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5-激変2 廃屋撤去&屋敷林伐採

2023年10月
文:佐竹 一秀
(WEB公開:2025年2月10日)

家屋(廃屋)の撤去

前回のジャングル通信で、廃屋撤去&屋敷林・境界林の伐採を行う旨を書きました。写真は2023年の3月、家屋周辺の笹を刈り取ったあとの様子です。窓や雨戸が壊れている箇所はありますが、瓦屋根には割れや脱落もなくしっかりしていて、雨漏りもほとんどありませんでした。今思えば東日本大震災の震度6強の揺れにも耐えていたのですね。そう思うと涙が…。

次が解体直前の写真です。60有余年もの間、雨風にさらされた土壁ですが、意外としっかりしてました(下部は解体によるものです)。土壁にとまる赤とんぼが好きで、いつか写真に撮ろうと思っていたのですが…赤とんぼの季節、心残りです。

  • 笹刈り後の様子

  • 解体直前の家屋(下部は解体工事によるもの)

燻煙(防虫・防腐)の効果

建屋内部の状況は以下の写真です。ここで暮らしていた10年間、常に囲炉裏で火を焚いていたので、その頃から天井の張板、梁や柱、そして土壁には煤がついて黒ずんでいました。その後、山を下りてからは両親が田畑の手入れに来た際に時々火を焚いていたようですが、頻度はかなり少なかったと思います。しかしそのおかげか、腐ることもなく、またシロアリやネズミに食い荒らされることもなく、ここまで何とか維持できていたのかもしれません。60年前の煤が残っているのも凄いですね。この方法はスモークサーモン等の食品の加工にも使われています。木材でも、人体に害のない煙成分(防腐・防虫成分)で燻煙・乾燥された建材なども作られていて、その効果も科学的に実証されているようです。

我が家でも、もっと太い梁や柱、木材が使われていて、囲炉裏を使い続けていれば、いまはやりの古民家再生の材料になったかも…。

  • 煤のついた天井

屋敷林の伐採

以下の写真は、西側のスギ伐採跡地から我が家方向を撮影したものです。中央の家屋(廃屋)を囲むようにスギ、ヒノキの屋敷林があります。廃屋解体・屋敷林伐採後の同じアングルの写真がその下の写真です。伐採により裸地になっており、家までの道路も木材搬出のため、笹薮は刈られ、ため池に覆いかぶさっていたクルミ・ヤナギ等の樹林も切り取られ、スッキリ?しました。人間の力(重機の力)は偉大です。が、少し恐怖を覚えました。人里離れた静かな場所だったはずが、廃屋撤去、屋敷林の伐採と整地、そして境界林伐採のために搬出用の道路が作られ、緑がはぎとられ、茶色や赤茶色の土がむき出しになりました。荒廃していた里山ですが、緑が少なくなると、落ち着きません。緑は大事ですね。

廃屋は放置できませんし、屋敷林・境界林も大きくなり過ぎたので倒木の危険もあり、いずれは伐採するつもりでした。まあ自分の時代にケリをつけられ、終活の一つが片づいたので良かったと思いたいです。しかし次は、新たに出現した裸地、赤土むき出しの搬出用道路をどうしていくかが問題です。

  • 家屋と屋敷林(解体と伐採前)

  • 廃屋解体・屋敷林伐採後

一本杉(屋敷林の記念木)

当初、屋敷林・境界林は全て伐採する、ということで業者とは話をしていました。しかし実際に伐採が行われるところで、フッと一呼吸。入植当時、祖父と父親がこれらの木をどのような思いをもって植えたのか。思いを巡らせると、皆伐は出来ませんでした。そこで、記念木として1本だけ残すことにしました。

私とほぼ同年齢ですが、樹齢1,000年超のスギはざらにあり、近くでは涌谷町箟峯寺の夫婦杉、次郎杉、三郎杉、四郎杉は樹齢約九百年と言われています。我が家の記念木はまだまだです。これからの世界を見続けられると思うと羨ましくもありますね。

  • 記念の一本杉

セイタカアワダチソウの駆除

廃屋撤去・屋敷林、境界林伐採後の裸地、造成道路は緑に戻すことが最優先です。その後の利活用はおいおい考えます。そうすると気になるのは、外来種のセイタカアワダチソウです。道路周辺や放棄水田等に既に広範囲に分布していますので、家屋、屋敷林後の裸地に入り込む可能性は大です。そろそろ花の時期です。花が咲けば種が実り、風媒花ですので周辺に種が飛び散り、裸地化した場所を中心に来春一気に繁茂する可能性があります。そこで、10月の上旬からメインの笹狩りはいったん中止して、草刈り機による刈払いを始めました。

  • セイタカアワダチソウ

春はただの雑草

上の写真は秋(10月)の写真です。とんがった黄色の花は目立ちますし、まとまって咲いていることがほとんどですので、遠くからでもセイタカアワダチソウとわかります。一方、下の写真は春(5月下旬)の写真です。整備を行う前の道路に群生していたものです。この時も道路わきのものも含めて刈払いしました。黄色の花をつければすぐに判別できるのですが、若草の頃は気にしていないと見逃してしまいます。

  • 花がないとわかりにくい

草刈り機がピンチ!

