テクニカルノート

5月のカワセミ第138号 垂直交換

2008年6月7日発行

キツネ

キツネ
学名 Vulpes vulpes (Linnaeus,1758)

5月になると、仔ギツネたちが巣穴から姿を現す。
岩手県久慈市の里山で産まれた仔ギツネの突然の死。
頭骨の中に隠された驚くべき萌芽を見た。

生後2ヶ月か

キツネの頭骨

キツネ
学名 Vulpes vulpes (Linnaeus,1758)

3月中旬頃に産まれたのだろう。産まれてすぐの仔ギツネの毛は暗褐色だが、生後1ヶ月を過ぎると淡褐色の長い毛が生えはじめる。生後6週間くらいで体重は1kgになる。それまでの巣穴生活から開放されて、4、5頭の兄弟が巣穴前でじゃれあうようになった頃であろう。株立ちの幹の間に逃げ込んだ1頭が、首を挟んで身動きがとれなくなった。巣穴前は斜面のため、後肢でもがいても空を蹴るばかりで、体重が更に首を根元へ押し下げた。わずか2ヶ月ほどの命が絶えた(上)。と、私の憶測である。

頭骨の中の永久歯

仔ギツネの供養にと、頭骨を観察した。ヒトと同じく乳歯が生えて、生後20から30日で餌を食べることができる。頭骨の中で、次の永久歯の胚が育ち、やがて生え変わる(右上)。長鼻目の水平に生え変わる水平交換に対して、上下に垂直方向に生え変わる垂直交換という。

※乳歯が生えた頭骨を壊して、永久歯を摘出した。 乳歯を支える骨の中で、 すでに永久歯の歯冠部分が形成されていた。

自然観察新聞 5月のカワセミ第138号 垂直交換

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ナイト・ウォッチング

塀の上のハクビシン

ハクビシン
学名 Paguma larvata (C.E.H.Smith,1827)

住宅地にある獣道

5月17日の深夜1時、kukuku…と奇妙な、鳥が絞め殺されるような鳴き声で目が覚めた。寝床で聞耳を立てていると、今度はUkyokyokyo…という鳴き声がした。とその時、外の街灯に映し出された黒い影が窓の外の塀の上を歩いた。長い尾からハクビシンであることが分かった。昨年9月20日にわが家のウメの木でキジバトの雛を捕食したように、探餌しているのだろう。塀の上を2頭が並んで、kukuku…と鳴いて、闇に消えていった。

※塀の上は獣道である。密集した住宅地でも、簡単に移動できるようだ。

バード・ウォッチング

キセキレイの雛

キセキレイ
学名 Motacilla cinerea

巣箱を別のペアが利用

前号137号のシジュウカラの雛は、5月10日午前9時過ぎに巣立ちをはじめた。5羽が巣立ったところで、1羽がハシブトガラスに捕食されたためか、3羽の雛が巣箱内に残留した。親鳥はこの3羽のためにも餌を運び続けたお蔭で、翌11日午前9時過ぎ(いつもこの時間に巣立つ)3羽も無事に巣立っていった。

1週間後の5月17日、極太の黒ネクタイをした雄と雌の別ペアがウメの木にやってきた。雌は、前のペアがしたように、隣家の壁の隙間に入って、断熱材を巣箱に運び入れはじめた。1シーズンで巣箱が2回繁殖に利用されたのは初めてのことである。5月20日には卵3個を抱いていた。これを書いている6月6日現在は、孵化したばかりの晩成性の雛に、親が餌を運んでいた。巣立ち予定日は6月24日前後か。シジュウカラの雛の写真は前号に載せたので、巣立ち直前のキセキレイの雛を載せる(上)。

※6月4日、山形県長井市にある砂礫地の岩の隙間にいた、巣立ち直前の雛。入口幅5.5㎝、入口高さ6.5㎝、奥行15㎝ある。

環境調査員 骨格標本製作 自然観察新聞発行
海棲哺乳類・爬虫類ストランディング調査
ボーン企画 代表 橋本 勝

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