テクニカルノート

梅雨から夏へ(露草と朝顔)

文:佐竹 一秀 2012年8月1日

梅雨時の青い花
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アジサイ

このニュースレターが読まれる頃、梅雨は明けているのでしょうか。原稿をいつもより早く書き始めています。7月7日、七夕です。外は雨です。

雨に濡れている露草(ツユクサ)の色が、紫陽花(アジサイ)の花よりも、心に深くしみとおります…。

詩人になったようですが、実は「雨の露草に似て」という小椋佳の歌の冒頭部分です。梅雨時期の花としてはアジサイが真っ先に思いうかびますが、アジサイではなく、その歌のタイトルにもなった露草の話をします。植物の受粉の話です。小学校で習っためしべにおしべの花粉がくっついて、種を残し、次の世代に命を引き継ぐ大事な作業です。特に植物は動物と違って動けないので、動物以上にいろいろな方法をとって、受粉の確率を上げるように頑張っています。

雌雄同種
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ツユクサ

ほとんどの植物は雌雄同株(しゆうどうしゅ)で同じ植物体に雄、雌の両方の性を持っています。種子植物は多くの場合、一つの花におしべ、めしべの両方をもっていますが、アカマツやカボチャのように雄花雌花が別々に付く植物もあります。さらに雌雄異株(しゆういしゅ)というものがあり、動物と同じように雄雌が別々に存在する植物です。イチョウがその典型です。秋に種(ギンナン)を実らせる木(雌株)とギンナンがならない木(雄株)があります。

昆虫や風の力で受粉

植物の多くは同じ種類の花が近くに咲いている場合は、昆虫や風の力を借りて受粉し、違う個体の遺伝子を取り入れることで、多様性が増します。それでは近くに同じ種の花がなければ受粉できなのでしょうか。その場合は子孫を残せず、絶滅してしまうのでしょうか。その場合は、自分の花の中のおしべとめしべで受粉する、自家受粉することで子孫を残す方法をとります。ただし、他個体の遺伝情報を取り込めませんので、多様性が低い個体ができてしまいます。そのため、周辺環境の変化への適応能力は下がりますので、できれば他家受粉(他の個体とのあいだでの受粉)をとり、万が一の時に自家受粉を行なうというのが効果的な方法ではないでしょうか。

虫が来なかったとき、ツユクサはくるりと丸まる
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ツユクサ(おしべが丸まる)

ツユクサは花を咲かせて昆虫の訪れを待ちます。昆虫に花粉を運んでもらう虫媒(チュウバイ)で受粉するということです。しかし運悪く、昆虫が来てくれなかった場合は、夕方になると、右の写真のようにおしべがめしべに向かってくるくると丸まりだします。そして最後はおしべの先端の葯がめしべにくっつき、受粉します。

まずは遺伝子の多様性を確保するために昆虫による他家受粉を目指し、それがかなわない場合に、しかたなく自家受粉するという仕組みを持っているのです。

アサガオは基本自家受粉
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アサガオ

この逆の動きをするのが、夏の花、朝顔(アサガオ)です。基本は自家受粉です。アサガオのつぼみの中では中心にめしべがあり、その回りにおしべがあります。花が咲く前のおしべは短く、めしべの下方にありますので受粉はできません。しかし、花が咲く前日の夜になると、おしべが成長をはじめ、めしべの高さを追い越します。この時におしべの花粉がめしべに触れて受粉します。

けれども、時にはおしべの異状などで受粉できないこともあります。異状時には虫媒花となり、虫に花粉を運んでもらいます。アサガオはその事を見越してどの植物よりも早く咲くのです。ほかの花がまだ咲いていないときに咲けば、虫に選んでもらいやすくなり、受粉の機会が高まります。その結果、朝早くから花を咲かせるアサガオとなったのです。アサガオがこんな事を考えて朝早くから咲いているとは、何とけなげな花なのでしょう。昼過ぎにはしぼんでしまいますが、受粉できなかった花はなかなかしぼみません。もし、まわりの花がしぼんでいるのに、頑張って咲いている花があったら、まだ受粉できていないのだと思って、綿棒などで受粉の手伝いをしてあげて下さい。

ニュースレターを書き始めたのは7月7日ですが、書き上げたのは7月21日です。結局、〆切間際になってしまいました。この間、九州では大雨が降り、その後、梅雨明けした地域もあり、そして猛暑です。またここ二三日仙台は肌寒いです。植物があることで、気候変動も緩和されているはずですが、それ以上の力で自然が襲いかかってきているように感じてしまいます。本来は優しいはずの自然ですが…。

  • 【参考資料】
  • はてな委員会、講談社、昆虫と植物のはてな、2009年、140-149頁

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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