。その少し前頃に新女王バチと雄バチの卵を産みます。それらが成虫になり、交尾を行い、新女王バチは体(貯精嚢)に精子を蓄えたまま、樹洞などで越冬します。他の働き蜂、雄蜂、そして旧女王バチは全て死んでしまいます。要するにその年の全てを新女王バチに託すことになります。

  • image002.jpg

    オオスズメバチ

スズメバチの天敵は…?

これからの季節、スズメバチに遭遇する機会もあるかと思います。その場合は大きな動作は避け、ゆっくりと後ずさりするのが良いと言われています。また黒色に対しては攻撃性が増すと言われていますので、野山に出かけるときに黒い服は避けたほうがよいでしょう。黒色に対して攻撃性が増す事について、色々と研究も行われているようです。最近の面白い?説では、天敵からの防御のために攻撃するとの考え方があります。それでは黒い天敵とは何でしょうか?普通に考えると熊や鳥ですが、実は人間ではないかというものです。人も一部の地方(海外も含めて)で蜂の子(蜂の幼虫、蛹)を好んで食べます。日本では長野県や九州が有名ですが、外国に中国の雲南省や東南アジアにもあります。それら蜂を食べる人達の髪の色は金髪や銀髪ではなく、いずれの地方も黒髪だというものです。

生態系の一員

震災により蚊の生息環境が増え、地球温暖化の影響で熱帯性の伝染病の仲介役になるのではとの話も耳にします。また、スズメバチに刺されたとの話もこれから多く聞かれると思います。人間にとっては害のあるある虫たちですが、生態系の一員です。うまくつきあっていきましょう。また、最近見なくなってしまった、蚊取り線香の煙や匂いについても、夏の風景として心の中に残しておきたいものです。

  • 【参考資料】
  • はてな委員会『昆虫と植物のはてな』(講談社、2009年)56-59頁、64-65頁
ページの上部へ戻る▲