テクニカルノート

秋の訪れと千鳥足

文:佐竹 一秀 2011年10月1日

震災から半年が過ぎて

震災から半年、あっという間だったような、とてもとても長かったような、なんとも言い難い時間でした。被災地は瓦礫撤去や仮設住宅の入居も進んでおり、少しだけ周辺の環境にも気を配ることが出来始めたように感じています。

調査には過去の記録が重要

被災地の動植物の状況はどうなっているのでしょうか?今後どのように変化していくか、あるいはどのようなことに気をつけていけばいいか、その調査が必要になってきています。調査にあたっての過去の記録が重要となります。被災地の過去のデータです。このような大震災が起こるのであれば、誰しも気にして記録を残したと思いますが、残念ながらそのようなデータはほとんどありません。一部の有名な場所、例えば蒲生干潟は大学や地元保護団体等が継続的に調査されているのですが、それ以外の地域ではほとんど無いでしょう。仙台市でも被災地周辺の過去のデータを探しているようです(特に水田地帯での生物データ)。

津波後の湿地環境
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H23.6の状況

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H23.8の状況

私のフィールドに、今回の震災で津波をかぶり、大きな被害を受けた、仙台空港と広浦の間にある防潮林とヨシ原、それに畑地のある地域があります。今から20年ほど前は盛んに鳥見に通っていた場所です。会社が仙台市内に移ってからは、あまり行けていませんでした。今思えばもっともっと通って、いろいろな記録を残せばよかったと後悔しています。

6月に一度行ってみたのですが、地盤沈下もあり大規模な湿地環境ができていました(右の写真です)。

その後、忙しさにかまけて行けていなかったのですが、8月23日と9月11、17日に見て来ました。ダイサギやアオサギ、カルガモ、バン等の水鳥や、旅鳥のソリハシシギ、ハマシギ、シロチドリなどの「シギチ」も確認できました。また、冬鳥として渡来したコガモやタシギ等も確認できました。湿性植物の繁茂もあり湿地環境が大部整ってきたように感じました。ただ瓦礫(ビニールハウスの金属の骨組みがほとんど)搬出のために重機が走りまわっていましたので、鳥たちにはまだ安住の地とは言えないかも知れません。

シギ科とチドリ科で「シギチ」
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コチドリ

ちなみに、「シギチ」とはシギ科とチドリ科の鳥類の総称です。シギチドリ類と言う場合も多いですが、「シギチ」とさらに略すのがチョットだけ通(つう)です。コチドリ、イカルチドリ、イソシギなど日本で繁殖する種も少しはいますが、北極圏に近い高緯度の地域で繁殖し、赤道付近や南半球で越冬する種がほとんどです。
日本には、春と秋の渡りの途中に、干潟や河口などの湿地に飛来します。このように広範囲に季節移動するシギチを保護するためには、繁殖地、渡りの経由地、越冬地のそれぞれの地での環境保全が重要となります。今回の震災により渡りの経由地に少しだけですが良好な湿地環境が増えたかも知れません…。

ヒトも千鳥足

チドリ足(千鳥足)という言葉があります。酔っぱらいが右に左にフラフラ歩く様を言いますが、チドリはこのようには歩きません。たまに足を交差させる事はありますが、しっかりとした歩き方をします。ただ海岸の波打ち際で餌を探すときは、波の動きに併せて、行ったり来たりしますので、この動きを千鳥足と言うのであれば納得です。少し冷えてきましたので、熱燗がチョット気になります。その後は千鳥足…

秋の訪れ
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伊豆沼のガン

昨日(9/19)夕方、東北自動車道の築館と古川の間で、ガンの一群を見ました。夕焼けの中のガンは秋を感じさせてくれました。シギチの渡りといい、冬鳥のガンやコガモの渡来といい、震災があっても、暑い暑い夏が過ぎれば、しっかりと秋は来るのですね。今年は何だか、いつもの年より寂しい、そしてもの悲しい秋を感じています。

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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