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2017年酉(鳥)年です!

2017年1月20日
文:佐竹 一秀
(WEB公開:2024年4月18日)

2017年がはじまりました

遅ればせながら「明けましておめでとうございます」。写真は2017年の初日の出です。少し雲が出てきれいな日の出とはなりませんでした。場所は名取川河口部左岸の井戸浦地区の見晴し台(緊急時避難場所)です。この場所には100名程度の人々が集まっており、初日の出に向かってそれぞれに思いを込めて手を合わせていました。

  • 2017年初日の出:井戸浦

    2017年初日の出:井戸浦

うそかえ神事は西の行事?

2017年は酉(鳥)年です。3年程前のニュースレター(No.98)に鷽(ウソ)替え神事の事を書きました。
「新年早々嘘(うそ)と鷽(ウソ)!」

鳥の鷽(ウソ)が嘘(うそ)に通じることから、前年にあった災厄・凶事などを嘘とし、本年は吉となることを祈念して行われる行事です。この神事は太宰府天満宮、亀戸天神社、大阪天満宮などの天神様で行われており、関東以西の行事と思っていました。ところが、1月13日の河北新報の朝刊に、福島市飯坂町の西根神社境内にある高畑天満宮で、1月12日から「うそかえ祭」が始まり、不幸をうそに変える木彫りの縁起物「鷽鳥(うそどり)」を買い求める参拝客が列をつくったとの記事が載っていました。1月15日までの期間中、約10万人が訪れるとの事でしたので、東北でも行われていたのです(知らなかったのは私だけかもしれませんが)。

木彫りのウソが地元でも

鳥好きの私としましては、神事はさておき、木彫りのウソに惹かれ、ぜひ手にしてみたいと思いました。幸い1月14、15日は土日です。車だと1時間チョットで行けます。ただ、今年一番の寒波襲来との予報が出ており、大雪だと厳しいか…とも思いました。そんなことを考えていた時、地元仙台でも行われているのでは?と思いつき、ネットで検索してみました。ありました! 仙台市内にある榴岡天満宮でも行われているそうです。都合の良いことに1月14日に鷽替え特別祈願祭を行い、また鷽替え神事斎行日に限り、「鷽の一刀彫」を授与するとのことでした。時間は朝9時から。ただし250体(羽)限定です。さらに惹かれたのは250羽中には悪しき事を「真っ赤な嘘」に替え、幸運が巡ってくると伝えられる「真っ赤な鷽」が数十羽おり、更には酉歳限定で、末広がりの八羽限定の「幸運の青い鷽」が羽を休めている(入っている)との事。もう、何が何でも行くしかありません。

大行列!

と言いながらも、当日朝、さほど人気のある行事ではないのでは?と思い、開始時間の9時から遅れること1時間、10時少し過ぎに榴岡天満宮に着きました。いざ行ってみると、100名近くの人が列を作っていました。10時に100名、配布開始が9時、限定250羽、シマッタ、やってしまった…。案の定、誘導係の人から、「なくなってしまう可能性が(かなりの確率で)ありますので、その点承知の上で並んでください」と言われました。せっかく来たのでとりあえず並ぶことに。その時点では多分ダメだろう、このまま飯坂の高畑天満宮に移動しようか…とも考えていました。

ウソはいつ飛び立つ!?

が、列が進むなかで、「飛び立ちました(無くなりました)!」との声が聞こえません。徐々に近づいてきますが、不安は膨らむばかり。どうせなら、早めに終了宣言してもらいたいものです。直前で終了されると虚しさだけが残ります。ましてや限定のお守りです。それこそ今年の運に見放されたようなものです。ドキドキしながら、先頭を見ていました。「鷽鳥」は台の上に置いてある赤い袋に入っているのですぐにわかります。一旦、台の上から赤い袋が消えました。遂に終わりか…。いえいえ、後ろから10袋程度追加されました。目の前にはまだ10数名並んでいます。やはりだめか…。私の後ろにも30名ほどが並んでいて、同じような気持ちで見ているようです。5人、4人、3人…ついに順番がきました。買えました! とりあえず運には見放されなかったようです。

赤か、青か?

