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遠くへ行きたい 石垣島編

2026年6月4日
文:第二環境調査課 底生G 相蘇 巧

2026年3月20日から26日にかけて、石垣島・西表島に遠征に行ってきました。石垣島編、西表島編と分けて遠征の模様をお届けしたいと思います。

遠征初日:3月20日

◆まずは石垣島へ!

仙台空港から琉球列島へのアクセスは悪いと言わざるを得ません。直行便が出ているのは沖縄本島ぐらいで、石垣島へも乗り継ぎが必須です。しかし成田からLCCであるPeachを早めに予約しておけば、仙台からの乗り継ぎ便よりも安く、直行で石垣に向かうことができます。今回もPeachのほうが成田への高速代を含めても安かったので、朝イチで車を成田まで走らせることにしました。飛行機は昼過ぎの便。数時間後には八重山にいるというワクワク感を悟られないよう平静を装って乗機。機内で寝ようと思いましたが、心が遠足前の幼稚園児のテンションすぎて、全然寝られません。「早く着け~!!!」と思いながら悶々と乗っていたら、眼下に奄美大島が見えて心のざわめきはもはや収拾がつかなくなっています。「うわ…奄美行きたい…」これから八重山に向かうという人のコメントとは思えませんが、もはや遠征の時はいつもこういうテンションです。心の中で奄美の知人の皆さんに手を振っておきます。

  • 眼下の奄美大島。大和村の中心部が見えています

それから約一時間後。

  • 着陸目前

天気は良くないのにこの海の色。盛り上がる機内を尻目に平静を装って到着です。飛行機を降りた直後から感じる湿度の高さは毎度のテンションアップポイントです。

空港到着後はレンタカーを借りてとりあえず宿へ。昨年もお世話になった民宿です。顔を覚えてもらっていてうれしいです。大変ありがたいことに夕飯をご馳走していただいて、同タイミングで宿泊されていた皆さんも交えて、しばしおしゃべり。他の宿泊客の皆さんにも自分が生き物屋であることを告げ、夕飯食べ終わったら夜の森に単身繰り出すことを伝えたら、卒業旅行で来ていた学生さんに「え、これから…?」と驚かれました。

一時間ちょっと喋ったあと、ヘッドライトとカメラを装着して夜の森へ。野外装備を装着してウッキウキな私を見て学生さんは唖然としていました。

◆夜の森へ

一人の夜の森は普通に危険です。東北と違ってクマこそいませんが、有毒のサキシマハブはその辺にいます。なので以前から通っていて土地勘のあるエリアに絞って動きます。ましてや今日は移動で疲れているので、軽く散策する程度にしましょう。

一歩森に入ると、リュウキュウコノハズクの鳴き声があちこちから聞こえ、得体のしれない何かがガサガサと音を立てています。最高すぎてゾクゾクします。

早速アイフィンガーガエル!!カワイイのレベルが高すぎる。

  • アイフィンガーガエル

樹皮からカサカサ音がすると思ったらウルシゴキブリでした。漆黒でカッコイイ。

  • ウルシゴキブリ

目線ぐらいの葉の上にはアオミオカタニシ。瞳がつぶらすぎる。殻が青いのではなく、身が青い(青身)なため、死ぬとこの色は失われてしまいます。

  • アオミオカタニシ

南国らしい板根の隙間にできた水たまり(ファイトテルマータ)を発見。こういうところにはあの幼生がいるのでは…?と覗いてみます。

いるー!!!本種の幼生はファイトテルマータで生育することが知られています。この水たまりだけで3匹ほどが育っていました。

  • アイフィンガーガエル幼生

すぐ隣にはアイフィンガーの成体もいました。可愛すぎるだろ。

  • ひょこっとアイフィンガー

葉上でお休み中だったサキシマキノボリトカゲも発見。脚の先が葉からもろに出てますけど、これでいいんですか??あまり邪魔しないように一枚だけ撮らせてもらって移動。なんかこのユルさを見たらこの世の些末なことが全部どうでもよくなってきました。最高ですね。

  • サキシマキノボリトカゲ

ビッカビカのナナホシキンカメムシ。琉球遠征の定番です。マングローブにいるというハラアカナナホシキンカメムシもいつか見てみたいのですが、未だに出会えていません。

  • ナナホシキンカメムシ

◆沢に突入

沢に入りたくなってきたので、近所にあるいきつけの沢に突入します。

頭上でヤエヤマアオガエルが夜の森を見つめていました。

  • ヤエヤマアオガエル

樹にはりつくヤモリの誰か。琉球では種数が多く、未だに種の同定が私にはできません。そろそろ勉強したほうが良い気がします。

  • ヤモリの誰か

沢を少し登ると、鼻先がシュッとしていてかっこいいオハナサキガエル登場。

  • オオハナサキガエル

ここらでそろそろ本業の虫でも探そうかと思います。見たいのはとあるカタビロアメンボ。吸虫管をぶら下げながら丁寧に岸際の石をめくっていきます。

全然目当てではない虫ですが、底生班員故、見つけたら写真を撮ってしまいました。 一体八重山に何種のナガレアブが分布しているのかも知りません。

  • ナガレアブ科の何者か(幼虫)

