テクニカルノート

100号記念?震災後3年

文:佐竹 一秀 2014年4月1日

震災から3年が経過して

ニュースレターの発行が100回に達したとの事ですが、3月ですので、まだまだ震災の事が気になります。左下の写真は私がフィールドとしている広浦南の震災2ヶ月後の様子です。仙台空港の東側にあり、防潮林とヨシ原、それにビニールハウスの立ち並ぶ畑地のある地域でした。海までの距離は防潮林、砂浜をはさんで500m程度、北側には名取川河口に続く広浦とよばれる潟湖があり、その間にはヨシ原が広がっています。また、西側に貞山運河があり、もともと湿地的な環境でした。写真では防潮林がなぎ倒され、ビニールハウスの骨組みが無残に散乱しています。震災後1年4ヶ月経過したのが右下の写真です。奥にはかろうじて残った防潮林がみえますが、手前には良好な湿地環境が広がり、絶滅危惧種のミズアオイが大繁茂し、水路ではメダカも数多く見られました。

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    震災後2ヶ月の様子
    撮影日:H23.5.5

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    震災後1年4ヶ月の様子
    撮影日:H24.7.8

復興関連事業による変化

それが現在は右下の写真です(H26.3.9撮影)。排水設備が復旧し、また畑地での耕作を再開するためと思われますが、圃場整備が行われ、ミズアオイや他の水生・陸生植物を根こそぎはぎ取って盛り上げています。また、倒伏した防潮林の撤去が行われたと思っていたら、その奥には7.2mの防潮堤がしっかりと作り上げられています。その内陸側には工事用の道路、さらにその後方には防潮林を植林するための用地も土盛りが行われていて、そのスピードには驚かされてしまいました。

復興とともに生物多様性の保全を
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撮影日:H26.3.9

現在各地で行われている震災復興関連事業は、いずれも緊急性が高い事業です(のはずです)。最優先で行われていますが、一方で少し不安も覚えます。どこか高度成長期の開発事業にも見えてしまうのは私だけではないと思います。

震災の半年前、平成22年10月に生物多様性条約締約国会議(COP10)が名古屋で開催され、その中で生態系サービスの質の低下に歯止めをかけるべく、生態系や生物多様性の保全を積極的に推進するという話で盛り上がったと記憶しています。それが震災の津波に流されたかのように、忘れ去られてしまったのではと、被災地にいて強く感じています。

土地の将来をみすえて

確かに復興はまったなしだと思いますが、復興事業を早期に進めつつ、一方で生物多様性の保全を確実に図っていく必要があります。私のフィールドである広浦南でも、どこかに小面積でもよいので湿地を残し、また防潮林も画一的な植樹ではなく、周辺地域で生き残ったものを使うことはできないのでしょうか。この地に生えていた在来種です。遺伝子レベルでのかく乱も起きません。潮風にさらされ、津波にも耐えた事でもあり耐塩性もあります。松以外にも移植できる植物がたくさんあると思います。このコメントは2013年7月の記事「奇跡に近い三本松?!」に詳しく書いてありますので、これ以上は述べません。

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防潮堤(名取市仙台湾岸:高さ7.2m)
撮影日:H25.9.29

このように書いてしまうと、国や県は何も環境配慮していない悪者になってしまいますので、名誉回復のために。国土交通省ではこの地域の防潮堤を作るにあたって、海浜植物のハマボウフウやカワラハンミョウ等に配慮していろいろ対策を行っています。また、宮城県では津波に耐え抜いたクロマツを移植用の苗にしているとの情報もあります。

E-TECニュースレターも100号に

本号でニュースレターが100号との事。今回は、理事、幹事の皆さんの原稿が集まるので、「不思議ないきものがたり」は休みにします!というK嬢の優しい言葉もなく…、幹事の私はいつも通り〆切に追われながら、62回目の原稿を書いています。

セイタカシギと水鏡のクイズ

最後の最後に下の2枚の写真です。セイタカシギという足が赤くて長い、スマートな鳥です。昨年の4月下旬から5月上旬にかけて、広浦南の湿地に飛来しました。宮城県では渡来数の少ない鳥です。優雅な鳥の写真です。水面にもう1羽映っています(右下の写真)。これを「水鏡」(すいきょう・みずかがみ)と言います。「水鏡」にはもう少し深い意味もあります。それは水がありのままに物の姿を映すように、物事を比較・観察してその本質を見抜き、人の模範となること。また、そのような人の事を言います。

ここで100号記念につき質問です!皆さんはこの写真(水鏡:右下の写真)を見てどうですか。何か見えましたか? 本質がみえましたか?

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    セイタカシギ 撮影日:H25.4.29

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    セイタカシギ 撮影日:H25.5.5

※答え
写真は上下逆です。
上に映っているセイタカシギは虚像(水に映った物)、下に映っているセイタカシギが実物です。

  • 参考資料
  • 平田剛士『名前で読み解く 日本のいきもの小百科』(平凡社新書、2012年)、28-31頁

※本記事は、NPO法人環境生態工学研究所発行のニュースレターに寄稿したものです。
※WEB用に多少表記を変えております。また、日付はニュースレターの発行日になります。


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