テクニカルノート

ヒッツキムシ!!

文:佐竹 一秀 2011年11月1日

ムシはムシでも
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ヒッツキムシ(オナモミ)

今の時期、草むらを歩きまわると、シャツやズボンにヒッツキムシがひっつきます。ムシとはいっても植物の種子です。人や動物にひっついて、分布を拡大する戦略をとっている植物たちです。

いろいろなひっつき方

ひっつき方にも色々あって、かぎ針を持ったもの、釣り針の返しのように刺さると抜けない逆さ針、ねばねばの粘着テープなどがあります。子供の頃、道端のオナモミの実を投げっこして遊んだ人も多いのではないでしょうか。このオナモミの仲間がヒッツキムシの代表格と思います。しかし、さわると結構痛いです。単に動物にひっついて移動するだけであれば、ここまで痛いトゲトゲは必要ないと思います。そのトゲトゲにより、動物から食べられないようにすることにも役立っていると思います。

ふたつの種がある理由

守られるほどその実は美味しいのでしょうか。私は食べたことはありませんが、ものの本によれば、この実を割るとなかにはヒマワリに似た種が2個入っていて、食用のヒマワリの種と同じような味がするとのことです。また、中国ではこの種から食用油をとるとかで、栽培もされているようです。2個の種は大きさや皮の厚さが少し違います。大きく薄い皮の種は先に発芽します。一方小さく厚い皮の種は、1~2週間遅れで発芽します。これはオナモミの生育する草地や水辺は環境の変化が激しく、最初に発芽した種が確実に育つとは限らないため、保険のために2つ目の種子を持っていると考えられています。

動植物の性質を機械や道具に

このカギ状の種、ヒッツキムシを基に考案されたのが、面ファスナーです。マジックテープやバリバリテープといったほうが通じるかもしれません。片方にかぎ状の爪をもった繊維、もう一方にループ状に起毛した繊維をあわせることで、接着させることができ、かつ簡単に何度でも着脱できる優れものです。このように植物(動物も)の性質、特性を生かして、人間生活に役立つ機械や道具に応用することをバイオミミクリー(生物模倣)といい、最近耳にすることが多くなってきました。
新幹線の風きり音を軽減するために、音をたてない飛ぶフクロウの羽と同じようなギザギザをパンタグラフにつけることや、カワセミが採餌のために水中にダイビングする時の波紋が少ないことに目をつけて、新幹線の先端部をカワセミの嘴に似せて尖らせることで、トンネル通過時の騒音対策に役立たせている等々があります。今後の省エネ生活には欠かせない事も沢山あると思いますので、いつかまとめて取り上げてみようと考えています。

また冬が来る
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津波をかぶったサクラとケヤキ(南広浦)

気がつけば秋も終わりに近づいています。いろいろな事がたくさん有り過ぎた年、とは言っても、震災+原発事故だけですが…。道端のヒッツキムシを服につけて遊んだ、古きよき時代を思いつつ、私ももう少し頑張ります。

  • 【参考資料】
  • 多田多恵子『身近な植物に発見!種子たちの知恵』(日本放送出版協会、2008年)124-131頁

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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