次は、真っ赤な鷽か、青い鷽が入っていてほしい。欲望とは凄いものです。ついさっきまで手に入るだけでよかったはずのものが、いざ手元に来るとよりよいものが欲しくなります。人間のさがです。これでは、天神様にも「こいつはダメだ!」と思われたのでは…。かじかんだ手で赤い袋から出し、丁寧に巻かれている包み紙をワクワクしながら開ける…。下の写真の通りの普通の鷽でした。直径3cm程度、高さ8cm程度の円柱の木材に切込と色付けがされておりました。

  • 鷽鳥:榴岡天満宮

    鷽鳥:榴岡天満宮

「去年の悪しき(凶事)は嘘(鷽)となり まことの吉(良事)に取り(鳥)替えん 杜の都の天神さま 榴岡天満宮」

同封されていた紙に書かれていた言葉です。

現実の鳥類の状況は?

話題を換え、酉(鳥)年ですので、鳥類の現状について話します。まず言えるのは全体として数が減っています。特に長距離を移動する渡り鳥、なかでも夏鳥と呼ばれ、春に渡来して日本で繁殖し、秋に南方に帰る種が減少しています。キビタキ、オオルリ、サンコウチョウなどがこれです。また日本より北の地方で繁殖し、南方で越冬し、春と秋に一時的に渡来する旅鳥も減少しています。シギチドリ類と呼ばれる種群です。減少の原因としては繁殖地や越冬地の環境変化が挙げられます。森林伐採や草原の破壊、沼沢地や干潟の埋立等、人間の活動が関わっている問題です。

一方で留鳥である猛禽類のイヌワシやクマタカの減少も目立っています。原因としては人間の自然への関わり方の変化が森林の変質を招き、餌動物が減少していることが影響を与えているようです。海鳥の減少も気になります。ウミガラスやエトピリカ等の潜水して魚介類を採餌する種です。流し網漁の網にかかって死亡する個体が多く、またオオセグロカモメやハシブトガラスによる卵や雛の食害も見られています。外来の捕食者による影響も出ています。直接的な捕食以外にも、餌動物の減少が原因と考えられる例もみられます。

生きものの安易な「導入」は危険

過去、三宅島ではネズミによる農業被害を防ぐためにイタチを導入しました。はじめは雄のみの放獣でしたが、ネズミの数は減らなかったため、その後非公式に雄雌での放獣が行われたようです。その結果、イタチの個体数が急激に増え、ネズミの数も減りましたが、他の生物にも食害が及びました。特にオカダトカゲが捕食され、それを主な餌としていた猛禽類のサシバの減少が顕著です。天然記念物であるアカコッコやコジュケイ等の地上性の鳥類も直接的な食害により大打撃を受けています。

温暖化で変わる渡り

温暖化の影響としては、渡り鳥の渡来時期や繁殖時期に変化がみられています。コムクドリの産卵開始日が30年間で2週間ほど早くなり、夏鳥のツバメの渡来日が52年間で約10日早くなっています。冬鳥では逆に渡来時期が遅くなり、ツグミやジョウビタキでは32年間で9日ほど遅くなり、渡去が21日ほど早くなっていることから、冬季の滞在期間が1か月程短くなっているという報告があります。

分布域の変化

また、分布域の変化も認められています。冬季北海道でのハクチョウ類の残留、サシバの越冬北限が奄美大島から九州南部へと北上しています。これらの原因が複合的にからみあい、全体として個体数の減につながっていると考えられます。ある地域のある種は急激に減少しているが、ある地域ではそれほどでもないという、地域や種別の減少の度合いも様々で、上述の通り複合的な原因による結果と言えます。今後ともしっかりとモニタリングを行い、必要な対策を行っていく必要があります。一方で保護増殖も成果が現れてきています。佐渡のトキやアホウドリ、コウノトリ、シジュウカラガンは個体数を増やし、絶滅の危機から脱しつつあります。

鳥類の概略的な話をしましたが、個々にドラマがあります。折に触れコメントはしていましたし、トキの回復については詳しく書いてきました。今後、解説する機会は減ると思いますができるかぎり…。それでは鷽替えのご利益が皆さんにもおすそ分けできますよう、本年もよろしくお願いいたします。

  • ウソ(♂)

    ウソ(♂)

  • 【参考文献】
  • 樋口広芳『日本の鳥の世界』(平凡社、120-145頁、2014年)
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