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ゴジュウカラ(五十雀)祝!連載50回達成記念

2013年3月1日
文:佐竹 一秀
(WEB公開:2016年3月1日)

四十雀と五十雀

シジュウカラ(四十雀)という鳥は、皆さんも見たり聞いたりしたことがあると思います。ではゴジュウカラ(五十雀)という鳥はご存知でしょうか。嘘のような話ですが、実在します。残念ながらサンジュウカラやロクジュウカラはいません。また嘘ではないのですが、ウソという鳥もいます。何がなんだかわからなくなってきたついでに、キンクロハジロ(金黒羽白)という何色かわからないカモの仲間もいますし、シラサギと呼ばれる一群にコサギ、チュウサギ、ダイサギが(アマサギも)いますが、ダイサギの亜種でオオダイサギ、チュウダイサギというのもいて、小中大から大大、大中ともうどうでもよい感じです。昆虫でもトゲナシトゲトゲ(トゲナシトゲトゲハムシ)というのもいるそうな…。

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    シジュウカラ

ちゃっかりもののゴジュウカラ

話を戻してゴジュウカラの話です。名前の由来はごく単純に、シジュウカラに似ているからゴジュウカラとなったようです。もっと似ている小型のヒガラや、コガラをニジュウカラやサンジュウカラとつけてもよかったと思うのは私だけでしょうか。

ゴジュウカラの別名にハチジュウカラというのもあるようですし、木の幹を回りながら虫を食べることから、木回り(きまわり)の異名もあります。低山帯上部から亜高山帯の森林に住んでいるため、一般の人にはなじみが薄いと思いますので写真を載せます。巣はキツツキの古巣等を借用することも多く、日本産のキツツキで最大のクマゲラの巣穴に泥をぬりつけ、入口を狭めてちゃっかりと乗っ取り、繁殖している映像を見たこともあります。普段はつがいや単独で行動し、群れを作ることはありませんが、カラ類の混群(こんぐん)に入ることもしばしばあります。

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    ゴジュウカラ

冬にできる混群

混群について少し解説します。シジュウカラやヒガラ、ヤマガラ等のカラ類に、エナガやゴジュウカラ、メジロ、コゲラ、ウグイス等が混じって群れをつくり、途中出入りはありますが行動をともにし、あたかも同一種の群のように動きます。これが混群です。川や湖に冬に渡来するカモも、何種類かが入り混じって大きな群れを作っていることがあります。ただこの場合は、種類ごとにその種にあった場所で休息したり、すき勝手に採餌したりしていますが、常にその種の中の自分の位置を確認しながら群れているように思います。外敵が現れた場合には飛びたつタイミングが種ごとに微妙に違うように感じます。

大勢に混じって身を守る

どうして混群を作るのでしょうか。外敵から身を守るためには、数が多い方が監視の目も多く、また狙われる確率も下がるため、有利になると思います。特に同じ種類同士であれば気心が知れ?安心して群れを維持できるのではないでしょうか。無理して違う種類と行動を共にしなくても、同一種の群れのほうが良いように思いますが…。

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    コガラ

餌の食べわけの効果も

実は同一種で数を増やすと餌が競合するため、餌不足におちいります。実施の混群をみると、樹林内の低いところにシジュウカラがいて、木の下の方や林床で餌を採っていますし、木の高いところにはヒガラ、中間にはヤマガラがいて、採餌する場所を変えています。それぞれの種のくちばしも、微妙に細かったり太かったり、あるいは扁平だったりと違っています。カラ混群は餌の種類をかえることで、森林の恵みをうまくわけて共生していると言えます。始めは競合していたのでしょうが、進化の過程で共生していき、共生できたから生き残り、できなかったものは滅びたと思います。

早春はそろそろ混群も解散

残念ながら今の時期(早春)は、鳥の繁殖期が近づいていますので、混群を解消してつがいを形成しはじめます。繁殖が終わると家族群で行動し、その後他の種も入ってきて混群を形成しはじめ、秋から初冬には群れの種類も個体数も多くなります。その時期に樹林内を歩くと、時々大きな混群に出会い、色々な小鳥達を比較的近くで見ることができ、鳥にかこまれた幸せな時間を過ごすことができます。 今年の秋に再び出会える事を願いつつ、連載50回目を終わります。

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    ヒガラ

連載五十回を一区切りとして

皆さんの意見に耳を傾けることなく、マイペースで好き勝手な文章を書き、写真を載せ、はや50回です。もう飽きたという人も多いと思いますが、タイトルのゴジュウカラにちなんで、この50回を一区切りとし、ここから新たな気持ちでさらに書き続けたいと思います(編集者のSさんから、もういいよといわれる日まで…)。
駄洒落でネタを決めるような不心得者ですが、今後ともよろしくお願いします。

  • 【参考資料】
  • 上田恵介『鳥はなぜ集まる?群れの行動生態学』(東京化学同人、1990年)133-139,149-154頁
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