ところがここに来て草刈り機の調子がイマイチです。回転ムラや脈動が見られ、そろそろ寿命かと思われました。現在の草刈り機は会社のもので、これまで数回しか使われてなかったものを、2月からほぼ毎週1~2回の頻度でこき使ってきました。2サイクルエンジンなので丈夫で馬力もあり、チップソーの刈歯を3~4回交換しつつ、ここまで屈強な笹薮ジャングルと戦ってきました。それに比べれば軟弱なセイタカアワダチソウですので、楽に刈払えます。ですが、刈払いを始めて2日目(10/13)の昼前、ついにエンジンの回転数が上がらず、ダウンしてしまいました。花も満開になりつつあり、出来れば一気に片をつけたかったのですが…。ここでの故障は痛手です。1週間でさらに開花が進むと、種がつき、風に乗って拡散拡大してしまいます。ピンチです!この話をE-TECの幹事会で話したところ、Y先生から使っていない草刈り機があるので貸すよ、とのこと。使い潰しても良いとのことでしたので、ありがたくお借りして(頂戴して)きました。

セイタカアワダチソウは強い!

新しい草刈り機は切れ味も良く、作業がはかどりました。一日の作業でほぼ全域の残っていたセイタカアワダチソウを刈払うことができました。ここまでセイタカアワダチソウの刈払いに要した日数は延べ3日半でした。今後は時々見回りを行い、黄色の花を見つけてはその都度刈払いを行います。この効果は来年にならないと確認できません。来年のお楽しみですが、気になる点もあります。

  • 刈り払いしたセイタカアワダチソウ

セイタカアワダチソウの生態等について下表にまとめてみました。赤字部分が気になる点です。まずは多年草、地下茎により繁殖とありました。刈取っても、翌年は地下茎より発芽してきます。そのため、駆除方法は抜きとりがベストです。ただ面積的にも数的にも、すべてを抜きとるのは不可能ですので、やはり刈払いによる方法しかありません。農薬もあるのですが、他の動植物・生態系への影響を考えると使う気になりません。刈払いの時期は6月頃と9月頃の2回。6月は地下茎から新芽を出して伸びはじめる時期で、地下に蓄えられた養分を消費させることができます。9月頃に草刈りをすると、種子による繁殖、分布拡大を防ぐことができ、地下茎に栄養分を蓄えはじめる時期であることもあり、来年の再生を衰退させる効果もあります。今年は10月に入ってからの刈払いだったので、花が咲いている個体もありました。その後枯れるにしても実をつけることはないか気になります。来年はもう少し早めに行いたいです。外来種の駆除は毎年繰り返すことが重要ですね。

  • ・和名(学名):セイタカアワダチソウ (Solidago altissima)
  • ・分類群:維管束植物:双子葉・合弁花類 キク科
  • ・自然分布:北アメリカ
  • ・形態:多年草、長い地下茎を持ち、茎は1~2.5m、花部以外は一般に枝を出さない、主に上側に多数の黄色い頭花をつける、果実(痩果)は長さ1mm、細毛があり、冠毛は汚白色
  • ・生育環境:河川敷、土手、荒地、原野、休耕地、路傍
  • ・繁殖生態:繁殖期:8~11月、虫媒花、地下茎により繁殖
  • ・生態的特性:粒経の細かいシルト・粘土質の土壌に繁茂、耐旱性、蜂蜜の供給源、鳥類等の餌資源
  • ・侵入情報:ほぼ全国
  • ・移入元:不明
  • ・侵入経路:観賞用、蜜源植物として導入、1900年頃導入、戦後に分布拡大
  • ・影響:ススキ、ヨシなどの在来種との競合、アレロパシー作用
  • ・影響を受ける在来生物:在来草本植物
  • ・法的扱い:要注意外来生物(外来生物法)、日本の侵略的外来種ワースト100 指定種
  • ・防除方法:抜き取り、刈り取り(年2回以上)、天敵昆虫や病原体の増加でやや衰退か
  • ※国環研の「侵入生物データベース」より抜粋
時間が欲しい…

自然相手はやはり時間がかかります。セイタカアワダチソウは完全には駆除できないと思いますが、出来るかぎり広がるのを抑えたいですね。スギのような寿命は要りませんが、もう少し頑張りたいです。

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