テクニカルノート

『カエルの合唱』から1年

文:佐竹 一秀 2012年7月1日

カエルの合唱ふたたび
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アマガエル(鳴嚢をふくらませている)

今の時期、田んぼは夜になるとうるさいぐらいの音量で、カエル達の合唱が聞かれます。声の主はアマガエル、トノサマガエル(仙台では近縁種のトウキョウダルマガエル)、シュレーゲルアオガエルなどです。その事を書いたのが、1年前のニュースレター「カエルの合唱」でした。

1年前の6月初旬、名取市閖上地区の田んぼ(瓦礫や車、船が散在していて田んぼとは呼べないのですが)で鳴き声の確認を行ない、約1平方キロメートルの範囲内に11個体のアマガエルを確認しました。3.11の津波にも負けず、劣悪な環境にも何とか耐え抜き、細々と鳴き、生き残っていてくれました。

一年が過ぎ、閖上のカエルたちの状況は

今年はどうなっているのでしょう。1年の間に雨も降り、塩分も大部抜け、生息環境としては、大部改善してきたと思います。虫やクモなどの餌は豊富にあったのでしょうか。虫屋さんの話では種類はそこそこ確認できたが、数は圧倒的に少ないとの事でした。ということは餌そのものが少ない事になります。カエルの数も少ないから、つじつまが合う!と言うわけには残念ながらいきません。数が少なければ、出会える確率も下がり、餌にありつけずに餓死してしまいます。

今年は6月6日の夜に閖上に行ってきました。昨年、生き残ったカエル達は生き延びていてくれているか、とても不安な気持ちで車のエンジンを止めました。外に出て耳を澄ますと、かなり遠くからですが、アマガエルの鳴き声が聞こえてきました。そちらの方向に車を走らせると、6匹以上の声が聞こえました。カエルは1匹鳴き出すとそれにつられて他のカエル達も一斉に鳴き出し、どこで鳴いているかなかなか聞き取れません。でも、確かに生き残ってくれていました。複数が集まっていましたので、繁殖にもつながるかもしれません(ただ、鳴くのは雄ですので、雌がいなければ…)。

また、昨年は確認できなかったシュレーゲルアオガエルの声も同じ場所から聞こえました。この場所は、カエル達にとって良い環境なのでしょうか。他にも何カ所かで集まって鳴いていました。全部でアマガエルが17個体以上(昨年は11個体でしたので増えている?)。また、シュレーゲルアオガエルも5箇所で各1個体確認でき、津波からの生き残りか、周辺地域からの侵入が考えられました。ただ周辺からの侵入となると、チョット距離があるようには思います。

カエルの鳴き声いろいろ
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トノサマガエル(鳴嚢をふくらませている)

カエルの鳴き声は、鳥のさえずりと同じで繁殖行動です。声を出すのは雄ですが、どのような声をだすのでしょうか。一般的によく知られているのはウシガエル(別名食用ガエル)でモーとかヴォーとかと聞こえます。外来種であり悪食でヘビも食べます。ヘビに飲み込まれているカエルの話はよく聞きますが、ウシガエルでは逆にヘビを食べるところも観察されています。

他に有名どころではカジカガエル。口笛を吹いたようなフィフィフィ…、仙台市内の広瀬川でも鳴いています。民家の周辺や水田で多く鳴いているのは前述のアマガエルで、ヴェ ヴェ ヴェです。多分一番馴染みがあるのですが、あまりに一般過ぎて記憶に留まっていないのかも知れません。シュレーゲルアオガエルは私にはケタケタケタ…と聞こえますし、トノサマガエルの近縁種のトウキョウダルマガエルはアマガエルの声を短く詰めてヴェヴェヴェあるいは、それこそゲゲゲ…と聞こえます。

地球で初めて「声」を出した生物

カエルは生物の進化のなかで、声帯を使って鳴いた最初の生物と言われています。肺に吸い込んだ空気を吐き出すときに、喉にある声帯を震わせて鳴くのですが、その時に鳴嚢(めいのう)と呼ばれる、袋を共鳴させて響かせているのです。よくマンガでカエルの両方のほっぺたが膨らんでいる絵が出てきますが、まさにそれです。ただ、種類によって鳴嚢の場所や形が違います。カエルの代表選手、トノサマガエルは上の写真の通り両方のほっぺを膨らませます。アマガエルは喉の下の部分が大きく膨らみます(冒頭の写真がそれです)。また、カジカガエルはアマガエルと同じように喉の下を膨らませますが、膨らみが左右に分かれます。また、ニホンアカガエルは外には膨らまず内鳴嚢を持っていますし、ガマガエル、正式名称はヒキガエルですが、鳴嚢がなく喉だけで鳴きます。いろいろな鳴き方があって面白いですね。

戻ってきた田んぼ

仙台市の東部、大沼周辺の田んぼは、去年お米を作ることができませんでした。今年は作られはじめていました。ただ、カエルの声は少なく、津波と1年耕作できなかった影響が残っていると思われました。田んぼに水が入ることで、多くの生物にとっての生育・生息環境の場が提供されます。生き残った生物と周辺地域から移動してくる生物達にも期待しつつ、来年以降もこれらの地域をモニタリングしていき、回復状況を確認していきたいと考えています。(昨年も同じ事を書きましたが)被災地にうるさいくらいの蛙の声が響き渡る日を期待しつつ…

  • 【参考資料】
  • 松井孝爾『カエルの不思議発見』(講談社、1999年)19-23頁

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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