テクニカルノート

11月のカワセミ 第143号 交尾肢

2008年12月14日発行

ニホンカモシカの骨

ニホンザリガニ
学名 ambaroides japonicus de Haan

青森県、源流部、落葉広葉樹林、
硝酸塩濃度が0に近い、きれいな冷水。
そこは、ニホンザリガニの生息地。
秋の交尾を終えたザリガニたちが静かに冬を迎えようとしていた。

アメリカザリガニの仲間?

ニホンザリガニ

ニホンザリガニ
学名 ambaroides japonicus de Haan

青森県下北郡東通村にある小さな源流部を訪れた。今まさに色づきの枯葉が、沢に降りつつあった。積もった落ち葉を一枚一枚と捲ると、僅かに滲みだした水の中で泳ぐものがいた。ニホンザリガニである。

ニホンザリガニの雄の第一腹肢と第二腹肢は交尾肢になっている(右)。9月~10月は交尾の季節である。雄の交尾肢の先端から出された精子は、雌の腹部に付着し、雌は精包を抱いたまま、長い冬を越すという。

この交尾肢の形態などからニホンザリガニはアメリカザリガニ(科)の仲間とされている。しかし、実際はザリガニ(科)の仲間に近く、両科の祖先型という考えもある。ニホンザリガニが絶滅する前に結論がでてほしいものである。

※成熟年齢は5年、全長4㎝を越えてから。

  • 参考文献
  • 特集ニホンザリガニ「faura」no.12、2006
  • 川井唯史「ザリガニの博物誌 里川学入門」東海大学出版会、2007

自然観察新聞 11月のカワセミ第143号 交尾肢

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獣毛の同定類別

ヒメネズミが食べた堅果の食べ残し
九死に一生のウサギ

雪のなかでの定点観測は大変なこともあるが、思いがけない場面に出会うことも多い。
その日は、積雪が多いということで坂道の途中に駐車して調査していた。雪はすべての音を飲み込んで降り続けた。小止みになり視界が開けたとき、スギ林の間を真新しい白い坂道ができていた。と、雪の上を白いノウサギが駆け上ってきた。車の陰から成行きを見守っていると、ノウサギの後から跳躍するテンの姿も見えた。ノウサギは必死に私の足元を駆け抜けた。私と目が合ったテンは立ち止まり、慌ててスギ林へ消えた。そして、ノウサギの姿も消えていた。

※フィールドで採集した獣毛から、スンプ法(鈴木式万能顕微鏡印画法)で毛小皮cuticleを観察して同定することができる(右上)。ノウサギの毛断面は○でなく、亜鈴(あれい)のように側面が凹む(白く見えている)。

  • 参考文献
  • 邑井良守「獣毛による同定類別マニュアル」、イカリ消毒株式会社、2005

ビーチコーミング

コアホウドリの骨

コアホウドリ
学名 Diomedea immutabilis (ROTHSCHILD,1893)

漂着した海鳥の骨格

青森県東通村にあるシーサイドホテルに泊まり、日没前と翌朝に北国の海岸を歩いた。砂浜に漂着したコアホウドリ(アホウドリ科)2羽の死体を見つけた。

骨格標本にして、文献と確かめた。「鼻孔は嘴の側面に別々の管鼻として開孔し、(略)胸骨の後端には切刻みがある。胸骨は丈が短くて幅と同じ位である。叉骨は著しく短く、烏喙骨(うかいこつ)も短くてその基端は幅が廣い。左右の烏喙骨の先端は外側の方へ多分に開いている。嘴は巨大で高く、その両側は左右から壓せられた扁平な形で嘴端は鉤曲している。ふしょは中趾(爪共)より短く(略)後趾(こうし)を缺く。」なお、上腕骨の遠位端に骨化した(?)骨片を確認したが、この働きは不明である。

  • 参考文献
  • 清棲幸保「日本鳥類大圖鑑」第Ⅲ巻、講談社、1952

環境調査員 骨格標本製作 自然観察新聞発行
海棲哺乳類・爬虫類ストランディング調査
ボーン企画 代表 橋本 勝

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自然観察新聞 11月のカワセミ第143号 交尾肢


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