雪の残る山々
今年の春はいつもの年より生物調査が多く、東北地方をかけずり回っています。残雪の残る蔵王や岩手山、あるいはまだまだ真っ白な月山や鳥海山をみるにつけ、荘厳な気持ちになりますに、憧れをいだきます。富士山が世界文化遺産に登録される見込みとの話もありました。このような高い山を見ながら子供時代を過ごせれば、向上心のあるもっとしっかりとした大人になれたのではと思ってしまいますが…。また、プロスキーヤー&登山家の三浦雄一郎さんが最高齢(80才)でのエベレスト登頂に成功したとのニュースも流れ、まだまだ頑張らなければと元気をわけてもらえました。8,000m級の山々を登ることは無理にしても、是非見てみたいと思いました。
鳥海山
オオタカのレッドリストのランクが下がる
山に憧れつつも仕事はと言えば猛禽類の調査が多いです。猛禽類とはイヌワシ、クマタカ、オオタカ等の鷲や鷹の仲間です。生態系ピラミッドの頂点にいて、生態系の健全性の指標となっていますし、地域のシンボルとして保護されているところもあります。今回この猛禽類の一種であるオオタカについて、5月15日に以下のニュースが流れました。
【環境省の中央環境審議会小委員会は、絶滅の恐れがあるとして種の保存法で「国内希少野生動植物種」に指定されているオオタカの生息数が回復したとして、指定を解除するかどうかの検討を始めた】
環境省によると、オオタカは住宅地の造成などで生息数が減り、1984年の民間調査では全国で300~489羽と推定され、93年の種の保存法施行と同時に希少種に指定されましたが、2008年の専門家調査では関東地方と周辺だけで約5800羽まで回復したとのことです。ただ15日の小委員会では、指定解除に肯定的な意見が出た一方で「数が増えた原因について、情報を整理するべきだ」と慎重な検討を求める委員もいたとのことです。オオタカは環境省の絶滅の恐れのある野生生物のリスト(レッドリスト)でも2006年に絶滅危惧種から、準絶滅危惧種にランクが下がり、絶滅の危険性が減少した種と言えます。
オオタカ
調査によって実態が把握されたか
オオタカの生息数が回復し、絶滅の危険性が減ったことは、大変喜ばしいことではあるのですが、全国で500羽弱だった個体数がこの30年程の間に関東地方と周辺だけで5,800羽と10倍以上の大幅な増です。確かに各種の開発行為については自然環境に配慮する事が当たり前の事となっていますし、各地でオオタカの保護活動や、密猟防止のための見回りが行われたことも事実です。ただそれにしても増え過ぎでは? このままの勢いで増え続ければハトや小鳥類が減少…ブラックバス状態…。
そんな事を想像しつつも、私は違うことを考えていました。それは、元々そこそこの個体数がいて、近年しっかりと調査が行われたことにより、実数に近い数が確認され、見かけ上増えた。オオタカ以外の種でも、実情がよく把握できないためレッドリストに掲載されている種もいます。コウモリの仲間がそのような状況にいます。良くわからないので、とりあえず取り上げておいて、その後の調査により絶滅危惧の度合いを判定する。そんなやり方もありだと思っています。人知れず絶滅していく種が多いなか、メダカのように絶滅危惧種に指定されることで、世間から注目され保護、保全につながる事も多いと思います。
いずれにしても絶滅危惧の度合いが減ったことは大変嬉しいことです。興味をもって見守ることしかできませんが、今後もオオタカに続く種が多く出ることを期待しています。
オオタカ