テクニカルノート

4月のカワセミ第147号 卵嚢

2009年5月10日発行

トウホクサンショウウオ
学名 Hynobius lichenatus

ここは、仙台市泉区の市街地から程近い里山。
麗らかな春の落葉広葉樹林を歩いた。
水温む沢水にサンショウウオの卵嚢(らんのう)があった。
柔らかな揺籃に包まれた命に、春の悦びを感じた。

卵嚢の働き

クロサンショウウオの卵嚢

クロサンショウウオの卵嚢

4月23日は穏やかに晴れて、まさに山笑うが如しだった。糖蛋白質でできた1対の卵嚢が沢水に産みつけられていた(上)。このゼリー層には、卵の保護、粘着、保温効果、水カビ防止、保水効果があり、異種との交雑を防いでいる場合もある(ELINSON,1974,片桐,1977)。
トウホクサンショウウオの卵嚢の特徴である細かい條線(しわ)のゼリー層を透かして、胚の発生が見られた。孵化は近いのだろうか?

発生の段階を知る

受精から変態完了までの段階を区分した発生段階表によれば、66段階(澤野、1947)の内、鰓形成期のstage35~37あたりと思われた。この後、前肢芽形成期を経て、stage45~47で孵化する。

産卵日を推定

クロサンショウウオの卵嚢もあった(右上)。クロサンショウウオのゼリーは水中に産卵されると吸水し続け、その卵嚢の重量は孵化するまで増加する。卵嚢1個の重量は水温と関係なく、5日後に約74g、10日後104g、20日後144g、30日後176gとなるため、産卵日を推定できる。

  • 参考文献
  • 澤野十蔵『東北山椒魚の発生段階図』、札幌、鶴(ぐるす)文庫1947、p7
  • 内田亨、山田真弓監修『動物系統分類学』、第9巻下A1脊椎動物(Ⅱa1)、東京、中山書店、1996、p492

自然観察新聞 4月のカワセミ第147号 卵嚢

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カエル・ウォッチング

シュレーゲルアオガエル

シュレーゲルアオガエル
学名 Rhacophorus schlegelii

雌に複数の雄が抱接

雌に包接した雄ガエル(右)には、吾妻小富士(福島市)の残雪「雪うさぎ」を見る余裕はなさそうである。

この後、ペアは他の雄たちのラブコールを尻目に、畦の地中に潜る。そこで産卵が行なわれるのだが、他の雄にもまだチャンスはある。別の雄も潜って包接するため、地中では1匹の雌に複数の雄が抱接していることが多いらしい(FUKUYAMA,1991)。多くの雄から選ばれたように見える一番乗りの雄は、実は雌に産卵を促すスイッチの役目でしかないのかもしれない。

  • 参考文献
  • 内田亨、山田真弓監修『動物系統分類学』第9巻下A1脊椎動物(Ⅱa1)、東京、中山書店、1996、p492

フィールドサイン

トラツグミ

トラツグミ
学名 Zoothera dauma

トラツグミの尾羽

4月12日、仙台市太白区坪沼の溜池でトラツグミが捕食されていた。宮城県ではトラツグミは漂鳥であるが、このようなフィールドサインから生態を窺うことができる。

ところで、トラツグミの初列風切羽は9枚、尾羽は12枚とされていたが、最近は極端に短いP10を含めて初列風切羽10枚となり、尾羽は14枚になったらしい。

私が以前調べたときは、初列風切羽の極端に短いP10は見落としたとしても、尾羽は12枚だった。今回の捕食現場で回収できた尾羽は11枚に止まった。今後も尾羽について注目していきたいと思う。

  • 参考文献
  • 笹川昭雄、『日本の野鳥 羽根図鑑』、東京、世界文化社、1995、303p.
  • 高田勝、叶内拓哉、『羽 原寸大写真図鑑』、東京、文一総合出版、2004、304p.

環境調査員 骨格標本製作 自然観察新聞発行
海棲哺乳類・爬虫類ストランディング調査
ボーン企画 代表 橋本 勝

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