テクニカルノート

10月のカワセミ第152号 求愛行動

2009年10月24日発行

アカハライモリ

アカハライモリ
学名 Cynops pyrrhogaster

山形県にある深いブナの森の池にアカハライモリがいた(上)。
アカハライモリの産卵は、4月に始まり7月上旬まで続くが、
秋を迎えた今も雄が雌に盛んに尾を振って求愛していた。
雌を誘う雄のフェロモンは、万葉集の歌から名付けられた。

中断される求愛期

アカハライモリの婚姻色になった紫の尾

アカハライモリの雄は、雌に泳ぎ寄ってから雌の進路をさえぎり、婚姻色になった紫の尾(右)を振るディスプレイをしていた(上)。この時、雄の総排出腔から求愛フェロモン(Sodefrin)が分泌されているらしい。

秋のアカハライモリは、12月から産卵を始める同じCynops属のシリケンイモリと同様に繁殖可能な状態になっているが、冬のために求愛期が中断されて、春に再開するということらしい。

ソデフリンと命名

この雄の腹部肛門腺から分泌され、尾を振って生じた水流で雌に送られる雌誘引物質は、アミノ酸10残基からなるペプチドであることがわかり(菊山、1995)、Sodefrinと命名された。万葉集に収められた額田王の歌「茜さす紫野行き標野行き 野守りは見ずや君が袖振る」の大海人皇子の袖振りからとられたらしい。

  • 参考文献
  • 林光武、ダンスを踊って求愛『朝日百科 動物たちの地球5両生類爬虫類』.朝日新聞社、p20-22
  • 豊田ふみよ、菊山榮、イモリのフェロモンと生殖行動『遺伝』別冊16号、遺伝学普及会、2003、p92-99

自然観察新聞 10月のカワセミ第152号 求愛行動

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爬虫綱有鱗目ナミヘビ科ナメラ属

ジムグリ

ジムグリ
学名 Elaphe conspicillata (Boie,1826)

色彩変異が大きいヘビ

10月6日、山形県鶴岡市の山間部(標高320m前後)にある集落の路上で、ロードキルされたのか、頭部を潰されて舌を出している瀕死の幼蛇(全長約385㎜)を発見した(右)。一見、背面がジムグリ成蛇のようであるが、腹面には黒の市松模様がない。これはジムグリの無斑型の幼蛇である。

なお、同時刻に10m程離れた同じ路上で、本来の柄模様を持ったジムグリの幼蛇1匹も確認した。同じクラッチclutchからいろいろな個体が出ることがあるらしい。

※clutch 1回の産卵で産み出された卵全体のこと。

  • ジムグリの幼蛇について獣医師・獣医学博士の石橋徹院長(いのかしら公園動物病院、東京都)から飼育による貴重な知見をいただき、感謝を申し上げます。

ストランディング

オガワコマッコウの頭骨

オガワコマッコウ
学名 Kogia simus (Owen,1866)

天狗の髑髏、実は鯨

鯨類の頭骨を逆様に見ると(腹面観)怪しいものに見えないだろうか。

明和七年(1770年)、平賀源内の門人大場豊水が芝の愛宕山の門前を流れる桜川で「怪しき物」を拾った。人々が「天狗の髑髏だ」と騒ぐなか、源内を訪ねた。門人達は「大鳥の頭だ」「いや大魚の頭骨だ」と異説を唱えて纏らず。そこで源内が「これ天狗の髑髏なり」と、『天狗髑髏鑒定縁起』(てんぐしゃれかうべめきゝゑんぎ)に記されている。

※8月24日、相馬市松川浦近くで海獣が漂着しているとの情報があった。10月11日、一部は欠損していたが、鉢のように窪んだ頭骨を確認した。大きな左の鼻孔、不完全な頬骨弓からコマッコウ属と分かる。

  • 参考文献
  • 中村幸彦『日本古典文学大系55風來山人集』、東京、岩波書店、1961、p277
  • トマス・A・ジェファソン、スティーブン・レザウッド、マーク・A・ウェバー『海の哺乳類FAO種同定ガイド』、東京、NTT出版、1999、p336

編集後記:今号は9月(アカハライモリ)と10月(ジムグリ)の合併号となりました。

環境調査員 骨格標本製作 自然観察新聞発行
海棲哺乳類・爬虫類ストランディング調査
ボーン企画 代表 橋本 勝

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