うさぎの年
あけましておめでとうございます。
今年の干支(えと)は卯(=ウサギ)です。正式には十干(じっかん)と十二支(じゅうにし)の組み合わせが「干支」ですので、今年の十干は辛(かのと)、十二支は卯、そのため、干支は辛卯(かのとう・しんぼう)となります。また、卯(う)をウサギ(兎)にしたのは、字の読めない人も暦を覚えられるようにと、十二支にネズミ、ウシなどの動物を配したためと云われています。
そこで今回はウサギの話題にします。
まず手始めにウサギの数え方についてです。よく常識問題として出題されており、1羽、2羽…と鳥と同じように「羽」と数えます。鳥類でもないのに何故でしょうか?諸説あるようですが、日本では仏教伝来以降、明治まで肉食がタブーとされていました。ただ、鳥肉は食べる事ができました。そこで四足のウサギはピョンピョン飛び跳ねるところから、獣ではなく鳥に分類して食べられていたようです。かなり強引ですが、実際には農作物を食べる害獣駆除として、また貴重な蛋白源として食べられていたのではないでしょうか。もう一つ、もっと強引といいますか、もっとストレートにウサギは鳥類だという話もあります。
ウサギ → ウとサギ → ウ(鵜)とサギ(鷺) → 鵜と鷺
として、2種類の鳥にしてしまい、食べてしまいました。私はこちらのほうが好きです…。
ノウサギ
白くなるノウサギ、茶色いままのノウサギ
最近は「匹」、「頭」を使われる事のほうが多いようです。 東北地方のノウサギは夏には茶褐色ですが、冬には全身が真っ白(耳の先に多少黒い部分がある)になり、雪の中で見つけにくくなります。しかし、南の地方のノウサギは茶褐色のままです。冬白くなるノウサギを亜種トウホクノウサギ、色の変わらないノウサギを亜種キュウシュウノウサギと区別する場合もありますが、その違いが地理的なものか、環境が絡んでそうなるのかがハッキリしていないようです。雪の中の白いウサギは絵になりそうですが…。
ノウサギの足跡
特徴的な足跡
雪といえば、雪上のノウサギの足跡はよく目立ちます。右の写真がそれですが、チョン・チョン・パッです。最初のチョンは前(右?)足、次のチョンが前(左?)足、最後のパッはふたつ並んだ後足です。この順番で足を動かし野山を駆け回っていますので、進む方向がわかります。また、この足跡を追いかけていくと、糞を見かけることもよくあります。
消化吸収のための擬反芻
直径1~1.5cm程度で丸くコロコロとして、植物質の塊になっているのがノウサギの糞の特徴です。それ以外に軟便とよばれる糞もします。ノウサギは草食動物です。植物は食物繊維が多く含まれていてなかなか消化できません。そのためノウサギは長い盲腸を持っており、その中に微生物を飼っていて、それらの力をかりて分解し、栄養を吸収しています。しかし、1回腸を通っただけでは分解・消化が不完全です。1回目の糞は軟便で、それをもう一度食べることにより、栄養分の吸収が効率的になります。
同じ草食動物の牛は、4つの胃を持ち反芻(はんすう)して消化することがよく知られていますので、これに対して糞を食べて再度消化吸収することを擬反芻(ぎはんすう)という言い方もします。ウサギは夜行性ですので、夜間に活発に活動して植物を食べ、昼間は草むら等で休息しています。この休息時間のおやつが…(あまり想像したくないです)。
ノウサギの糞
大きな耳の役割
耳の大きいこともノウサギの特徴です。捕食者の行動をいち早く察知するために大きくなったと考えられますが、それ以外にも冷却器の役目も担っています。「脱兎のごとく」という言葉がありますが、野山でウサギに遭遇する時は、いつもそうです。藪の中から飛び出し、あっという間に見えなくなってしまいます。この時のスピードは70㎞/hを超えるといわれ、当然体温が上がります。それを下げるための汗腺が発達していませんので、大きな耳が空冷装置になります。そのため、全力で走って逃げるノウサギの耳は、空気抵抗や逃避時の枝葉を考えると邪魔になると思うのですが、ぴんと立っています(あまりに早すぎて立っていたかどうか見た事はありませんが…)。
最後にウサギの耳を持って見聞を広め、擬反芻を行なって完全吸収、ここぞという時は脱兎のごとく行動し、ウサギとカメの昔話のようにゴールで余裕を持てる(そのまま寝過ごしてはいけません!)1年にするため、今年も頑張って行きましょう!
- 【参考資料】
- 朝日稔『日本の哺乳動物』(玉川大学出版部,1977年),61-63頁
- 熊谷さとし『動物おもしろ基礎知識』(偕成社,2006年),185-190頁