テクニカルノート

8月のカワセミ第140号 食痕

2008年8月31日発行

ミヤマカミキリ

ミヤマカミキリ
学名 Massicus raddei (Blessig,1872)

夏の夜、大きなカミキリムシが橋の街灯に飛来した。
硬い鎧のような外骨格を身に纏い、
まるで無敵の空飛ぶ装甲車のようであるが、
実は、天敵から危うく逃れて、緊急避難したところである。

食べられたミヤマカミキリ

ミヤマカミキリの亡骸

ミヤマカミキリ
学名 Massicus raddei  (Blessig,1872)

ここは、新潟県の標高250mにある山村である。身を置く日陰もなく、アスファルトの照り返しがいつもより暑く感じられた。山間の集落と集落を結ぶ小さな橋を歩いていたとき、無残なミヤマカミキリの亡骸が目に飛び込んできた。

まるで、壊れたブリキの玩具のようである。橋の街灯の下はさながら戦場のようであった。夜になって、再びその橋に立った。やはり、街灯の明かりに誘われてミヤマカミキリが飛来していた。

※橋の上の食痕を拾い集めると、こんなにあった(右)。

コウモリの狩場

バットディテクターを夜空に向けると、激しく反応を示した。大型の甲虫を好んで捕食するキクガシラコウモリをはじめ、ヤマコウモリ、ヒナコウモリ、テングコウモリも甲虫を食べる。夏の夜の灯下は、コウモリたちの狩場になっているのである。

  • 参考文献
  • 熊谷さとし、三笠暁子、大沢夕志、大沢啓子「ニッポン里山探検隊シリーズ2 コウモリ観察ブック」桜桃書房、2002

自然観察新聞 8月のカワセミ第140号 食痕

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腹足綱柄眼目オナジマイマイ科

ヒタチマイマイ

ヒタチマイマイ
学名 Euhadra brandtii brandtii (KOBELT,1875)

森に棲む炎の貝

岩手県住田町の山中深くにケヤキの巨木があった。その幹に美しい蝸牛(かたつむり)がいた。殻に火炎彩を施したヒタチマイマイ(マイマイ属)である。

茨城県、栃木県、群馬県に分布しており、岩手県、宮城県、山形県、秋田県で局地的に生息が知られている。実は、ここ住田町は石灰岩地帯でも知られ、蝸牛の殻(炭酸カルシウム)を作る材料を得やすい石灰岩地帯は蝸牛にとっても好適地なのである。

※地表よりも広葉樹の幹や葉で、この美しい火炎模様が見られる。殻高21㎜、殻径33㎜の中型である。

  • 参考文献
  • 川名美佐男「かたつむりの世界 マイマイ属」近未来社、2007

昆虫綱ハチ目スズメバチ科

ヒメホソアシナガバチの巣

ヒメホソアシナガバチ
学名 Parapolybia varia (Fabricius,1787)

細く、長く、造巣中

スズメバチが活発に活動している季節だが、山形県南陽市(標高250m)でヒメホソアシナガバチ(ホソアシナガバチ属)の巣を見つけた。腹部第1節が細長い柄のようになったホソアシナガバチの仲間で、分布がやや局地的で、巣を見ることは稀という。

スギの幼樹に掛けられた巣は、樹木の葉の毛を集めて作られ、垂直に下垂した細長い巣が特徴である。その長さを実際に計るのは危険であるが、目測で約30㎝あった。育房中に暴風雨などで壊れることも多いが、最大総育房数が947(矢島、1987)という報告もある。無事に新女王が羽化したのちは、総育房数を確認したいと思う。

※ヒメホソアシナガバチ…アシナガバチよりも色が淡く、細い感じに見える働きバチである。働きバチが羽化したあとの育房室にも産卵されて再利用されるらしい。

  • 参考文献
  • 高見澤今朝雄「日本の真社会性ハチ」信濃毎日新聞社、2005

環境調査員 骨格標本製作 自然観察新聞発行
海棲哺乳類・爬虫類ストランディング調査
ボーン企画 代表 橋本 勝

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