ユビソヤナギについて
発見は1972年。名前の由来は最初に発見された群馬県の湯檜曽川による。分布は、かつては群馬県の湯檜曽川沿いと宮城県の鳴瀬川、江合川沿いのみの隔離分布とされていたが、その後岩手県の和賀川上流部や秋田県でも分布が確認され、最近では福島県只見川水系(2003年)、山形県東大鳥川・荒川上流部(2006年)と相次いで新産地が発見されている。なぜこのように新産地の記録が相次いでいるのかというと、本種はオノエヤナギと外見が似ており、また同所的に分布しているため、見落とされていたというのが真実だろう。「花が大きいオノエヤナギがあるなぁと思っていたら、それがユビソヤナギだったんだよ」という、恩師が宮城県でユビソヤナギを発見した時の話を思い出した。
目次
1.全体
ユビソヤナギSalix hukaoana KimuraとオノエヤナギSalix udensis Trautv. et C.A.Mey.は、全長・幅・形・色・葉柄の長さがいずれもほぼ同様である。一見しただけでは区別しにくい。
図1ユビソヤナギの葉(表面)
標本:2004年8月13日群馬県湯檜曽川図2ユビソヤナギの葉(裏面)
標本:2004年8月13日群馬県湯檜曽川図3オノエヤナギの葉(表面)
標本:2004年8月31日岩手県胆沢川図4オノエヤナギの葉(裏面)
標本:2004年8月31日岩手県胆沢川
2.鋸歯
ユビソヤナギは波状鋸歯であるが、先がわずかに尖る。オノエヤナギは完全な波状鋸歯で、先が尖ることは無い。
図5ユビソヤナギの葉の鋸歯(表面)
標本:2004年8月13日群馬県湯檜曽川図6ユビソヤナギの葉の鋸歯(裏面)
標本:2004年8月13日群馬県湯檜曽川図7オノエヤナギの葉の鋸歯(表面)
標本:2004年8月31日岩手県胆沢川図8オノエヤナギの葉の鋸歯(裏面)
標本:2004年8月31日岩手県胆沢川
3.成葉の葉裏の毛
ユビソヤナギの葉の裏には縮れた毛があり、オノエヤナギには上向きの伏した絹毛がある(いずれの種も毛の量には個体差があり、ほぼ無毛となることも多い)。
4.若い葉の裏面の毛
ユビソヤナギの若い葉の裏面には縮れた毛が密生し、バッコヤナギのようになる。オノエヤナギは絹毛が多く、エゾノキヌヤナギのように密生していることもある。