テクニカルノート

夏休みの自由研究はアリジゴク?!

文:佐竹 一秀 2014年8月1日
(WEB公開:2017年8月1日)

自由研究にアリジゴク
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アリジゴク(ウスバカゲロウ)の巣穴

暑いです。夏です。子供達は夏休みです。子供の頃はワクワクドキドキしていましたが、最近の厳しい暑さを考えると、早く秋よ来いと願ってしまいます。今日は7/26、まだ梅雨明け前なのですが…。

子供の頃の夏休みを思い出してみました。夏休みの自由研究で、アリジゴクを観察した事がありました。半世紀近く前の話ですので記憶は定かでありませんが(もしかしたら空想かもしれません…)。

さらさらの砂の中

お寺の境内下にたくさんアリジゴクの巣があり、巣の中をほじくり出して幼虫を数匹捕まえ、併せて床下のサラサラの砂を家に持ち帰り飼育しました。砂と幼虫をバケツに入れておいたところ、一晩ですり鉢状の「アリジゴク」を作りました。

さっそく近くからアリを捕まえてきて、バケツの中に入れて観察しました。バケツの中に放されたアリは、逃げ道を探してあちらこちら歩きまわり、そのうち「アリジゴク」に落ちます。ただ、アリジゴクの思い通りにならず、途中でもがきながら這い上がる事も多く、なかなか餌にはなってくれません。また斜面でもがいていると、穴の中心の底から砂粒を浴びせかける行動も良く見られました。餌がとれないのでかわいそう?になり、アリを少し痛めつけてから「アリジゴク」に落とし、見事!食べられる所も観察しました(どちらが可哀そう?)。

アリを取ってきては何日か(2、3日?)はみていましたが、そのうち飽きてしまい、かまわなくなりました(もしかして母親が時々アリを入れてくれていたのかもしれません)。しばらく経ってから、バケツを掘り返してみると、真ん丸な土団子のようなさなぎになっていました。土団子までの記憶はあるのですが、その先成虫になったかどうかの記憶はありません。お母さん、あの時のアリジゴクはどうなったのでしょうね…。

正式名はウスバカゲロウ
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アリジゴク(ウスバカゲロウ)の幼虫

アリジゴクの正式な名前はウスバカゲロウです(他にも何種類かは「アリジゴク」をつくります)。幼虫は、お寺、神社、民家等の床下や山道の脇に、すりばち(ロート状)のくぼみを作り、くぼみの底で餌となるアリ等の小動物が落下してくるのをまっています。餌が落ちてきたら、はさみのような大アゴでつかみ、体液を吸いとります。餌となるアリは垂直な壁を登れるほどの登坂力が有り、そのための鋭い爪をもっています。それがアリジゴクに落ちては這い出せなくなるのは、すり鉢状の砂の斜面の角度にあります。

砂が崩れないギリギリの角度がポイント

砂を山盛りにした時に、砂が崩れてこない傾斜の角度を安息角といい、アリジゴクはこの角度ギリギリの傾斜の斜面を作っているのです。そうするといくら登坂力のあるアリでも砂ごと崩れてしまい、餌食になってしまいます。安息角は湿度によっても変わりますので、幼虫はその状態にあわせて角度調整を行っています。下手な重機オペレーターより優秀ですね。

また、餌が落ちてくるかは運任せの所もあります。普通は2年で蛹を経て成虫になりますが、栄養が悪いと3,4年かかるのもいるようです。餌なしでも3か月程度は生き延びられる、生命力もあります。アリジゴク内に潜んでいるときは、汚れてしまうためか、糞はしません。幼虫の期間ですので2~4年間便秘状態です(なかなか辛いですね)。それが成虫になる時にまとめて糞をします。かなりの快感でしょうか。幼虫期間は2~4年で、6月ごろに土団子状の繭を作って蛹になります。1ヶ月程度の蛹の期間を経て7~8月ごろに成虫になり2,3週間で交尾産卵をして一生を終えます。この成虫の期間は、水だけ飲んで断食生活です。幼虫時代には便秘地獄、成虫になっても断食地獄ですので、まさに「有り地獄」な一生です。

コンクリートでアリジゴクの住処が…

ここで私の子供の頃の記憶と、上述のアリジゴクの生態でずれが出てきました。6月頃に土団子状の繭を作るとのことですので、私の行った(かもしれない?)夏休みの自由研究では時期的に少々遅いような気がしました。そこで状況を確認すべく近く神社にいてみました。ところが、最近の神社、特に市街地にある神社やお寺は、土台がコンクリートで固められ、あるいは玉砂利がきれいに敷き詰められていて、アリジゴクが生きられる砂地が有りませんでした。町の中ではアリジゴク絶滅!そこで少し足を延ばして別の神社に行ってみました。が、そこも基本的にはコンクリートと玉砂利でした。しかし一角に小さな建物が有り、そこにはアリジゴクがいました。ただ、床下を覗き込んだり、あるいは棒切れで床下の砂をかき回したりする事に、多少のためらいを感じてしまいました(大人になってしまったのですね)。ですので、残念ながら蛹を確認することはできませんでした(夏休みの課題ではなく、単に興味本位で飼育したのでは…)。

皆さんアリジゴクを飼ってみたくなったのではないですが。アリジゴクからストローを使って簡単に幼虫を捕まえる方法を、エコリスHPにUPしています。興味のある人、夏休みの自由研究にやってみようかという人がいれば下記参照ください。

アリジゴクの採集 for Kids | テクニカルノート | 株式会社エコリス l

  • 参考資料
  • 稲垣栄洋『身近な虫たちの華麗な生きかた』(築摩書房、2013年、91-95頁)

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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