テクニカルノート

コスモスは外来種?!

文:佐竹 一秀 2015年10月1日
(WEB公開:2018年10月1日)

秋といえばコスモス

通勤途中の踏切の脇にコスモスが咲き始めました。空は真っ青、爽やかな風も吹いています。秋です。フッと昔の歌が浮かんできました。私は50代後半です。私の年代でコスモスが入った曲と言えば、山口百恵さんの「秋桜(こすもす)」です。娘を嫁がせたお母さんたちには涙、涙の歌です。しかし、私はそれとは違う、かなりマイナーな曲を思い出していました。

コスモスが出てくる歌

♪ コスモスの小さな花を 見るたびにあの日が甦る
  ふるさとの青空 ふるさとの青空に 太陽が… ♪

という曲です。たぶん誰も知らないと思いますが、ずばり「コスモス」という曲で「てんとう虫のサンバ」(これもかなり古いか…結婚式での定番曲だったのですが…)を歌っていた、チェリッシュというグループの1972年発売「ひまわりの小径(こみち)」のB面の歌でした。A面、B面といっても通じない時代になりつつありますが…。ついでにコスモスが出てくる曲をいくつか示しますが、古い歌ですので、わかってくれる人もいるのではと期待しています。

♪ 雨上がりの朝 届いた短い手紙 ポストのそばには 赤いコスモス揺れていた… ♪
(曲名:結婚するって本当ですか 作詞:久保田広子 歌:ダ・カーポ )

♪ 踏切りの側に咲く コスモスの花ゆらして… ♪
(曲名:思えば遠くへ来たもんだ 作詞:武田鉄矢 歌:海援隊)

最後に定番の

♪ 淡紅の秋桜が秋の日の 何気ない陽溜りに揺れている
  この頃涙脆くなった母が 庭先でひとつ咳をする
  縁側でアルバムを開いては 私の幼い日の思い出を
  何度も同じ話くりかえす 独り言みたいに小さな声で
  こんな小春日和の… ♪
(曲名:秋桜 作詞:さだまさし 歌:山口百恵)

明治時代に広まった外来種
image001.jpg

コスモス(秋桜)

写真は踏切の道路脇に咲いたコスモスです。庭先や道端でもよく見かけます。秋桜と書けば日本の花のようですが、コスモスは外来種です。メキシコ原産のキク科の一年生植物で、ヨーロッパに移入されてコスモスと名付けられたようです。

コスモスの学名はCosmos bipinnatus Cav.で、和名のコスモスは学名の属名Cosmosをそのまま呼んだものです。Cosmosはギリシャ語のkosmosに由来し、意味は「飾り」「美し」との事で、本属の花が美しいことからきているようです。コスモスの花だけが美しいというわけではないので、チョット持ち上げすぎではとも思いますが…。

日本には幕末に渡来し、明治時代に分布を拡大しました。1909年(明治42年)に文部省が全国の小学校に栽培法を示した資料とともに、種子を配布し、一気に増えたようです。現代であれば外来種を日本全国にばらまくなんて、なんてことをするのだ!と怒られそうです。

特定外来生物には指定されていない

外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律:平成17年6月施行)は、特定外来生物による生態系、人の生命・身体、農林水産業への被害を防止し、国民生活の安定向上に資することを目的に制定され、問題を引き起こす海外起源の外来生物を特定外来生物として指定し、その飼養、栽培等を規制し、特定外来生物の防除等を行うこととしています。

コスモスは特定外生物には指定されていませんので、あまり悪さはしてないようです。ただ在来種との競合の影響がある、と国立環境研究所の侵入生物データベースに掲載されています。オオキンケイギク、オオハンゴウソウというキク科の植物がありますが、北アメリカ原産でコスモスと同じく観賞用に導入されました。この二種は特定外来生物に指定されていて、日本各地で在来種の追いだし等の悪さをしています。もし、文部省がコスモスの代わりにオオキンケイギク、オオハンゴンソウの種子を全国の小学校に配布したらと考えると、チョット怖くなります。

日本の風物にとけこんだ花

コスモスは外来種と言いながらも、日本の秋にはかかせない花です。秋桜(あきざくら)という呼称も与えられていて、私には縁遠い話ですが、俳人歌人は好んでこの言葉を用いているようです。秋の七草は萩(はぎ)・尾花(すすき)・葛(くず)・撫子(なでしこ)・女郎花(おみなえし)・藤袴(ふじばかま)・朝顔(現代のアサガオではなく桔梗(ききょう))は『万葉集』の昔から始まって秋の風情を代表してきた七種類の花ですが、これとは別に「新・秋の七草」を選ぼうという試みがなされたことがありました。

新・秋の七草にも

1935年(昭和10年)、東京日日新聞社(現在の毎日新聞)が、当時の名士に依頼して選ばれた七草があります。この中に作家の菊池寛によってコスモスが選ばれていますので、昭和の初期にも秋の花として人気があったと思われます。ちなみに他の花としては、白粉花(おしろいばな)…与謝野晶子、秋海棠(しゅうかいどう)…永井荷風、葉鶏頭(はけいとう)…長谷川時雨、菊(きく)…牧野富太郎、彼岸花(ひがんばな)…斉藤茂吉、アカノマンマ(犬蓼 いぬたで)…高浜虚子、が選定されています。

コスモスやひまわりはキク科
image002.jpg

コスモス

右の写真はコスモスのアップです。大きな1つの花のように見えますが、実際は多数の花びらが集まって1つの花の形を形成しています。これは頭状花序(とうじょうかじょ)と呼ばれ、キク科の植物に見られる特徴です。外輪のピンク色の花びらを舌状花(ぜつじょうか)、内側の黄色の(中央のつぶつぶが飛び出ている)かたまりを「筒状花(とうじょうか)あるいは管状花」と区別して呼ぶときもあります。

ヒマワリも同じように外縁部に花びらが並び、その内側にも小さな花があつまっています。ヒマワリもキク科の植物です。舌状花も筒状花も一枚一枚(あるいは一個一個)が花びらですので、それぞれに雄しべ雌しべをもっていて、受粉し種子を残します。ヒマワリの種のつき方を思い出すと納得できるのではないでしょうか。

コスモスで花粉症…?
image003.jpg

キバナコスモスのお花畑

外来種でありながら、新天地の日本でしっかりと存在感を示し、とはいってもセイタカアワダチソウのように悪名をとどろかせたわけではありません。コスモスは日本の秋の風景にはなくてはならない植物、花になっています。良い例えではありませんが、カレーやラーメンのようです。

ただ、私個人としては良い印象を持っていません。私の花粉症デビューはコスモスです(だと思っています)。30年ほど前、屋外の施設で水質浄化実験を行っていた時のこと、施設はコスモス畑の中にあり、花の時期には鼻水、クシャミが止まらずにひどい目にあいました。それ以来コスモスは避けてきたのですが、今回写真撮影のために(下の写真)近寄ったのですが、発症しませんでした。もしかしたらコスモスの近くに、ブタクサやヨモギ等の別のアレルゲンがあったのかもしれません…。

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


前の記事 <<  >> 次の記事

←連載・E-TEC一覧へ戻る 記事一覧へ戻る△ ページの上部へ戻る▲