テクニカルノート

植物の寒さ対策と人面?植物!

文:佐竹 一秀 2015年3月1日
(WEB公開:2018年3月1日)

里山散策
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ホオノキ(冬芽)

普段は水辺の鳥を中心に見ていますが、たまには里山散策も良いかと思い、名取市愛島の五社山に行きました。天気は晴れで絶好な山歩き日和、と言いたいところですが、風がやや強く、時々小雪もちらつき、少し寒かったです。

冬の山の鳥は、シジュカラやヤマガラ等のカラ類を中心に混群を作って移動していることが多く、その群れと出会えないと淋しい山歩きとなります。出かけた時間もやや遅かったのですが、歩き出してからすぐにシジュウカラやエナガを中心にヒガラ、ヤマガラ、コゲラ、キクイタダキ等の小鳥たちを見ることができました。今日は期待できると思ったのですが、その先は全くといっていいほど鳥たちが出てきてくれませんでした。風も強くなり、鳥の声も聞きとりにくく、ただ黙々と頂上を目指して歩いていました。私は山登りをしに来たのではない!と思い直し、鳥以外の自然観察を始めました。が、私は植物があまり得意ではありません。ましてや葉っぱを落としているものが多く、何が何やら…。

顔のような模様
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クロモジ(冬芽と花芽)

ただ、昔テレビのCMで人の顔やヒツジの顔のような模様が出る木(枝)があったことを思い出し、それを探すことにしました。そうするといろいろと見えてきました。なかなか人面枝木には会えませんでしたが、いろいろな樹皮がありました。滑らかなものや筋張っているもの、ひび割れていたりトゲトゲだったり。また、枝先についている冬芽も様々な形があり面白かったです。気になった冬芽を何枚か写真にとりましたので見てください。生物の活動が鈍る冬ですが、冬の樹木観察はおすすめです。(私の)嫌いな蛇はいませんし、昆虫やクモ嫌いの人も気にせず歩けます。葉が落ちて視界が良く、下草も冬枯れていますので歩きやすいです。

植物はどのように冬を乗り切る?たとえば種子
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マツヨイグサの一種(ロゼット)

植物は渡り鳥のように移動できませんので、その場にいて厳しい冬を乗り切らなければいけません。どのような方法で乗り切っているのでしょうか。まず思いつくのは種子です。秋までに種子を作ってあるものは自然落下、あるいは風に飛ばされ、動物の体に引っ付き虫となって移動、分散するものもあります。そして地面に落ち、暖かい土の中や、落ち葉の下に入り冬を越し、来るべき春や発芽の時を待っているのです。種子によっては、一度冬の寒さを体験しないと発芽しないものもあります。また同じように動物に食べられ、体内を通過し排出されないと発芽できないもあります。あまり書きたくはないのですが、エクアドルの農場主はパッションフルーツ(トケイソウの実)を農場の労働者に食べさせ、あらかじめ用意した畑の穴で用を足させる方法で、現在も栽培を行っているとの話もあります。

根だけ、または冬芽だけ…
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ナベクラザゼンソウ

地上部を枯らして、より暖かい地下の根(地下茎)で冬越する方法もあり、よく知られているのはユリ根です。土の中で鱗茎(りんけい)と呼ばれる鱗状の葉に守られています。またヨシやススキは横に広がった根茎(こんけい)で冬を過ごし、暖かくなったら発芽できるように、土に中で芽を用意しています。一方で地上に残ったまま、頑張って冬越しをするのもあります。今回の里山歩きで目にした冬芽です。冬季の寒さや乾燥に備えて落葉し、暖かくなったらすぐに葉を出せるように冬芽を準備しています。冬芽は硬い鞘や、柔らかい綿毛に包まれて冬を越します。越冬葉と呼ばれる葉をまとっている冬芽もあります。またロゼットと呼ばれる、葉っぱが地面にへばりついた状態で冬越しをする植物もあります。地面にへばりついてはいますが、けっして縮こまってはいません。できるだけ太陽光線をあびようと放射状に葉を広げています。なかなかのしたたか者です。ロゼットは八重咲きのバラの花びらのように見えるところからきています。上のマツヨイグサ科の写真は花に見えてしまいますが、間違いなく葉っぱです!

究極の越冬、自ら発熱!
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カラスザンショウ(葉痕)

厳しい冬を乗り切るための、植物の生き残り戦略ですが、究極の植物がいます。ザゼンソウという名の植物です。ミズバショウと同じサトイモ科の植物で、ミズバショウの白い苞葉(ほうよう)に対して、ザゼンソウは赤紫の苞葉(仏炎苞)です。それが肉穂花序(にくすいかじょ)とよばれる花の集合体を抱くような形をしていて、お坊さんが座禅を組む姿に似ているところから名づけられたようです。左の写真は近縁種のナベクラザゼンソウです(ザゼンソウの写真がなかったので・・・)。ザゼンソウは寒冷地に生育する種で、春先に花を咲かせます。この時、周りには雪が積もっていることも多いのですが、ザゼンソウの周りの雪は解けています。実は氷点下にもなるような外気温でも、自ら発熱して約20℃に保つことができるのです。発熱することができる場所は花(苞葉)の中心部の肉穂花序で、この部分の温度が下がると、それに合わせて発熱させます。また、ことの時温度変化を0.03℃の精度で制御しているというから驚きです。

寒い日々は続いていく…

まだまだ寒い日が続きます。原稿も書き終えましたので、体の中から温まる液体を適度に補給しつつ、暖かな春の夢を見る事にします。

おまけに、人面?植物の写真を以下に示します。カラスザンショウは五社山、その他の写真は名取川と広瀬川の合流点付近の河畔林で撮影したものです。身近な場所にありますので、散歩がてら探してみてはどうでしょうか(マツヨイグサのロゼットも広瀬川添いの堤防です)。

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オニグルミ(葉痕)

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クズ(葉痕)

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ハリエンジュ(葉痕)

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ハリエンジュ(葉痕)

  • 参考資料
  • はてな委員会『はてなシリーズvol.3 昆虫と植物のはてな』(講談社、2009年)p.134-135

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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