テクニカルノート

育児放棄した鳥たち

文:佐竹 一秀 2010年6月1日

托卵する鳥は1%
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ホトトギス(托卵性)

2010年5月22日(土)にE-TEC&KIESSの広瀬川現地見学会があり、鳥のガイド役として参加しました。霧雨の降るあいにくの天気でしたが、澱橋から牛越橋をゆっくりと散策し、しっとりと落ち着いた雰囲気の広瀬川を感じることができました。また、広瀬川のシンボルであるカジカガエルの美しい声を聞くことができ、KIESSの方々にも喜んで頂けたと思っています。

確認できた鳥はツバメ、ヒヨドリ、オシドリ等19種で1時間ほどの散策でしたので、まずまずの種数と思っています。また、今年初のカッコウの鳴き声を聞きました。カッコウは仙台市の鳥にも選ばれ、皆さんにもお馴染みの鳥と思います。また、卵を他の鳥の巣に産み付けて、仮親に育ててもらう、托卵を行なうことで知られています。托卵性の鳥は日本ではカッコウ科カッコウ属のカッコウ、ホトトギス、ツツドリ、ジュウイチの4種がおり、全世界では約80種の鳥類が知られています。地球上には約9,000種の鳥がいますので、約1%が托卵する鳥類です。

カッコウ、ジュウイチ、ツツドリの鳴き声

カッコウは皆さんもご存知のとおり「カッコウ、カッコウ」と鳴きます。また、ジュウイチも「ジュウイチ、ジュウイチ」と鳴きます。嘘じゃないですよ!本当の話ですので、是非聞いて下さい。

ホトトギスはどうでしょうか?言葉にするのは難しいですが「キョッキョッ、キョキョキョ、キョッキョッ、キョキョキョ」と鳴き続け、「テッペンカケタカ」とか「東京特許許可局」とかと聞きなしされています。聞きなしとは、鳥のさえずりをわかりやすい言葉やフレーズに言い換える事です。
私は最初、「キョッキョッ、キョキョキョ(テッペンカケタカ)」「キョッキョッ、キョキョキョ(テッペンカケタカ)」と聞こえますが、さえずりの終わりのほうになると「キョッキョッ、キョキョキョ」「キョキョキョキョキョ」「キョキョキョキョキョ(ホトトギス)」「ホトトギス」「ホトトギス」…と聞こえます。こちらも是非聞いてください。この特徴的な鳴き声はオスの声です。数日前の夜中には自宅(南仙台)の上空を鳴きながら飛び回っていました。なぜ夜も鳴く必要があるか疑問ですが、渡りの途中のメスを呼び寄せるために鳴いているという説があります。メスに気付いてもらう機会を多くするために、昼も夜も(泣きながら)鳴いていると考えれば、変な時間に鳴いていても許してあげましょう。。

4種目のツツドリは残念ながら「ツツドリ ツツドリ」とは鳴きません。「ポポポッ、ポポポッ…」と竹筒の口の部分を手で叩く時の音に似ている声で鳴くことから、その名になっています。

托卵の手順

托卵について少し調べてみました。托卵相手は自分達よりもずっと小さな小鳥類で、同じ昆虫類を餌にしている種が選ばれているようです。カッコウの托卵相手はホオジロ、モズ、オオヨシキリ等、ホトトギスは主にウグイス、ツツドリはムシクイ類、ジュウイチは小型ツグミ類です。卵の色は主に仮親の卵の色と似ていることが多く、ホトトギスではウグイスと同じ茶色、ジュウイチはコルリやコマドリと同じ青い色の卵を産みます。大きさも仮親のものよりは少し大きいようです。
また、托卵する時は事前に巣作りの時期からめぼしをつけているようで、仮親が産卵して直ぐに隙をみて巣に産みつけるようです。その際には産卵されている仮親の卵から1個抜き取ります。卵を産み付けてから抜き取るのではなく、抜き取って口でくわえておいてから、産み付けるようです。そうしないと間違って自分の生みつけたものを抜き取る可能性があるためです。
以上のことを考えると、仮親は卵の色を見分けられる?また、卵の個数を数えられるのでしょうか?鳥は色を見分けられるといわれていますが、数はどうでしょうか?…ただ、それを考えるよりは、できるだけ仮親の卵に似せることで、自分の卵を異物として排除されないように進化したと考えるのが自然ですね。

雛の習性

次に雛の残酷?な習性を記します。一般的な小鳥類は12~14日で孵化しますが、托卵性の鳥の卵はそれらより僅かに早く孵化します。孵化してから数時間後から1日後には巣内の他の卵や雛を背中に乗せて、全て巣の外に放り出します。この時には仮親は何もしないで見ています(自分の本当の子供達なのに…)。こうして巣を独占して仮親からの給餌をうけ大きくなります。この時の雛の口の中は赤色で、大きな口をあけるとこの赤が目立ちます。この赤色は親鳥の給餌本能をかきたてるらしく、時には周辺で繁殖している別の鳥も給餌する事もあるようです。このようにして仮親の倍以上の大きさになっても給餌を受け続けて、その後さっさと飛び立っていきます。(恩知らず!)

托卵する鳥ばかりにならないのは?
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オオヨシキリ(カッコウの托卵先)

日本の托卵性の鳥はひとつがいで数個から十数個の卵を産みます。他の鳥よりも産卵数が多いため、産卵された卵の全てが托卵され、そして全て巣立ったとすると、あっという間に托卵性の鳥の数が増えて、周りはカッコウ、ホトトギスだらけになってしまいます。
しかし、実際はそのようになっていません。托卵による繁殖成功率は思ったよりも低いようです。托卵による繁殖が成功すれば、仮親の数が減ります。そうなると托卵先の巣を多く作れません。托卵性の鳥が減ります。仮親の数が増えます。托卵先が多くなるので、元に戻って托卵が増え、仮親が減ります。この微妙というか、絶妙なバランスの上に成り立っています。

なぜ托卵を行うのか?

最後にどうして繁殖成功率のあまり良くない、托卵という繁殖方法をとるのでしょうか?日本のカッコウ属については恒温性があまり発達しておらず、体温がそのときの状態によって10℃程度変化するようです。そうなると卵を抱いて雛を孵すのは難しくなり、托卵という方法で子孫を繋ぐ方法を身につけたという説がありますが、よくはわかっていないようです。

托卵は卵を産み付けるだけで、抱卵から子育てまでを他の鳥に行なってもらうという、子育てに苦労している身とすれば、なんとも羨ましい限りです。ただ、里親(仮親)の所での暮らしも、決して恵まれてはいないようですので、人間の皆さん子育てを頑張りましょう。きっと良い事がありますよ!

  • 【参考文献】
  • 樋口広芳『赤に卵の謎 鳥の生活をめぐる17章』(思索社、2003年)3-54頁

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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