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『自然のアルバム』

2017年8月1日
文:佐竹 一秀
(WEB公開:2024年4月18日)

ようやくの夏

やっと少しだけ夏が戻ってきました。8月に入ってから仙台では真夏日もほとんどなく、毎日毎日曇り、そして朝夕は霧雨。冬の日本海側と同じようです。仙台に住んでいた人が日本海側に転勤になり、曇り空の続く冬に耐えきれず、仕事を辞めて帰ってきてしまった…そんな話にも納得できそうな8月上中旬の仙台でした。今日(8/26)現在、仙台の降水連続日数が36日となり、観測が始まった1926年以降、最長の記録となってしまいました。ちなみに第二位は1934年(昭和9年)の35日連続です。明日は降らない予報となっていますが…(8/27は降水なしでした!よかった)。

  • マガモ(下:雄 左:雌)

    マガモ(下:雄 左:雌)

最終回です

100回もの長きにわたり、稚拙な文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。今回で「不思議な生き物語」を終了させていただきます。書き始めの頃はネタも少しはあるので、何とかなると気楽に考えていました。ただ、季節感を出そうとすると、アッという間にネタ切れになりました。特に冬場、その月のネタ探しに、本を読み漁ったり、社員から情報を仕入れたりと、今思えばなかなか大変でした。書き出しも遅くなり、当然ながら〆切を過ぎても書き上がらず、焦ってチェックもせずにK嬢へ送ってしまい、誤字脱字、意味不明等々、毎回迷惑をかけておりました。この場を借りて、お詫びとお礼を申し上げます。

自然との関わりをふりかえってみます

100回目のネタを何にしようかと考え始めたのは90回目頃から。91、92、93…と進んでも良い案がなく、ここまできてしまいました。かっこよくそしてさわやかに終了したい!柄にもなくそんなことを考えていたのですが、結局何を書けば良いかわからなくなってしまいました。そんななか、昔の歌が聞こえてきました。

「♪本当の人生、本当のひと時、生きてる心、自然に帰れと、誰かが呼んでる、そうさコカコーラ」

1970年代のCMソング「コークの世界」です。そうです、自然に帰ればいいのです。自然が好き、動植物が好き(だけど、ヘビは嫌い)。私自身の生き物との関わりについて書きたいと思います。生まれは宮城県北部の涌谷町箟岳(ののだけ)、子どもの頃から野山を駆けまわって遊んでいました。ほかに遊ぶものがなかった昭和30~40年代の事です。記憶に残っているところでは、2B弾(にびーだん)と言う直径5mm、長さ5cm程の花火があります。先端部分に火薬がついていて、マッチ箱の側面(こする部分)に擦りつけると発火し、10秒程白煙を出した後に爆発する玩具です。爆発音と破壊力が楽しめるため、いろいろなものに突っ込んで爆発させました。私より上の世代の人は、覚えがあるのではないでしょうか。砂山や泥、あるいは水中で爆発させるのも面白かったです。手榴弾代わりに投げたり、キュウリやトマトなど野菜にも仕掛けました。そして極めつけはカエルやヘビです。口に突っ込んで、逃げだすところを爆発させて喜んでいました。今思えばとてもひどい話です…(反省)。動植物好きのエピソードとしては最も不適切!

自然好きの原点になった番組

子どもの頃、「自然のアルバム」なるテレビ番組があり、毎週見ていました。日曜日の朝8時頃に放送されていました。日本各地の風景と、そこに生きる動植物たちの映像に見入っていました。大人になったら、それらを全部見たい、そんなことを考えていたような、いなかったような…。とにかく憧れていました。今でも記憶に残っているのはライチョウです。雪山バックのライチョウはとてもきれいでした…雪をバックにした白いライチョウ…。闇夜にカラス、雪にサギ、の体現です。

手元に「NHK自然のアルバム(全4巻)」という本があります。テレビの映像から切り出した写真と、あらたに撮影した写真を使ってまとめられた書物です。久しぶりに取り出して見てみました。…が、しかし、画質が悪い! 最近の映像や印刷物はとてもきれいです。昔はこれで十分満足していました。技術の進歩は恐ろしい。初恋の人も50年たてば…(チョッと違うか)。自然のアルバム以降は「さわやか自然百景」、「ウオッチング」、「地球ファミリー」、「生きもの地球紀行」、「地球!ふしぎ大自然」、「ダーウィンが来た!」と続いており、今でも好きで時間が許せば見ています。自然のアルバムが私の原点かも知れません。

  • 雪の中のライチョウ

    雪の中のライチョウ

ヘビ嫌いのきっかけ

私はヘビが嫌いです。という話はここでも何回か書いてきました。今回はその原因となった事件(大げさなものではありませんが)を短編小説風にしてみました。

今から45年程前、とある田舎の山道を一人の中学生が急ぎ足で下っていました。待ち合わせの時間に遅れる。誰と何のための待ち合わせだったか、今となっては覚えていません。坂道を右にまわりこんだところで、道の先にひものようなものあるのが目に入りました。長さ1m程でしょうか。少し近づくとゆっくり動き出しました。ひもが動く…じっくり見ると、蛇、ヤマカガシです。二又に分かれた細い舌をチロチロと出し入れし、赤色を誇示しつつ、少年を睨んでいました。平静を装った少年でしたが、心の中では「なぜ俺を驚かす!」小さな怒りの炎がともりました。それがだんだんと大きくなり、そしてついに抑えきれなくなりました。「仕返しだ!」右に杉の枯れ枝がありました。そうだ、俺を驚かせた罰だ、徹底的に叩きのめしてやろう。そう思って枝をつかもうとした瞬間、そこには別のヤマカガシが! もうだめです…。(この話も動植物好きのエピソードとしては不適切!)

