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雨が似合う鳥!?

2018年7月1日
文:佐竹 一秀
(WEB公開:2024年9月18日)

帰ってきた原稿書き

2週間程前のE-TEC幹事会にて。「佐竹さん、リレー寄稿の順番です」

K嬢の言葉は、あまりにも突然、かつ衝撃でした。終わったはずの原稿書きが、戻ってきました。10ヶ月ぶりです。もう少し休んではと気遣ってくれる幹事の方々もいたのですが、K嬢の言葉は絶対です。とはいえ久々ですので、新たな生き物ネタがいっぱい集まっているはず!と思って頭の中を覗いてみました…が、全くない…真っ白、空っぽです。連載中は意識してネタ集めをしていたのですが、最近はボーっと過ごしていました。「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と5歳のチコちゃんに叱られます(NHK総合テレビ)。

降りてくるのは雨ばかり

そのうちにネタが勝手に下りてくる。ネタが下りてくるはず…なかなか下りてこない…ネタの代わりに降ってくるのは、うっとうしい梅雨の雨ばかり…。

♪雨が空から降れば 思い出は地面にしみこむ 雨がシトシト降れば  思い出もシトシトにじむ 黒いコウモリ傘をさして 町を歩けば あの町も雨のなか この町も雨のなか 電信柱もポストもふるさとも雨の中 しょうがない 雨の日はしょうがない 公園のベンチで一人 お魚を釣れば お魚もまた雨の中 しょうがない 雨の日はしょうがない しょうがない 雨の日はしょうがない しょうがない 雨の日はしょうがない♪
「雨が空から降れば(詩:別役実 曲・歌:小室等)」

この歌が、頭の中をめぐりはじめました。雨の日はしょうがないか!などとネタ探しをなかばあきらめ、頭の中は「雨の歌」を探し始めていました。1970~80年代のフォークソング。雨の物語・いつか冷たい雨が(イルカ)、ある雨の日の情景(吉田拓郎)、 雨は似合わない(NSP)、雨宿り(さだまさし)、霧雨の朝突然に(バンバン)、雨だれ(太田裕美)、傘がない(井上陽水)、銀の雨(松山千春)、春の雨は優しいはずなの(小椋佳)、雨降り道玄坂・濡れたコートに濡れた雨傘(ふきのとう)、冷たい雨(ハイ・ファイ・セット)、今日は雨(南こうせつ)、たどり着いたらいつも雨降り(モップス)…などなど、タイトルから歌手名まで次々にでてきます。少しジャンルは違いますが、雨上がりの夜空に(RCサクセション)も出てきました。

雨にゆかりのある生きものは?

現実逃避を楽しんだあとは、生き物の話をしなければ。雨の歌から離れて雨と生きもの。アジサイ、ツユクサ、アマガエル、カタツムリなどの話は過去に書きましたので、これまで登場していない鳥類について紹介します。大雨の中でないと餌がとれない鳥や、水浴びの代わりに豪雨の中を飛びまわって、体の汚れやシラミなど害虫を洗いながす鳥がいればベストなのですが、今のところそのような話は聞いたことがありません。雨が似合いそうな鳥といえば…鳥好きの人たちからは「アカショウビン」と「アオバト」の名があがると思います。

アカショウビンは雨を呼ぶ鳥

アカショウビンはカワセミの仲間で、ほぼ全身が真っ赤(赤茶色)でとても目立ちます。E-TEC事務所にかけられている、2018年カレンダー(弊社自作)の7月の写真がこれです。ぜひ事務所においでいただき、真っ赤な色を見てください。アカショウビンは夏鳥としてよく繁った広葉樹林に渡来し、渓流沿いや湿地などで小魚、サワガニ、カエルなどを餌にしています。繁殖期には「キョロロロロ…」と尻下がりの特徴のある鳴き方をし、曇りや雨の日には日中も鳴くことから、雨降りでも鳴く、雨好きな鳥という印象があります。別な呼び方として水恋鳥(みずこいどり)、雨乞鳥(あまごいどり)ともいわれ、古くから雨降りの兆しの鳥といわれています。青森や秋田のことわざでも「アカショウビンが来ると雨が降る」「ナンバンドリが鳴くと雨が降る」というものがあります。ナンバンは唐辛子のことで、熟した唐辛子の赤色がアカショウビンの体の赤色とつながります。

  • アカショウビン

    アカショウビン

不気味な声で鳴くアオバト

アオバトはオリーブ色の胸をしたきれいなハトで、森のなかに棲んでいます。保護色になってなかなかみつけにくい鳥です。有名なのはその声で、曇りや雨の日の昼間に「アオー アオー」とか「マオー マオー」と低音の野太い不気味な声で鳴きます。魔王鳥、魔王鳩と呼ばれることもあるようです。「マオが鳴くと必ず天気が悪くなる」とアカショウビンとおなじような言われ方をしていますが、 アオバトには海水を飲みに岩礁地帯に群れで行くという習性も知られています。海から何十キロも離れた山地から海水を飲みに行くようです。塩分やミネラルの補給のためと思われていますが、詳細は解明されていません。春から初秋の行動ですので、繁殖にかかわるようにも思われます。

  • アオバト

    アオバト

常に意識しながら生き物の情報を集めていかなければと、痛感した今回のリレー寄稿でした。次は1年半後くらいと思いますが、ボーっと生きていてはいけません!また、チコちゃんに叱られてしまいます…。

  • 【参考文献】
  • 国松俊英『鳥のことわざ うそほんと』(山と渓谷社、25-27,112-114頁、1990年)
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