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北の大地・最北のまち!

2017年3月1日
文:佐竹 一秀
(WEB公開:2024年4月18日)

いざ、最北の地へ!

北の大地、最北のまち「稚内」。真冬に好んで訪れる人などいない場所。そこに我がNPO(e-tec)は行ったのでした。北海道の北端部、稚内の南50㎞ほどのところにある幌延深地層研究センターの視察が目的の旅でした。視察については誰かが紹介してくれると思うので、私の担当、生き物の話をします。写真はカモの仲間、コオリガモの雄です。冬鳥として北日本の海上に渡来する鳥です。北海道には比較的多く渡来し、湾内にいることもあり、今回のお目当ての一つです。頭、首回り、羽のなどの白色と、中央尾羽が長いのが特徴です。この写真のように見ることができれば、よかったのですが…。

  • コオリガモ(♂)

    コオリガモ(♂)

ほろ酔い気分で明日の下見

仙台空港から新千歳空港、そして稚内空港へ。稚内に着いたのは夕方、暗くなってからでした。期待していたほどの寒さではなかったですが、冷気が気分を高めてくれました。全行程1泊2日ですが、仙台空港を昼過ぎに飛び立ったので、実質1泊1.5日という強行スケジュール。時間がない中でどのように時間を作り、生き物を見るか…(私の使命はここにある)。夕食はYさんお勧めの地元の居酒屋さん、北海道の海の幸、おいしいお酒も十分に堪能しました。その後ホテルに戻り、ほろ酔い気分も手伝って、さっそく行動開始です。まずはホテルの周りを散策し、明朝のための下見をします。雪はチラついていますが、風はほとんどなく、積雪も30~40㎝、雪質はサラサラで問題なく歩けました。JR稚内駅、北海道遺産の稚内港北防波堤ドーム、そして稚内港と見てまわりました。夜間なので鳥の姿は見えませんが、稚内港の岸壁付近を歩くキタキツネを見かけました。

稚内港でカモ探し

翌朝はホテルのロビーに7:50集合です。日の出が遅いため、早朝からの観察はできません。5時半に起床、朝食を一番の6時に取りましたが、外はまだ薄暗くて写真など撮れる明るさではありません。6時半頃にやっと明るくなってきたので、まずはホテルの前の稚内港に行きました。カモメ類がちらほらいますが、お目当てのカモ類(コオリガモ)がいません。少し待つと近くの水面に鵜(う)の仲間のヒメウが現れ、周辺ではカラスが鳴きはじめました。時間だけが過ぎ、雪も降りはじめましたが鳥は出ず、諦めかけて移動しようかと思った時、湾内遠方にカモ類の群れが現れました。

小雪がチラついています。双眼鏡で確認するとコオリガモらしいのですが、はっきりしません。望遠で撮影し、さらにモニターで拡大して、やっとコオリガモと確認できました。その写真が右です。前の写真とは大違いです。遠方、明るさ不足、何よりも腕がいまいち!(普段はカメラの性能がカバーしてくれていた)。近くに来てくれることを期待したのですが、アッという間に飛び立ち、雪の中に消えました。

  • コオリガモの群れ

    コオリガモの群れ

防波堤ドームで再チャレンジ

時間がないので、急いで北側にある防波堤ドームへ。ここは外洋に面していて、一番期待していた場所です。もっと間近でコオリガモを見たい! 小雪から雪模様になり、視界も悪くなってきました。防波堤ドームの脇の階段をのぼると、海面が見えました。やや近い場所にカモ類が浮いています。コオリガモ? 残念! カモの仲間ではあるのですが、シノリガモとウミアイサの群れでした。その後しばらく粘っていたのですがコオリガモは現れず、集合の時間が迫ってきました。ホテルに戻らねば視察に置いて行かれる(それもありか…いえ、良識&良心が許してくれませんでした)。近くを飛んでくれたオジロワシの若鳥を見つつホテルに戻り、身支度を整えてロビーへ。間に合った(残念!)。

シノリガモの由来

ここでシノリガモについて少し解説します。下の写真がシノリガモの雄ですが、なかなか派手な模様です。和名の由来ははっきりしませんが、英名は道化師(ピエロ)が由来とのこと、確かに似ているかも。冬鳥として北日本の波の荒い場所に渡来しますが、実は北日本で少数繁殖しています。最初に繁殖が確認されたのが1976年、青森県の白神山地の赤石川、次が宮城県の栗駒山の一迫川で1978年のことです。その後東北地方のブナ林内の渓流や北海道でも見つかっています。一迫川では1999年まで断続的な繁殖の記録が残っていますが、その後の状況はよくわかっていません。2008年の6月には岩手・宮城内陸地震が発生し、山体崩壊、土砂崩れ、河道閉塞などにより、繁殖地が壊滅的な被害を受けました。冬には宮城県の海岸部でも時々見ますが、新緑の渓流でもぜひ見たいものです。