嫌い度ランキング

ヘビといっても何種類かいて、それぞれ個性的です。大嫌いなものもいますし、まあまあ我慢できるものもいます。ただ、首に巻きつけるほど好きなヘビはいませんが…。日本本土で見られる8種を、嫌いな順にコメントをつけて並べてみました。

  • ①シマヘビ:とにかく動きが早く気が荒い。
  • ②ヤマカガシ:ヘビ嫌いの原因。幼蛇は可愛いが、赤い色が毒々しい。
  • ③アオダイショウ:動きが鈍いので、近づかないと気付かない。
  • ④マムシ:毒蛇で人相(へびそう)は悪いが、動きが適度(早くもなく、遅くもなく)。あまり大きくないので毒の量も少なく、かまれても死に至ることは少ない。
  • ⑤ジムグリ:噛みつかれても痛くなさそう。
  • ⑥ヒバカリ:チョッとだけ可愛い。
  • ⑦タカチホヘビ:これも細くて可愛い。なかなか見られない。
  • ⑧シロマダラ:私は生きた状態で見たことがない(轢死体でのみ)。まだら模様が少々毒々しい。
  • 番外:ツチノコ:是非見てみたい。

全てを写真で示せばよいのですが、それは見たくないです。100号記念を嫌いな蛇で〆たのでは、夢見がわるい(夢の中にも出てきそう…)。

  • タカチホヘビ

    タカチホヘビ

一方、好きな鳥について

好きな鳥の話を書いて終わりたいと思います。35年程前、大学を卒業後、民間の分析機関(計量証明事業所)に就職しました。そこで鳥好きの先輩に日本野鳥の会主催のガンカモ類調査に誘われました。調査地の名取川に行き、初めて見せてもらったのがマガモでした(冒頭の写真です)。望遠鏡をのぞいた時のオスの頭部の緑色は「きれい!」の一言でした。カワラヒワの黄色、ベニマシコの赤い色、鮮やかな色と愛らしい表情に一目惚れでした。さっそく双眼鏡、望遠鏡、そして鳥類図鑑を買い込んで、それからの鳥見(とりみ)人生です。昼休みは近くの田んぼや河原へ、遠くに出かけるときはそばの探鳥地を調べ、無理やり時間調整をして鳥見に行きました。珍鳥(迷鳥)の情報があれば出勤前に出かけたり(多少遅刻したり)もしました。思い出されるのは水戸の仙波湖です。結婚式を明日に控えた友人を引っ張り出して、カモ類を見るために道案内をさせてしまいました。鳥見ついでの結婚式参加です。今思えば失礼な話です(少しだけ反省しています)。40代前半まではとにかく珍しい鳥を見たいという思いが強く、情報があれば時間の許すかぎり見に行きました。ギンザンマシコ、クロツラヘラサギ、サバクヒタキ等々、沖縄旅行中に見に行ったコウノトリもそうでした。それがある頃から、珍鳥情報をたよりの鳥見はやめてしまいました。情報をもらって見にいけば、確認できる可能性も高くなりますし、感動もそこそこあります。ただ、情報なしで一度も見たことない憧れの鳥が目の前に現れたらどうでしょう。嬉しさのあまり狂喜乱舞、変人の極みです。

しかしそんな時代も過ぎ、還暦をまじかに控えた身では、憧れの鳥はキープせず、情報をもらって見に行ってもいいのではと考えなおしはじめています。そんな鳥ほど個体数が減少しており、一生見られないかも知れません。いつお迎えが来るかもしれませんし…。ミヤコドリ、ヤツガシラ、ブッポウソウ、アカモズ、チゴモズ…ライチョウもまだでした。これらを見ることができたなら、感動のあまり心臓が停止してしまうかも…。

震災後から続けている観察はこれからも

震災直後から月に1回のペースで鳥見をしている仙台空港北東側の広浦ですが、今も継続しています。鳥見とともに防潮堤、防潮林、耕作地、貞山堀等の震災復興の状況と周辺環境の変化も見ています。人工物は物凄い速さで元の(それ以上の)状況になり、自然環境は単純で多様性の少ない方向へ向かっています。ヨシ原が頑張っていてくれているのですが、周辺から徐々に削りとられたり、乾燥化が進んでいる場所もあります。一方で、ヨシが増えている場所、震災後に発芽したマツの幼木が成長し、広葉樹とともに小規模ながら混交林を形成しはじめている場所もあります。鳥類では一時湿地化した場所が元の乾燥した畑地に戻ったため、シギチドリ類の渡来が少なくなり、逆にヒバリやムクドリが利用を回復させています。湿地に繁茂したミズアオイは他の植物の進出により衰退し、乾燥化、客土により、埋土種子となり休眠に入りました。キツネ、タヌキ、ウシガエル、そして大嫌いなシマヘビも確認しています。夏場にはカニ類がたくさん歩き回っていて、踏査に気を使います。種類の多い植物や昆虫類もいろいろ面白い?ことになっていると思います。

ライフワークとして今後もこの地域を見続けたいと思っていますし、それ以外の場所での情報、あるいは話題・問題となっている、今であればヒアリ、カワウソ等の情報、各種文献、研究成果等々も含めて「不思議な生き物語」を私の「自然のアルバム」のなかにストックしていきます。そして、時々、皆様にも紹介できればとも思っています。長い期間おつきあいいただき、ありがとうございました。

  • 私のお気に入り:ジョウビタキ(♀)

    私のお気に入り:ジョウビタキ(♀)

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