テクニカルノート

InVestの紹介

文:環境情報室 水谷 貴行 2011年3月9日

※InVest:Integrated Valuation of Ecosystem Services and Tradeoffs
(生態系サービスとその代償のための総合評価)

1.InVestとは?

InVestとは、Natural Capital Projectによって開発されたArcGISのツールで、地域が保有する生物多様性、二酸化炭素の貯蔵、水力発電、浄水機能、木材生産、作物の受粉などの様々な生態系サービスを定量的に評価し、地図化することができます。

評価するためのモデルは、検討レベルに応じTIER1~3と呼ばれる3段階で準備されています。現在はまだβバージョンでのリリースですが、勢力的に開発が進められており、日本においても有効なツールだと思いましたので紹介させていただきます。

詳細は、InVestのマニュアルをご覧ください。

2.ソフトのインストール

  1. InVestのホームページから、左のメニュー「Tool Downloads」でソフトおよびマニュアルをダウンロードできます。
    ※ただし、ユーザー登録が必要です。
  2. ダウンロードしたファイルをダブルクリックすると、C:\Investフォルダが作成され、この中にはArcToolBox用のInvestプログラムやサンプルデータが入っています。※InVestを利用するには、ArcGISが必要です(最新のInVest2.0βにはArcGIS9.3+SpatialAnalyst、 InVest1.005βであればArcGIS9.2 + SpatialAnalyst が必要です)
  3. C:\Invest\Invest.mxdファイルを開くと、サンプルデータとプログラムが読み込まれているので、すぐにプログラムを試すことが出来ます。

3.生物多様性:生息地の質と稀少性の評価の例

今回は、日本で公開されている各種データを利用して、InVestの生物多様性の評価プログラム(Biodiversity)を実行してみたいと思います。

3-1.モデルの説明

InVestでの生物多様性の評価プログラムBiodiversity(TIER1)では、現在と過去の土地利用の状況、環境を悪化させる要因、保護地域の情報を使って、 生息地の質と稀少性の地図を作成します。 生息地の質は、環境悪化要因と生息地との距離、生息地の影響感度、生息地が保護されているかどうかの パラメータをあらかじめ設定し、それに基づき計算されます。 また、生息地の稀少性は、過去の土地利用と現在の土地利用から、過去に比べ大きく減少した土地利用を算出して評価します。

  • 過去の土地利用状況

    過去の土地利用状況

  • 現在の土地利用状況

    現在の土地利用状況

  • 画像の出典:国土数値情報(土地利用細分メッシュ)国土交通省

3-2.データの準備

今回は、土地利用および環境悪化要因のデータには「国土数値情報 土地利用細分メッシュ」を利用し、保護地域には「国土数値情報自然公園地域、自然保全地域、鳥獣保護区」を利用しました。影響範囲、影響感度のパラメータは、自分で設定します。

種類ファイル名出典備考
現在の土地利用lcH18t_cur.tif土地利用細分メッシュH18年度コードを統一
過去の土地利用lcS51t_cur.tif土地利用細分メッシュS51年度コードを統一
環境悪化要因traffic_c.tif土地利用細分メッシュH18年度幹線交通用地を抽出
環境悪化要因city_c.tif土地利用細分メッシュH18年度建物用地を抽出
環境悪化要因other_c.tif土地利用細分メッシュH18年度その他の用地を抽出
保護地域Access.shp自然公園地域、自然保全地域、鳥獣保護区特別保護地区、特別地区を0.1、特別地域、原生自然環境保全地域を0.2、自然公園地域、鳥獣保護区を0.5に設定
環境悪化要因の影響範囲と度合いthreats.dbf自分で設定下記参照
生息地の影響感度sensivity.dbf自分で設定下記参照
  • 環境悪化要因(幹線交通用地

    環境悪化要因(幹線交通用地)

  • 環境悪化要因(建物用地)

    環境悪化要因(建物用地)

  • 環境悪化要因(その他の用地)

    環境悪化要因(その他の用地)

  • 保護地域(アクセスしやすさ)

    保護地域(アクセスしやすさ)
    0:保護されている~1:保護されていない

  • 画像の出典:国土数値情報(土地利用細分メッシュ)および(自然公園地域、自然保全地域、鳥獣保護区)国土交通省
設定

環境悪化要因(THREAT)ごとに、その最大影響距離(MAX_DIST)、影響度合い(WEIGHT)、距離の関数設定(DECAY)を 設定します。距離の関数は、0:線形、1:指数です。

THREATMAX_DISTWEIGHTDECAY
traffic1.00.60.0
city2.01.01.0
other1.00.31.0

環境悪化要因の影響範囲と度合い

土地利用(LULC)ごとに、生息地の適正(HABITAT)、環境悪化要因に対する感度(L_TRAFFIC,L_CITY,L_,,,)を設定します。 生息地の適正は、0:不適~1:好適で、環境悪化要因に対する感度は、0:影響なし~1:影響大です。

LULCNAMEHABITATL TRAFFICL CITYL OTHER
1ta10.50.60.3
2sonotanonouyouti10.50.60.3
5sinrin10.80.80.6
6areti10.60.60.4
7tatemonoyouti0000
9kansenkoutuuyout0000
10sonotanoyouti0000
11kasentioyobikonu10.60.80.5
14kaihin10.60.80.5
15kaisuiiki10.10.50.3

生息地の影響感度

3-3.実行方法

データを用意したら、ArcGISを起動して、ArcToolBoxにInVestのプログラムを読み込み、Biodiversityをクリックします。 ファイルを指定し、OKを押すとプログラムが実行されます。

software.jpg
※クリックすると大きな画像が開きます

3-4.結果の表示

環境悪化地域degrad_cur、好適な生息地qual_cur、稀少な生息地rarity_curが結果として出力されます。

  • 影響悪化地域
  • 好適な生息地
  • 稀少な生息地
  • 左上:環境悪化地域 degrad_cur
    右上:好適な生息地 qual_cur
    左下:希少な生息地 rarity_cur
  • 画像の出典:
    国土数値情報(土地利用細分メッシュ)国土交通省

4.まとめ

InVestの使用例として、国土数値情報のデータを利用して、生態系サービスとしての生物多様性の評価を行ってみました。生物多様性を評価するモデルは、現時点ではまだTIER1のみが利用可能なため、出力された結果も単純なものとなりました。しかし既存のデータだけで簡単に結果を出力できるため、手始めとして地域の生態系サービスを可視化して概要を把握するには有効なツールだと思います。また、今後開発されるTIER2、TIER3のモデルを利用すればより詳細な検討も可能になり、ツールとしての利便性も増すのではないかと思います。
これまで我々は生態系サービスを正当に評価してこなかったために生物多様性の危機を招いたと言われています。InVestを利用して、まず地域の生態系サービスを把握してみてはいかがでしょうか?

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