石を捲っては戻すこと30分ほど。

いたあああああああああああああ!!!!ヒゲナガカタビロアメンボ!!!2022年に記載された大型種です。国産のカタビロアメンボ科他種とは一線を画すオーラを放っている八重山の至宝です。パラタイプに自分の採った標本を使ってもらった思い出深い種で、八重山に来たからには本種を見ないと始まりません。立て続けに3個体見つかりましたが、沢のなかでもやはり局所的に生息するようです。

他にもアリタツヤドロムシやハセガワケシミズカメムシ(と思われるもの)等を見つけ満足。気が付いたら23時前になっていたので、帰ることにしました。

  • ヒゲナガカタビロアメンボ

帰り際に視線を感じると思ったら、オオヒキガエルでした。特定外来生物です。石垣島は本種が多い印象ですが…うーん…。

  • 巨大オオヒキガエル。貫禄の塊。

なんだかんだで23時半ごろに宿に帰還。明日は一日使えるので、早く寝て早めに動けるようにします。

遠征二日日:3月21日

◆マングローブ林を堪能

宿の裏がすぐマングローブ林なので、朝からマングローブ林を眺めます。なんて贅沢なんだ。ぼちぼちしっかり明るくなってきたので、適当に島内を巡ることにします。

  • マングローブ林

アオアシシギが3羽田んぼにいました。

  • アオアシシギたち

ぽつんとツルシギ。赤が綺麗。

  • ツルシギ

アイドル、シロハラクイナ。手前のカルガモの顔が良い味を出しています。

  • シロハラクイナ

◆池には辿りつけなかったものの…

ちゃんと虫採りをしに行きましょう…地図上で目をつけていた池へ。アクセスできるかな…?と思ってチャレンジしましたが、段々と藪が濃くなってきて断念。複数人で来た時に再チャレンジしたいところです。

車を停めた近くの親水公園(?)のようなところでアシブトカタビロアメンボ属が遊泳しているのを見つけ、しばし撮影。

うわ!群れの大多数が昨年日本初記録論文が出たばかりのミナミアシブトカタビロアメンボだ!一部アシブトカタビロアメンボも混じっており、両種の生時の動きの違いなどをじっくり観察することができました。野外でもこの2種はなんとなく見分けられそうです。池にはたどり着けませんでしたが、収穫はありました。

  • ミナミアシブトカタビロアメンボの群れ

このあたりで一旦昼食を食べに行く事にします。石垣に来たら食べたいうふたさんのそばを食べておきます。人気店でタイミングが悪いと混むので、開店直後に入りました。味玉が乗っているのは珍しいかも??おすすめです。

  • 茶房うふたさん。おいしいいいいい。

◆午後は鳥と虫

午後は虫も採りつつ鳥もみつつ。石垣島では普通に会える鳥になっているカタグロトビ。

  • カタグロトビ

青空とシロガシラ。爽やか。

  • シロガシラ

一地点ぐらいは池に入って本業の虫採りもすることに。

岸際の植生帯をガチャガチャやって、ナガチビゲンゴロウ等の小型種をゲット。ナガチビはあまり縁のない虫なので、うれしいですね。半翅はよくわからないミズカメムシやカスリケシカタビロアメンボがいました。たのしい。

  • ナガチビゲンゴロウ

◆海でカメムシ探し

干潮時刻に合わせて海に行ってみようと思います。海とはいっても海水浴をするわけではありません。というか泳げないので膝より上を海水に浸すということをしたことがありません。何をするかというと、琉球ならではのサンゴ系カメムシを狙います。

  • 戦いの舞台

数年前ここでは干潮時に30分ほどで5、6匹の狙いの虫が採れたのですが…今回はなかなか見つかりません。吸虫管を咥えつつ歩くこと約一時間。その姿が目に入ってきたので、慎重に上から吸虫管を被せつつ素早く吸います。

サンゴミズギワカメムシ、撃破!!!!!三大サンゴ系半翅(カメムシ)の一角を担う超絶カッコいいミズギワカメムシです。(他2種はサンゴカメムシとサンゴアメンボ)。本種は干潮時にサンゴ礁の岩の上をトコトコ歩行します。ただ体長が数ミリしかない上に体色が背景の岩と同化しやすく、更に時々短距離を飛行するので見失う可能性も十分にあるのです。三大サンゴ系半翅はいずれもその生態と独特のルックスの良さもさることながら、採集難易度が高いということも相まって熱狂的なファンを少数抱えています。3種撃破している人は「すごい!!」です。これは自慢なのですが、私は3種とも撃破しています(すごい!!)。しかし一個体しか見つからなかったのは悔しいところ。この遠征中に機会があればまた挑戦することを誓いました。

