テクニカルノート

復活!『カエルの合唱』…

文:佐竹 一秀 2015年7月1日
(WEB公開:2018年7月1日)

遅い梅雨入り
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アマガエル

やっと梅雨に入りました…
6月26日、東北地方南部が梅雨入りです。平年の梅雨入りは6月12日、昨年は6月5日でしたので、平年より約2週間、昨年より20日間遅れでした。観測史上最も遅い記録は1967年(昭和42年)の6月26日でしたので、遅い梅雨入りのタイ記録となりました。

現場仕事が多いので雨の少ないのは助かりますが、降るときにしっかり降ってもらわないと、農家の人をはじめ、困る人も多くいます。最近雨の降り方も変です。局地的な大雨が多くなっていて、梅雨末期の大雨とよく言われますが、やっと入った梅雨なのに…。

生物の世界でも、アジサイ、アヤメなどの植物やカエル類などは、待ちくたびれてしまったのではないでしょうか(やっとですね…よかった!)。

津波をかぶった田畑のカエルたち

名取市閖上地区のカエルの話は、このニュースレターで何回か紹介してきました。東日本大震災の大津波で生息環境の田畑が海水をかぶり、塩分の苦手なカエル達がどのような影響を受け、どうなっていくのかが気になり、観察を始めてから今年で4年目、5回目となりました。

初年…カエルたちがいた!

震災の年(平成23年)の6月初旬、名取市閖上地区の田んぼ(瓦礫や車、船が散在していて田んぼとは呼べないのですが)で鳴き声の確認を行ない、約1キロ平方メートルの範囲内に単独で11個体のアマガエルを確認しました。その翌年(平成24年)は瓦礫などの撤去はおわりましたが、排水はまだ復旧せず、雑草は伸び放題で、水田がヨシ原になりつつありました。そのようななか、アマガエルが6か所で17個体、シュレーゲルアオガエルが5か所で各1個体確認できました。個体が集まり始めていましたので、繁殖も期待できると感じました。

2年目…環境変わらず、だいぶにぎやかに

2年目(平成25年)も状況は大きく変化しておらず、閖上中学校のまわりの水田はヨシ原になっていました。アマガエルが16か所で76個体、シュレーゲルアオガエルは3か所で4個体、さらに前の年まで確認されていなかったトウキョウダルマガエルも2か所で6個体の鳴き声が聞かれ、だいぶにぎやかになってきました。

3年目…環境回復、カエルもほぼもとどおりに

3年目の昨年(平成26年)は水田耕作が調査範囲の3割程度で行われていて、環境面ではだいぶ回復してきました。アマガエルは西側の一部に鳴き声の少ない場所もありましたが、ほぼ全域から鳴き声が聞こえました。他にシュレーゲルアオガエルやトウキョウダルマガエルも確認され、さらにウシガエルも1か所で3個体の声も聞かれました。ウシガエルは外来種ですので、あまりうれしくはないのですが、もし震災前にも生息していたのであれば、しょうがないか…。

震災前の状況が解りませんので、ハッキリと言いきれませんが、全域からアマガエルの声が聞こえていましたので、ほぼ元に戻ったのではと考えています。これは前年の繁殖がうまくいき、オタマジャクシから子ガエル、それらが冬を越してこの春に鳴き声を聞かせてくれたことになります。ですので、実際には昨年の秋、震災から2年半後にアマガエルはほぼ復活したと言えます。人間社会の復興はまだまだ先ですが、アマガエルは思った以上に回復が早いと感心しています。しかし、問題はここから先です。

4年目の今年…カエルの声がきこえない!?
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農地災害復旧工事・区画整理工事の状況

今年も先日(6月20日)行ってきました。昨年は多くの場所からアマガエルの大合唱が聞かれたので一安心しており、また仕事が忙しくて行く時間を作れずにいたこともあり、少々遅い時期の確認でした。現地に着いたのが19時20分、曇りのため薄暗くなりかけていて、上空からポツンポツンと雨粒も落ち始め、カエルの声を聞くには最高のシチュエーションになりました。車のドアを開け外に出たとたん、カエルの合唱がうるさいくらいに聞こえて………アレッ?………。

目をこらして見ると、薄闇の中に重機が横たわり、整地された土地が広がっておりました。また掘り返された土や、盛土された場所もあり、農地災害復旧工事・区画整理工事が行われていました。草地も残ってはいたのですが、まだ梅雨に入っていない時期だったので乾燥化しているように見えました。ただ遠くの方で少ないながらアマガエルの声は聞こえていました。6か所で10個体、シュレーゲルは2カ所で2個体と、去年のことを考えるとかなり少ない確認にとどまりました。時期が遅くなったためでは、とも考えて、自宅に戻ると途中でも確認したのですが、アマガエルはしっかりと鳴いていました。

必要な工事、けれどもカエルには災害

震災の復興事業ですし基盤産業の水田の復活のための工事です。しょうがないことですが、せっかく回復したカエル達には2度目の大災害です。ただ、前と少し違うのは、津波は冬眠中に起きた一瞬(塩水の滞留はありましたが)の出来事でしたが、今回の面整備事業はカエルやその他の生物の活動期を含めて、年度末までと長期に渡ります。影響がどのようになるか、今から気になっています。来年以降も鳴き声を観察することで、影響の程度が把握できるのでは考えていますし、回復状況を確認していきたいと考えています。(前にも同じ事を書きましたが)被災地にうるさいくらいの蛙の声が響き渡る日を期待しつつ…。

◆閖上地区の震災後の状況写真(閖上中学校南側周辺)
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    平成23年3月21日(震災後10日目)

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    平成24年10月29日(ヨシ等が繁茂)

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    平成25年7月7日(ヨシ等が繁茂)

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    平成26年6月14日(水田耕作開始)

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    平成27年6月21日(圃場整備中)

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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