テクニカルノート

3月のカワセミ第146号 塩類腺

2009年4月11日発行

シロエリオオハム、ハシブトウミガラス、ウトウが漂着していた。
洋上での生活が多い彼等は、どのようにして水分を補給しているのだろうか。
頭蓋骨に刻まれた窪みFossa glandula nasalis(上)に、腺があった。
高濃度の塩化ナトリウムを排泄する塩類腺(えんるいせん)である。

極限での水分補給の謎

海洋をおもな生活場所としている鳥の頭骨

3月は、秋田県西目町海岸でシロエリオオハムの漂着をはじめ、北海道天売(てうり)島の東対岸にある苫前町の海岸でハシブトウミガラスとウトウの漂着を見る機会があった。

これらの種に共通しているのは、海洋をおもな生活場所としていること。彼等は、陸や淡水から離れた環境で水分をどのように補給しているのだろうか。

頭蓋骨の塩類腺の働き

海棲哺乳類が持つ強力な腎臓のかわりに、鳥たちは塩類腺(えんるいせん)または塩腺(えんせん)という濾過装置を頭蓋骨に備えた。

塩類腺が発達した鳥類の頭蓋骨には、その腺を収容するために骨のくぼみFossa glandula nasalisがある(上)。塩類線は、瓶を洗うブラシのような構造のものが多数集まっている。ブラシの1本1本は細い管で、それに毛細血管が絡みついている。毛細血管内の血液にある高濃度の塩化ナトリウムは浸透作用でブラシの管に移り、更に軸にあたる太い管に集まって、鼻腔から体外に排出されるという。

  • 参考文献
  • シュミット・ニールセン 柳田為正訳「動物の生理学」岩波書店、1972
  • 岡本文良「冠島のオオミズナギドリ」小峰書店、1972

自然観察新聞 3月のカワセミ第146号 塩類腺

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フィールドサイン

アズマモグラとハタネズミの骨

アズマモグラ
学名 Mogera imaizumii
ハタネズミ
学名 Microtus montebelli

ペリットの中のモグラ

下北半島の夜明け前、広大な牧草地に臨むアカマツ林だけが夜の闇を留めていた。その奥でフクロウが鳴いた。
牧草地を囲んで植えられたハウチワカエデは葉をすっかり落としていた。その枝に産みつけられたヒメシロモンドクガの越冬卵があった。
何本目かのハウチワカエデの根回りにフクロウのペリットを見つけた。その場でペリットを解体して内容物を確かめた。獣毛の塊のなかからハタネズミの頭蓋骨と下顎骨に混じって、アズマモグラの左右の上腕骨が出てきた。

  • 参考文献
  • 大泰司紀之「哺乳類の生物学②形態」東京大学出版会、1998

飼育観察

冬眠からさめたアオダイショウ

アオダイショウ
学名 Elaphe climacophora (Boie, 1826)

桜開花、ヘビ目覚める

わが家で飼育中のアオダイショウの幼蛇が無事に越冬した(右)。

一緒に冬眠していたカナヘビたちは啓蟄(3月5日)頃に姿を見せていたが、4月のサクラ開花後に腐葉土を捲ってみると、アオダイショウは健康そうな鱗を見せて動き始めた。冬眠前に充分な餌を与えられなかったのが心配だったが、冬眠中に未消化の餌が消化器官に残っていると腐敗の原因となり、死に至るらしいので、結果的に良かったのかもしれない。正確な温度管理はしなかったが、暖房をしない部屋の日陰に飼育ケースを置いた。出張から帰った折に、ケース内が乾燥していれば霧吹きで湿度を与えた。

※冬眠中に飲水したかどうか分からないが、水場は確保しておいた。これからは、餌の確保で忙しくなる。

  • 参考文献
  • 笹川昭雄、『日本の野鳥 羽根図鑑』、東京、世界文化社、1995、303p.
  • 高田勝、叶内拓哉、『羽 原寸大写真図鑑』、東京、文一総合出版、2004、304p.

環境調査員 骨格標本製作 自然観察新聞発行
海棲哺乳類・爬虫類ストランディング調査
ボーン企画 代表 橋本 勝

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