テクニカルノート

夏休み!カブト・クワガタ

文:佐竹 一秀 2013年8月1日

夏休みといえばクワガタ捕り
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樹液に集まるカブトムシ

梅雨の空ける気配が全く見られませんが、世の中は夏休みのようです。「夏休み」。子供の頃は何かしらワクワク感がありましたね。早起きをして近くの雑木林へ行き、カブトムシやクワガタムシを捕る、それも楽しみのひとつでした。お目当ての木が近づくとドキドキ、ワクワクしたものです。結果はほとんどがダメでしたが、ひと夏に1回くらい大型のノコギリクワガタがとれて、大興奮した記憶があります(私の住んでいたところではカブトムシやミヤマクワガタは比較的多く、ノコギリクワガタは少なかったです)。

捕まえたカブトムシやクワガタムシを飼う以外に、無理矢理戦わせる事もしました。彼等にとってはいい迷惑だったとい思います。今の時代、カブトやクワガタ捕りに行く子供はいるのでしょうか、こんな子供も絶滅危惧種になってしまっているのではと、チョット心配ではあります。

名前の由来

カブトムシの名前の由来は、いうまでもなく武具の兜(かぶと)からきています。カブトムシを覆っている黒くて固い殻が、武士の甲冑(かっちゅう)そのものですよね。ではクワガタはどうでしょうか。これも同じく兜からきています。兜の額の部分にあるのが「鍬形(くわがた)」(あるいは前立てとも呼ばれる)です。たしかに兜にはクワガタムシと同じような1対の角があるのが一般的ですね。少し前の大河ドラマで有名になった直江兼続の「愛」の字や、伊達政宗の三日月も鍬形ではあるのですが、少し変形でしょうか。

欧米にはカブトムシ・クワガタがいない!

日本の子供達には人気のカブトやクワガタですが、欧米では人気がありません。欧米には日本のカブトやクワガタのように大きな角をもった昆虫はいません。近縁種としてはダイコクコガネの仲間などがいますが、糞虫(動物の糞を餌にしている甲虫の仲間)ですし、角はあるものの大きくないので興味がもたれていません。ヘラクレスオオカブト、コーカサスオオカブト等の外国産カブトムシも、ペットショップ等で売られていたりもしますが、原産地は熱帯から亜熱帯地方のジャングルや亜高山から高山帯だったりと、身近な所に生息していません。日本では雑木林や河畔林のヤナギ等にいて簡単に捕れますので、それを考えれば日本の子供達は恵まれています。

雄の戦いは四段階

最近、カブトムシやクワガタムシの研究成果が本になり、わかりやすくそしておもしろおかしく解説されていますので、そのなかからいくつか私の感想も含めて紹介します。まず、カブトムシの雄同士の戦いについてです。戦いは四つのステップを踏むといわれています。

第一ステージは出会い、そしてにらみ合いです。第二ステージは角の付き合わせです。ボクシングでいうところのジャブです。実はここで角の大きさを比べているとのことです。当然大きい方が勝ちますので、角の大きさに差があれば、小さな方は逃げだし勝負は決まります。他の動物の世界でも見られるように、無用な戦いを避ける意味があります。もし、角の大きさに差がなければ次の第三ステージに進んで、取っ組み合いになります。その後の決着(第四ステージ)は二通りで、取っ組み合いでしばらく押し合いをしたあとに、一方が逃げ出します。この時は体の大きさが関係しているようです。角のサイズや体のサイズは、幼虫時代の餌の状況によって決まります。栄養分の多い腐葉土を食べて育った個体は大きくなります。また、栄養分が少ない場合でも、角だけは大きくするように、栄養分の多くを角にまわしているようです。第二ステージを勝上がるための知恵(適応)と考える事ができます。取っ組み合いでも決着が付かない場合は、どちらかが投げ飛ばされて決着します。地面に落ちますので、足が折れたり、体が傷ついたりしますが、そこまでいけば強弱がはっきり、そしてスッキリしますね。では、なぜ雄は戦うのでしょうか。餌場を確保するためにとの理由はありますが、その場合、次に話をする雌への餌場提供の説明が付きません。

雌に餌場を譲る理由
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カブトムシ(♀)

餌場に雌が現れた場合、雄が現れたときのように戦うことはぜずに、餌場を雌に譲ります。というよりも雌がしゃしゃり出て餌場を奪い取るようにも見えます。雄は紳士的に振る舞いますが、雌は特にお礼を言うわけでもなく、ガツガツとそして黙々と樹液を吸います。紳士的な雄の行動には下心がある…皆さんも思い当たる節があるのではないですか。そうです、その間に雄は雌の背中に乗り交尾を試みます。ただ、雌は食事中ですので拒みます。しかし雄は簡単に諦めません。他の雄達から守った貴重な餌場に来た雌ですので、何とかものにせねばと頑張ります。乗っかって拒否されて、乗っかって拒否されて、そうしたやり取りが何回か行われた後に、やっと何とか許しがでて交尾する事が出来ます。ただ、交尾中でも雌は餌の蜜を吸い続けます。色気より食い気です。交尾は30分程行われるようですが、その後がなかなかの見物です。

雄の豹変!

交尾が終わると、いままで紳士的に振る舞っていた雄が豹変し、雌を追い出しにかかります。大きな角を振りかざし執拗に追い出します。それでも出ていかない場合は、雄と戦ったときと同じように角を使って、雌を投げ飛ばします。なんというひどい雄でしょうか。人(虫)の風上にも置けない、どうしようもなく酷い奴です。釣った魚に餌はやらないとう、どこかの世界の話に似ていますが…。また、交尾をいくら迫っても受け入れてもらえない事もあるようですが、この場合も雌を投げ飛ばします。要は、雄は子孫を残すためにたくさんの雌との出会いを求め、雌は産卵のための栄養補給、食事に全勢力を傾けます。雌からすれば交尾してもしなくても投げ飛ばされるのであれば、少しでも多く餌を食べた方が得ということです。また交尾をギリギリまで拒むことも、餌を多く得るための戦略とも考えられますね。

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ノコギリクワガタ

動物の行動には意味がありますが、余りにも酷い話ではないでしょうか。人間界では草食系男子が増えているようですので、カブトムシの雄を少しだけ見習っても良いかもしれませんね。ただ、最後に投げ飛ばすことは止めて下さい(何倍にもなって戻ってくる…ような気もしますので)。

最後に、子供の頃に滅多に捕れなかったノコギリクワガタの写真を載せました。水牛のような角がなかなか良いです。

  • 参考資料
  • 本郷儀人『カブトムシとクワガタの最新科学』(メディアファクトリー、2012年)

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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