  • シノリガモ(♂)

    シノリガモ(♂)

稚内から幌延へ

話を戻して、稚内から幌延までのジャンボタクシー移動中の観察状況です。雪はあるものの5~60㎝程度、吹き溜まりでも1m程度でしょうか? 雪質が軽いので風で飛ばされてしまい、あまり積もらないようです。車外に何かいないか、目を凝らしてみているのですが、そのうちに車窓が曇りだしました。ほぼ定員に近い人数が乗っている車内です。窓ガラスが曇り、視界不調。早朝から動き回っていたので、つい眠気が…。気がつけば幌延深地層研究センターでした。センターで説明を受け、地上部にある展示施設を見学後、いざ地底350mの世界へ。500mまで掘り下げる予定ですが、現在は350mです。頭の中に歌が流れてきます。そうですプロジェクトXの主題歌「地上の星」です。ここは北海道、北海道を代表するシンガーソングライターといえば「中島みゆき」つながりました。

♪風の中のすばる 砂の中の銀河 みんな何処へ行った 見送られることもなく 草原のペガサス 街角のヴィーナス みんな何処へ行った 見守られることもなく……

幌延の深地層研究所センターの後はトナカイ牧場での昼食をはさんで、オトンルイ風力発電の見学です。サロベツ原野の南側、海岸沿いを走る道路沿い3.1㎞に立ち並ぶ高さ100m、28基の風力発電です。大自然の中にある巨大な人工物、壮観でした。この建設にも物語があるのかもしれません。再び「地上の星」が頭の中を駆け巡ります。

  • オトンルイ風力発電の風車

    オトンルイ風力発電の風車

オロロンラインと歌

そこから稚内までの帰り道は海沿いの道道106号(オロロンライン)です。何もない、サロベツの原野が広がるばかりです。どこまでいっても原野、原野、原野……そして雪、雪、雪……さらに風、風、風……。また、歌が浮かんできました。中島みゆきに続き、北海道の代表的なシンガー…そうです松山千春です。(グレイを思い浮かべた人はやや若い!最近の人は??サブちゃんは…)♪果てしない大空と… ご存知の人も多いと思いますが、北海道足寄町出身の松山千春の代表曲の一つ、「大空と大地の中で」の冒頭部分です。

♪果てしない大空と広い大地のその中で いつの日か幸せを自分の腕でつかむよう 歩き出そう明日の日に ふり返るにはまだ若い ふきすさぶ北風にとばされぬようとばぬよう こごえた両手に息をふきかけて しばれた体をあたためて 生きる事がつらいとか 苦しいだとかいう前に 野に育つ花ならば力の限り生きてやれ……
(私も頑張らねば!)

もう一曲、移動中の車中で話題になった歌がありました。それは「宗谷岬」です。作詞は地元稚内の作詞家吉田弘、作曲はつい最近亡くなられた船村徹、そして唄はダ・カーポです。「NHK みんなのうた」の1曲とした放送され世に広まりました。

♪流氷とけて 春風吹いて ハマナス咲いて カモメもないて はるか沖ゆく 外国船の 煙もうれし 宗谷の岬 流氷とけて 春風吹いて ハマナス揺れる 宗谷の岬 吹雪が晴れて 凍(しば)れがゆるみ 渚の貝も 眠りがさめた 人の心の 扉を開き 海鳴り響く 宗谷の岬 流氷とけて 春風吹いて ハマナス揺れる 宗谷の岬 幸せ求め 最果ての地に それぞれ人は 明日を祈る 波もピリカの 子守のように 想い出残る 宗谷の岬 流氷とけて 春風吹いて ハマナス揺れる 宗谷の岬
(もうすぐ春、この歌のとおりですね)

生きもの観察は次回に持ち越し

せっかくの北海道、最果ての地「稚内」でしたが、あまり動物を見ることもできず、心残りのある旅となりました(視察の目的はしっかりと達成できましたが)。次は春風が吹く頃か、サロベツ原生湿原の花の時期にゆっくりと訪れてみたいものです。また、同じ厳冬期のコオリガモ、ゴマフアザラシ、さらにはシロフクロウ、シロハヤブサ、ユキホオジロ等々にも再チャレンジしてみたいです。以下の写真は、残念ながら見られなかったゴマフアザラシです。撮影場所は、今回の帰り道、道道106号(オロロンライン)の途中、抜海岬とのこと。(チョッとだけ寄りたかった…)

  • サロベツ原野から西方向、洋上に雲に隠れた利尻島も・・・

    サロベツ原野から西方向
    洋上に雲に隠れた利尻島も・・・

  • ゴマフアザラシ-1

    ゴマフアザラシ-1

  • ゴマフアザラシ-2

    ゴマフアザラシ-2

  • 【参考文献】
  • 佐藤正助『佐藤ひろみ遺稿集「あしあと」』(耕風社、129-164,2001年)
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