  • サンゴミズギワカメムシ

薄暗くなってきましたが、移動しつつ適当に田んぼを覗きます。

日没方向を見つめるムラサキサギがいました。綺麗な鳥ですよね。

  • 夕暮れ時のムラサキサギ

八重山のシンボル、カンムリワシ。風に羽がなびく様はあまりにもイケています。

  • カンムリワシ

しばしカンムリワシに見惚れていたら、日没近くになっていたので、一旦宿へ帰還。

この日の晩も夕飯をご馳走していただけることになった上に(本当にありがとうございます)、ヤシガニを見に行かないかと誘っていただきました。

◆夜のヤシガニ探し

場所に到着すると、早速岩壁にそこそこのサイズのヤシガニが。かっこいいなあ…

  • ヤシガニ(中)

地面には小さなヤシガニも。色が美しいです。頑張って大きくなってください。

  • ヤシガニ(小)

道端でコバネコロギス(多分)が羽化(?)していました。

  • コバネコロギス(多分)

寝るには少し早いので、潮の引きつつあるマングローブ林でボーっとします。

足元のとんとんみー。

  • ミナミトビハゼ

頭上のシロジュウジホシカメムシ。初めて八重山に来た初日もこのカメムシを見ていた気がします。毎回見ている風物詩。

  • シロジュウジホシカメムシ

他にもカニやヤドカリたちを見て過ごして、早めに寝ました。

遠征三日日:3月22日

◆石垣島最終日は田んぼの鳥を観察

石垣島最終日です。昼過ぎには西表島に移動です。レンタカーの返却までは少し時間があるので、適当に田んぼでも見て回ることにします。宿でお世話になった皆さんにご挨拶して、出発。

アマサギは数が結構いました。

  • アマサギたち

サギたちに混じって田んぼに降りていたカンムリワシ。付近で農家さんが作業していましたが、あまり気にしていないようです。

  • 田んぼのカンムリワシ

すぐ目の前に捕食をしているカンムリワシが。食べているのはオオヒキガエルのようです。オオヒキガエルは有毒ですが、これを食べてもカンムリワシが中毒症状を起こさないメカニズムについては最近論文が出ていましたね。カンムリワシの捕食シーンを見られたことは嬉しいのですが、餌が外来種であるという絵面は歪なもので、複雑な心境です。後ろからバードウォッチングツアーのバスが来ていたので、場所を譲りました。

  • オオヒキガエルを食べるカンムリワシ

優しそうな顔をしたエリマキシギ。タカブシギと一緒にいました。

  • エリマキシギ

ヒバリシギがコチドリの群れに混ざってポツンと一羽。

  • ヒバリシギ

レンタカー返却まであと一時間ちょっと。とはいえお昼ご飯を食べるには早め…ここはちょっと気になっていた某所に行ってみます。

◆ミンサー織

どこかというと、ミンサー織の専門店であるあざみ屋さんのみんさー工芸館。以前、八重山に分布し、背面の絣模様がミンサー柄っぽい未記載ケシカタビロアメンボを、 Microvelia minsa (和名: ミンサーケシカタビロアメンボ)として記載した際、SNS上であざみ屋さんがリアクションしてくださったという経緯がありました。そんなわけで一度は行ってみたいと思っていたのです。じっくりと時間があるわけではないので、ショップをちらっと拝見。

  • みんさー工芸館

  • カメラストラップ

う、うわー!!あまりにも良すぎる!!購入購入購入!!良すぎですううう!!!

レンタカーで来店した人にはおまけとしてポストカードもいただきました。こちらも良すぎますありがとうございます!!!!!

  • ポストカード

レジのスタッフの方に前述のミンサーケシカタビロアメンボがどうこうという話をします。あいにくSNSの担当者の方はこの日はいらっしゃらなかったのですが、話を伝えておいていただき、あとからご連絡をいただきました(本当にありがとうございます)。

遠からずまたお邪魔します!!

◆ありがとう石垣島

素敵すぎるお土産を入手して、レンタカーを返却。離島ターミナルまでレンタカー屋さんに送迎していただきます。ドライバーの方がたまたま両爬好きで、車内での会話が弾みました。「西表での成果を期待しています!」と見送っていただき、離島ターミナルへ到着。

ポーク玉子おにぎりを食べながら船を待ち、「人に恵まれた石垣島だったなあ…」と思いつつ、まもなくやってくる遠征第二ラウンドへ期待を膨らませます。

次回、西表編へ続く…。

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