テクニカルノート

12月のカワセミ第144号 判別関数

2009年1月6日発行

ニホンカモシカの骨

ニホンカモシカ
学名 Capricornis crispus(Temminck,1837)

12月6日、大倉ダム(仙台市青葉区)下流で白骨化死体を見つけた。
眼窩前の涙骨部に大きな凹み(Antorbital pit)があることから、ニホンカモシカである。
一部破損していたが、頭蓋骨のほか32個の骨を確認し、
仙台市文化財保護課に報告した。

全身骨格の31.5%

ニホンカモシカの骨

ニホンカモシカ
学名 Capricornis crispus(Temminck,1837)

ニホンカモシカの死体が、ダム本体近くにある急峻な崖を何らかの事情で落下した際に、骨格の一部が途中の岩棚に落ちて、残ったものと見られる。ニホンカモシカの全身骨格を200個とすると、31.5%の回収率であるが、標本価値は充分にある。

寛骨の判別関数から雌

ニホンカモシカの骨格は雌雄差が少ないのが特徴である。洞角や頭蓋骨の判別関数で、雌雄鑑別できるが、洞角と下顎骨は見つからなかったため、寛骨(骨盤)の判別関数(正診率96%)から鑑別した。その結果、雌と判明した。その他、頭蓋骨の基底顔面軸長や後頭骨高においても雌の数値がでた。

  • 参考文献
  • 菅野美樹夫、土本信幸、杉村誠、鈴木義孝「ニホンカモシカ骨格の計測形態学的研究」岐阜大学農学部研究報告第46号、1982
  • 松尾信一「ニホンカモシカと山羊の解剖図譜(骨格・筋肉・生殖器)」信州大学農学部家畜生体機構学研究室、1991

自然観察新聞 12月のカワセミ第144号 判別関数

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馴化

ヒメネズミが食べた堅果の食べ残し
タンニンを無害化する

アカネズミは堅果を餌として利用するが、その堅果には被食防御作用のタンニンが多く含まれている。消化管損傷や臓器不全を起こすタンニンをアカネズミはどのように克服しているか。

アカネズミがタンニンを摂取すると、口腔内でPRPS(プロリンリッチプロテイン)(タンニン結合性唾液タンパク質)が分泌され、タンニンの機能を失ったタンニン-タンパク質複合体に変える。さらに、タンナーゼ産生腸内細菌がタンニン-タンパク質複合体を分解している、と考えられている。このようにPRPSの分泌量とタンナーゼ産生腸内細菌の保有量の増加によって、アカネズミはタンニンに対して馴化していると考えられている。

右の画像は、ヒメネズミが食べた堅果の食べ残しである。 堅果は胚軸に近い部分により多くのタンニンを蓄積している。 タンニンを回避しながら摂食している可能性もある。

  • 参考文献
  • 島田卓哉、野ネズミと堅果との関係 アカネズミのタンニン防御メカニズム「日本の哺乳類学①小型哺乳類」東京大学出版会、2008、p273-297

サインポスト

食痕と糞

ノウサギ
学名 Lepus brachyurus(Temminck,1845)

食痕と糞から推理

いささか生々しい写真なので、抵抗がある方は飛ばしていただきたい。ここは、日本海に臨む秋田県能代市にある風の松原。クロマツ林内である。立派な(?)糞はキツネのものだ。捕食されたのはノウサギである。見事な食べ方に感心して、カメラを向けた。

ウサギは骨が弱い、といわれる。ウサギの飼育本では「骨の体重に占める割合は7~8%で、鳥は5%、ヒトは18%」とある。典拠が明らかでなく、乱暴な数字であるが、 ウサギは捕食者から逃れるために骨を軽量にしたといわれる。腰椎3個、仙骨の一部と腸骨を食べ残したキツネは、満足して犯行(?)声明のように脱糞したのだろうか。

環境調査員 骨格標本製作 自然観察新聞発行
海棲哺乳類・爬虫類ストランディング調査
ボーン企画 代表 橋本 勝

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