テクニカルノート

6月のカワセミ第149号 托卵

2009年7月5日発行

センダイムシクイ 学名 Phylloscopus coronatus
ホトトギス 学名 Cuculus poliocephalus

今月の登場人物は、いや鳥は、
センダイムシクイ、ホオジロ、そしてホトトギスの卵。
托卵に対して無防備な種がいれば、卵擬態も見破って排除する種もいる。
この夏も、托卵をめぐって攻防のドラマがあった。

ムシクイは卵の違いに鈍感

ホオジロの巣

托卵が難しいサカゲイノデ(オシダ科)で繁殖

突然、森の林道を小鳥が横切った。飛び立った斜面を見ると、腐葉土の塊のような巣があった。センダイムシクイが抱卵していたらしい。側面に開いた出入り口から巣中を覗くと、純白の卵に混じって、ひとまわり大きな赤茶色の卵があった(上)。ホトトギスが托卵したようだ。ホトトギスは、宿主であるウグイスの卵に似せて托卵(卵擬態)するが、卵の違いに鈍感なセンダイムシクイの巣にも産みつけるらしい。

ホオジロの対抗手段

一方、カッコウは仮親であるホオジロの卵に似せてきた(卵擬態)が、托卵されたホオジロの巣を見ることはほとんどなくなった(右)。ホオジロが卵識別能力を発達させて、カッコウの卵を割って食べて殻を捨てているらしい。

センダイムシクイも将来、ツツドリやホトトギスの卵識別能力を発達させるのだろうか。

  • 参考文献
  • 樋口広芳、日本のカッコウ類の托卵相手『朝日百科 動物たちの地球6』、朝日新聞社、1994、p296-299
  • 中村浩志、托卵をめぐる攻防『朝日百科 動物たちの地球6』、朝日新聞社、1994、p300-303

自然観察新聞 6月のカワセミ第149号 托卵

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バードウォッチング

セグロセキレイのヒナ

セグロセキレイ
学名 Motacilla grandis

息子の体力作りが子孫繁栄の鍵

6月18日に仙台市内にある墓地へ行った。植栽(シキミ?)の中へ、交互に餌を運び入れるセグロセキレイの雄と雌がいた。また、植栽から雛の糞をくわえて飛び出すこともあった。植栽の根元を探すと、6羽の元気な雛が詰まった巣があった(右)。

巣立った雛は約17日間、親について歩き、給餌を受けるという。その後、娘は餌を与えられず、子別れの追い出しを受ける。一方、息子には給餌を続けるという。子どもの性差別による給餌量の操作は、孵化後3ヶ月で若雄がなわばりを確立しなければならないことに起因しているらしい。

  • 参考文献
  • 大迫義人、子別れにおける性差別、『朝日百科 動物たちの地球7』、朝日新聞社、1994、p202-205.

骨格標本

カワウとウミウの骨盤
後肢推進性の骨盤

6月11日、魚野川(新潟県)で鳥類の骨盤を採集した。体の前後に長くなった骨盤は、ウやカモ類などに見られる「後肢推進性」の鳥類である。ウミウの骨格標本と比較してみると、ひとまわり小さなカワウの骨盤であることがわかった。野外ではカワウとウミウの大きさの違いを実感しないが、標本で比較してみると、その違いが明らかである。

今月、古脊椎動物学の松岡廣繁氏(京都大学)が『鳥の骨探(ほねたん)』((株)NTS)を出版した。画期的な本であるが、ミスプリが多い。ウミウの骨盤に「烏口骨」とあるが、明らかに「恥骨」の間違いである。ここで、訂正しておく。

  • 参考文献
  • 松岡廣繁『鳥の骨探』、東京、エヌ・ティー・エス、2009、p345

環境調査員 骨格標本製作 自然観察新聞発行
海棲哺乳類・爬虫類ストランディング調査
ボーン企画 代表 橋本 勝

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